アンチセンス・モルフォリノによるDuchenne型筋ジストロフィーのエクソン・スキップ治療に向けた臨床応用研究

文献情報

文献番号
200716012A
報告書区分
総括
研究課題名
アンチセンス・モルフォリノによるDuchenne型筋ジストロフィーのエクソン・スキップ治療に向けた臨床応用研究
課題番号
H19-トランス-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 友子(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
  • 中村 昭則(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
  • 横田 俊文(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
  • 岡田 尚巳(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
80,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症の遺伝性筋疾患であるDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)では原因としてジストロフィン遺伝子が明らかにされ、分子病態の解明も進んでいる。最近我々は米国・国立小児医療センターの横田俊文研究員、Eric Hoffman教授との共同研究により、進行性で重症の症候を示す中型のモデル動物である筋ジストロフィー犬に対して、アンチセンス・モルフォリノを全身的に複数回投与してジストロフィン遺伝子のエクソン6及び8を強制的にスキップすることによって、横隔膜を含む全身の骨格筋でジストロフィンの発現が回復し、筋ジストロフィーの臨床症状が改善することを見出した。複数のエクソンを同時にスキップすることにより臨床症状の改善をみたことから、エクソン・スキップ治療の対象となるDMD患者の範囲が拡大し、少なくとも遺伝子欠失例の80%がカバーできることになった。
研究方法
筋ジス犬を用いた研究からジストロフィン遺伝子のエクソン6及び8スキップが可能となり、対象となるエクソン7単独欠失のDMD患者を国内で1名見出したが、その数は極めて限られていることから、DMDの遺伝子異常のホットスポット領域(エクソン45-55)に着目した。特に、エクソン50ないし52の単独欠失、エクソン48-50、エクソン45-50欠失例をin frame化することが可能な、エクソン51をスキップすることを目標として、ジストロフィン遺伝子のエクソン52を欠失したmdx52マウスを用いて研究を進めた。
結果と考察
モルフォリノのin vivo導入によりmdx52マウスの全身骨格筋におけるエクソン51スキップとジストロフィンの発現を実現できた。エクソン51スキップの対象は、DMD患者の約20%に達すると考えられる。一方、本邦3家系3症例の解析から、ジストロフィン遺伝子のエクソン45-55欠失例が、軽微な臨床経過を辿ることを指摘した。エクソン45-55のスキップが可能になれば、DMDのホットスポット領域に一致しているだけに、共通のレシピにより多数のDMD例の治療が可能になる。
結論
筋ジストロフィー犬及びmdx52マウスを用いて、ジストロフィン遺伝子のエクソン6と8及びエクソン51について、エクソン・スキップの有効性と臨床型の改善効果を実証することができた。特にエクソン6と8をスキップする対象となるDMD患者を国内で1名見出したが、臨床治験に進むためには、エクソン・スキップの有効性と安全性を検証する研究を更に進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-