難治性白血病に対する標準的治療法の確立に関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)

文献情報

文献番号
200715004A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性白血病に対する標準的治療法の確立に関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H17-チーム(がん)-若手-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大西 一功(浜松医科大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,138,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
未治療慢性期慢性骨髄性白血病(CML)におけるイマチニブの有効性・安全性、長期予後の検討および、イマチニブにより十分な効果が得られない患者に対するイマチニブとIFNαまたはcytarabine ocfosfate併用の有効性と安全性の比較検討(CML202試験)を目的とする。また新規CML207試験ではイマチニブの至適用量の決定を目的とする。
研究方法
成人慢性骨髄性白血病プロトコール(CML202試験)では、未治療慢性期CMLにおいてイマチニブ1日400mgの有効性・安全性ならびに長期予後を検討するとともに、イマチニブを使用したにもかかわらず大細胞遺伝学的効果が得られなかった症例に対し、イマチニブ+IFNα併用またはイマチニブ+cytarabine ocfosfate併用療法のランダム化第II相試験を行い有効性と安全性を比較検討した。イマチニブ単独群の主要評価項目は全生存期間とした。
結果と考察
CML202試験(489例)は2例が併用群に二次登録され終了した。イマチニブ単独群の観察期間中央値36ヶ月の中間解析では、5年の予測有効性は、血液学的完全寛解97%、完全細胞遺伝学的効果91%であり、5年予測全生存率は94%であった。またイマチニブ400mg群と低用量の300mg群の成績についてサブグループ解析を行った。初期2年間の平均用量の比較では完全細胞遺伝学的効果到達率、全生存率ともに両群で差がなかった。イマチニブの至適用量の決定のためには人種差を含めたイマチニブの代謝に関わる要因の検索とともに長期の前方向試験が必要と考えられた。CML207試験では未治療慢性期CML患者にイマチニブ400mgを投与し、3ヶ月後、6ヶ月後の血液学的効果、細胞遺伝学的効果、分子遺伝学的効果により、標準的なイマチニブ増量を行う群と積極的にイマチニブを増量する群における12ヶ月後の分子遺伝学的大効果の到達率を比較する無作為比較第Ⅲ相試験プロトコールを作成した。
結論
CML202試験における観察期間中央値36ヶ月の中間解析では、欧米とほぼ同等の有効性と安全性が示された。しかしイマチニブは400mg投与が標準とされているが、日本人においては維持量は300mgの低用量でもよい可能性が示唆された。イマチニブの至適投与量、投与法についてはさらに検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200715004B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性白血病に対する標準的治療法の確立に関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H17-チーム(がん)-若手-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大西 一功(浜松医科大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
未治療慢性期慢性骨髄性白血病(CML)におけるイマチニブの有効性・安全性、長期予後の検討および至適用量の決定を目的としてCML202試験、CML207試験を行った。さらにイマチニブ耐性症例を対象にBCR-ABL遺伝子変異解析のスクリーニングを行った。
研究方法
成人慢性骨髄性白血病プロトコール(CML202試験)では、未治療慢性期CMLにおいてイマチニブ1日400mgの有効性・安全性ならびに長期予後の検討を、主要評価項目を全生存期間として行った。CML207試験では未治療慢性期CML患者に標準的なイマチニブ増量を行う群と積極的にイマチニブを増量する群における12ヶ月後の分子遺伝学的大効果の到達率を比較する第Ⅲ相試験を行った。またイマチニブに耐性を示す患者を対象にBCR-ABL遺伝子上に生じた18カ所の変異の有無をインベーダー法を用いて測定した。
結果と考察
CML202試験(489例)は2例が併用群に二次登録され終了した。イマチニブ単独群の観察期間中央値36ヶ月の中間解析では、5年の予測有効性は、血液学的完全寛解97%、完全細胞遺伝学的効果91%であり、5年予測全生存率は94%であった。またイマチニブ400mg群と低用量の300mg群の成績についてサブグループ解析を行った。初期2年間の平均用量の比較では完全細胞遺伝学的効果到達率、全生存率ともに両群で差がなかった。CML207試験では、現在50例が登録されている。イマチニブの至適用量の決定のためには人種差を含めたイマチニブの代謝に関わる要因の検索とともに長期の前方向試験が今後必要と考えられる。BCR-ABL変異解析では15例中5例に変異が検出された。
結論
慢性骨髄性白血病に対する試験では、CML202試験の観察期間中央値3年の中間解析により、日本人CML患者に対する有効性は欧米と同等以上であるとともに、300mgの低用量でも維持量として十分である可能性が示唆された。イマチニブの至適投与量、投与法についてはまだ未解決な点も多く、CML202改正試験による増量規準の確立、CML207試験では積極的増量による有効性の検討を行っている。

