超低出生体重児の慢性肺疾患発症予防のためのフルチカゾン吸入に関する臨床研究

文献情報

• 文献番号: 200717005A
• 報告書区分: 総括
• 研究課題名: 超低出生体重児の慢性肺疾患発症予防のためのフルチカゾン吸入に関する臨床研究
• 課題番号: H18-小児-一般-001
• 研究年度: 平成19(2007)年度
• 研究代表者(所属機関): 田村 正徳(埼玉医科大学総合医療センター小児科)

研究分担者(所属機関)

• 平野　慎也(大阪府立母子保健総合医療センター　新生児科)
• 中山　雅弘(大阪府立母子保健総合医療センター　周産期病理学)
• 中村　友彦(長野県立こども病院総合周産期母子医療センター　新生児科)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究（臨床試験推進研究）
• 研究開始年度: 平成18(2006)年度
• 研究終了予定年度: 平成20(2008)年度
• 研究費: 29,990,000円
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

日本の新生児死亡率は世界で最も低くなっているが、特に超低出生体重児では約半数が慢性肺障害(CLD)に罹患し、成長発達障害の主要な危険因子となっている。本研究では、ステロイド吸入によるCLD発症予防効果と安全性を多施設共同試験で実証するとともに、我が国におけるCLD児の発症状況、発達成長を調査し、胎盤病理検査やモデル動物実験を踏まえて、発症原因と危険因子をに解明することにより、CLDの発症予防と早期治療法の開発に貢献する。

研究方法

超低出生体重児の慢性肺障害の発生状況と成長・発達に及ぼす影響の研究2005年出生児のCLD発症状況、発症に関わる諸因子について分析研究、2000年出生CLD児の長期的成長・発達調査多施設共同臨床試験の実施に関する研究酸素投与期間の減少、慢性肺障害の発症率低下、修正1歳半、暦3歳での発達障害の減少を評価項目として、フルチカゾン吸入療法のランダム化二重盲検比較試験を開始胎盤の病理検査とその総合評価　胎盤全例で浸潤細胞の同定を免疫組織学的な方法も利用しての検索

結果と考察

　1995年、2000年に引き続いて2005年のCLD発生状況と関連因子を全国的な規模で調査を行った結果、CLD発症率の上昇を認めた。病因としては、子宮内感染症などの炎症による早産児での発症率が増加している。CLDあり児は、脳性麻痺、視力障害、聴力障害の児が多く、総合発達評価でも異常を示す児が多い傾向があり、CLDの減少は、こうした発達障害児の減少にもつながる可能性が示唆された。
　平成18年5月より試験が開始され、途中平成19年1月末より５月末まで試験薬の有効期限切れにともない、新規エントリーを中止したが、平成20年3月時点での登録数は101例である。参加施設を増やし、現在25施設となり、継続進行中である。特に大きな有害事象は認めていない。
　胎盤病理研究の結果からはH.E.染色では、胎盤の絨毛膜羊膜に広汎な炎症細胞浸潤が認められた。

結論

　2005年出生児でもCLD発症は1995, 2000年の調査に比較して減少しておらず、これはより未熟な児の救命率向上による事が分った。CLDあり児は、脳性麻痺、視力障害、聴力障害の児が多く、総合発達評価でも異常を示す児が多い傾向があり、CLDの減少は、こうした発達障害児の減少にもつながる可能性が示唆された。子宮内感染症が、CLD発症の重要な因子であることが分かり、ステロイド吸入は、これらの児のCLD発症予防に十分期待される。多施設共同試験を平成18年5月より試験が開始され、継続進行中である。

公開日・更新日

• 公開日: 2008-03-19
• 更新日: -