難治性白血病に対する標準的治療法の確立に関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)

文献情報

文献番号
200715002A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性白血病に対する標準的治療法の確立に関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H17-チーム(がん)-若手-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大竹 茂樹(金沢大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
6,620,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
有病率の低い白血病において、エビデンスに基づいた標準的治療法を開発するためには、全国規模の多施設共同研究を行わねばならない。Webアプリケーションを開発し省力化を試みると共にデータマネジメントの方法論の確立を目指した。
研究方法
急性骨髄性白血病の標準的な治療法の開発を目的として,寛解導入療法においてイダルビシン(IDR)とダウノルビシン(DNR)を比較検討し、寛解後療法においてシタラビン大量療法と非交差耐性のアンスラサイクリンを含む治療法を交替して用いる従来型地固め療法を比較検討するAML201プロトコールは症例登録が終了し、予後情報について経過観察中である。今年度はシタラビン大量療法の効果が最も期待されるCBF白血病についてsubset解析を行った。
慢性骨髄性白血病におけるイマチニブによる分子標的療法の有効性・安全性ならびに長期予後を調査するCML202プロトコールについてデータマネジメントを担当した。
結果と考察
全登録例1057例中CBF白血病は245例(23%)であり、完全寛解率は94%であった。初診時の白血球数と骨髄中の芽球割合から計算されるWBC Indexを用いるとt(8;21)白血病は予後の有意に異なる3群に分類され、シタラビン大量療法は予後中間群に効果のあることが示唆された。
CML202プロトコールは全登録例489例の5年予測効果は血液学的効果(CHR)97%、完全細胞遺伝学的効果(Complete Cytogenetic Response(CCR))91%であり、5年予測生存率は94%であった。日本人では欧米の標準量である400mg/dayを投与できない症例の多い(46%)ことが判明した。さらに、300mg/day投与群においても400mg/day投与群と同様の細胞遺伝学的効果(CCR, 60ヶ月で97%)および分子生物学的効果(Major Molecular Response, 18ヶ月で33%)の得られることが明らかとなった。
結論
AML201プロトコールは2008年夏に追跡調査を行い最終的な結論が出される予定である。
欧米人よりも平均体重で約20 kg軽い日本人におけるイマチニブの至適投与量を決定するためには、イマチニブの代謝に関わる要因や薬物動態の検索と共に長期の前方向試験による臨床効果との相関を検討することが必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200715002B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性白血病に対する標準的治療法の確立に関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H17-チーム(がん)-若手-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大竹 茂樹(金沢大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
有病率の低い白血病において、エビデンスに基づいた標準的治療法を開発するためには、全国規模の多施設共同研究を行わねばならない。この共同研究には多くの労力が必要であるが、インターネットテクノロジーを利用したWebアプリケーションを開発し省力化を試みると共にデータマネジメントの方法論の確立を目指した。
研究方法
急性骨髄性白血病の標準的な治療法の開発を目的として、寛解導入療法と寛解後療法を無作為割り付け法により比較検討するAML201プロトコールの試験実施責任者を務めた。
急性リンパ性白血病(ALL)において、従来難治性であったPh染色体陽性ALLに新しいチロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブ(グリベック)を併用した化学療法(Ph+ALL202プロトコール)を行い、データ解析を担当した。
慢性骨髄性白血病におけるイマチニブによる分子標的療法の有効性・安全性ならびに長期予後を調査するCML202プロトコールについてデータマネジメントを担当した。
結果と考察
AML201プロトコールは4年間で1064例が登録され、適格例1057例が評価可能であった。寛解導入療法(非劣性試験)では、IDR群(532例)とDNR群(525例)は、完全寛解率がそれぞれ78.6%および77.5%であった。増量したDNRの効果は少なくとも標準量のIDRと同等であることが示され、医療費は約3分の1に節約可能で、cost benefitの高い治療法と位置付けることが出来た。寛解後療法において、シタラビン大量療法群(389例)と従来型地固め療法群(392例)との比較では、寛解例の48ヶ月予測無再発生存率はそれぞれ42.2%および40.9%、48ヶ月予測総生存率はそれぞれ61.7%および62.8%であり、現時点では両者間に優位差を認めていない。
Ph+ALL202プロトコールでは完全寛解率96.2%、1年生存率76.1%という優れた成績が得られ、適応拡大の申請資料として使用された。
CML202プロトコールは全登録例489例の5年予測効果は血液学的効果(CHR)97%、完全細胞遺伝学的効果(Complete Cytogenetic Response(CCR))91%であり、5年予測生存率は94%であった。
結論
白血病の標準的治療法の確立には、さらに継続して多施設共同臨床研究を効率的に推進する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200715002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
欧米で標準的とされているイダルビシンによる寛解導入療法と比較して、わが国で行われている増量したダウノルビシンによる寛解導入療法が劣らないことが示された。
臨床的観点からの成果
寛解導入療法では、ダウノルビシン(DNR)を増量することにより、イダルビシン(IDR)と同等の寛解導入率を上げることができることが実証された。DNR を増量しても標準量のIDR の投与量と比較して好中球や血小板の減少期間が短く、敗血症や治療後早期の死亡率は有意に低いことである。医療費の面でもIDRに比べて約3分の1であり、cost benefitの高い治療法といえる。
シタラビン大量療法はやや感染症発症の頻度は高いものの、早期死亡は0.9%であり、安全に施行することできることが確認された。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
Ph+ALL202プロトコールの研究結果に基づいての適応拡大の申請がおこなわれ、イマチニブ(グリベック)のPh染色体陽性急性リンパ性白血病に対する保険適応が認められた。
その他のインパクト
2007年7月14日にJALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)20周年記念国際シンポジウムが開催され、研究結果を報告した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
薬剤の適応拡大
その他成果(普及・啓発活動)
1件
2007年7月14日JALSG20周年記念国際シンポジウム

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyawaki S, Sakamaki H, Ohtake S, et al
A randomized, postremission comparison of four courses of standard-dose consolidation therapy without maintenance therapy versus three courses of standard-dose consolidation with maintenance therapy in adults with acute myeloid leukemia.
Cancer , 104 (12) , 2726-2734  (2005)
原著論文2
Yanada M, Takeuchi J, Sugiura I, et al
High complete remission rate and promising outcome by combination of imatinib and chemotherapy for newly diagnosed BCR-ABL-positive acute lymphoblastic leukemia: a phase II study by the Japan Adult Leukemia Study Group.
J Clin Oncol. , 24 (3) , 460-466  (2006)
原著論文3
Asou N, Kishimoto Y, Kiyoi H, et al
A randomized study with or without intensified maintenance chemotherapy in patients with acute promyelocytic leukemia who have become negative for PML-RARalpha transcript after consolidation therapy: the JALSG APL97 study.
Blood , 110 (1) , 59-66  (2007)
原著論文4
Yanada M, Matsushita T, Asou N, et al
Severe hemorrhagic complications during remission induction therapy for acute promyelocytic leukemia: incidence, risk factors, and influence on outcome.
Eur J Haematol. , 78 (3) , 213-219  (2007)
原著論文5
Wakui M, Kuriyama K, Miyazaki Y, et al
Diagnosis of acute myeloid leukemia according to the WHO classification in the Japan Adult Leukemia Study Group AML-97 protocol.
Int J Hematol. , 87 (2) , 144-151  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-