制御性T細胞を用いた肝・小腸・肺・膵島移植における免疫寛容の誘導

文献情報

文献番号
200716009A
報告書区分
総括
研究課題名
制御性T細胞を用いた肝・小腸・肺・膵島移植における免疫寛容の誘導
課題番号
H18-トランス-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小柴 貴明(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 上本伸二(京都大学医学部附属病院 肝胆膵移植外科)
  • 前川平(京都大学医学部附属病院 輸血部)
  • 坂口志文(京都大学医学部再生医学研究所)
  • 湊 長博(京都大学医学部感染・免疫学講座)
  • 芹川忠夫(京都大学医学部附属動物実験施設)
  • 李 頴(京都大学大学院医学研究科先端領域融合医学研究機構外科学)
  • 庄司 剛(京都大学医学部附属病院呼吸器外科)
  • 小林英司(自治医科大学分子病態治療研究センター臓器置換研究部移植免疫学)
  • 大段秀樹(広島大学創生医科学外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
66,885,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではこのわが国最初の前臨床ミニブタ各種移植モデルを用いて、in vitro で一旦培養されドナー抗原特異的免疫抑制活性を獲得した Tregs を養子免疫し、免疫寛容を誘導することを目的とする。本研究では、免疫寛容の誘導に必要な移入するべき Tregs の数とその数を投与した際の安全性を明確にする。また、異なる量、異なる種類の免疫抑制剤を併用し、Tregs による細胞養子免疫療法と組み合わせるべき最適化された免疫抑制療法を検討する。
研究方法
MHCの定まった異なる2系統のクラウン系ミニブタをそれぞれドナーとレシピエントに選び肝移植, 肺移植、小腸移植、膵島移植を行う。移植の9,8日前にアフェレーシスを行いレシピエントの末梢血から、1x1010個の単核球を分離する。分離された単核球から磁気ビーズ法でCD4+CD25+Tregsを単離し、ドナーの血液から分離した単核球とIL-2 の存在下に培養し、ドナー抗原特異的抑制能を有するTregsとする。このレシピエントには移植の4,3,2日前にそれぞれ、7.5mg/kg のエンドキサンを投与して、骨髄抑制によるリンパ球減少を起こした上で、移植当日に移植臓器の動脈に直接穿刺を行い、Tregs を移入する。移入するTregsの数を1x108個とする。移植後2日目から 0.05mg/kg/day のタクロリムスを持続で血管内に12日間投与する。タクロリムスの目標血中濃度を5-10ng/ml とする。現在、拒絶が制御しがたく予後の悪い肺移植のモデルで同実験を先行させる。肺移植の拒絶は胸部レントゲンにて評価する。
結果と考察
ドナー抗原と培養したTregsはドナー抗原特異的な抑制活性を獲得した。Tregs移入群では、Tregs非移入群に比べて、移植肺の生存期間の延長を認めなかった。しかし、末梢血のレベルでは、Tregs移入群では、Tregs非移入群に比べてTリンパ球の減少を認めた。以上より、1x108個の培養されたTregsの移入とタクロリムスの併用では免疫抑制の効果はあるものの、移植臓器の生存延長には寄与しないと考えられる。従って、今後、移入するTregsの数を増やすことや、併用する免疫抑制剤の種類を変えるなどのプロトコルの変更を行い、移植臓器の生存日数延長を図る必要がある。
結論
1x108個のドナー抗原特異的抑制活性を有するTregsの移入とタクロリムスの併用では免疫抑制の効果はあるものの、移植肺の拒絶を防ぐにはいたらなかった。

公開日・更新日

公開日
2008-07-11
更新日
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