公開日・更新日

公開日
2008-04-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200715004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
慢性骨髄性白血病CML202試験におけるイマチニブ単独群の観察期間中央値36ヶ月の中間解析では、5年の予測有効性は、血液学的完全寛解97%、完全細胞遺伝学的効果91%であり、5年予測全生存率は94%であった。また低用量イマチニブのサブグループ解析から、イマチニブの至適用量の決定のためには人種差を含めたイマチニブの代謝に関わる要因の検索とともに長期の前方向試験が今後必要と考えられる。またBCR-ABL変異解析ではイマチニブ耐性症例15例中5例に変異が検出され、耐性化の原因と考えられた。
臨床的観点からの成果
慢性骨髄性白血病に対するCML202試験の観察期間中央値3年の中間解析により、イマチニブの日本人CML患者に対する有効性は欧米と同等以上である事が確認された。一方サブグループ解析の結果、イマチニブ300mgの低用量でも標準量とされる400mgと生存率に差がなく、少なくとも日本人においては300mgは維持量として十分である可能性が示唆されたが、さらに長期の観察が必要である。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
本試験では300mg投与症例が100例近くあり、サブグループ解析では300mg投与群は400mg投与群と比し有効性に差を認めなかった。今後長期の前方向試験および血中濃度測定等により低用量の有効性が裏付けられれば、少なくとも日本人においては維持量として300mgが至適用量となり得、これは医療費の削減につながると考えられる。このように分子標的薬の分野でも日本人のデータを確立する事は不可欠であり、本臨床研究実施体制が今後果たす役割は大きいと考える。
その他のインパクト
平成19年7月14日に開催されたJALSG20周年記念国際シンポジウムにおいてCML202試験の中間解析結果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
19件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kobayashi M, Ohnishi K, et al.
Etodolac inhibits EBER expression and induces Bcl-2-regulated apoptosis in Burkitt's lymphoma cells.
Eur J Haematol. , 75 , 212-220  (2005)
原著論文2
Shigeno K, Ohnishi K, et al.
Arsenic trioxide therapy in relapsed or refractory Japanese patients with acute promyelocytic leukemia: Updated outcomes of the phase II study and postremission therapies.
Int J Hematol. , 82 , 224-229  (2005)
原著論文3
Nakamura S, Ohnishi K, et al.
Etodolac induces apoptosis and inhibits cell adhesion to bone marrow stromal cells in human myeloma cells.
Leuk Res. , 30 , 123-135  (2006)
原著論文4
Ohnishi K, Ohno R, et al.
Twenty-seven cases of drug-induced interstitial lung disease associated with imatinib mesylate.
Leukemia , 20 , 1162-1164  (2006)
原著論文5
Fujisawa S, Ohnishi K, et al.
Pharmacokinetics of arsenic species in Japanese patients with relapsed or refractory acute promyelocytic leukemia treated with arsenic trioxide.
Cancer Chemother Pharmacol. , 59 , 485-493  (2007)
原著論文6
Sugimoto Y,Ono T, Ohnishi K, et al.
HOXA10 expression induced by Abl kinase inhibitors enhanced apoptosis through PI3K pathway in CML cells.
Leuk Res. , 32 , 962-971  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-