1施設1台:富山の常備薬型補助心臓の実用化

文献情報

文献番号
200713006A
報告書区分
総括
研究課題名
1施設1台:富山の常備薬型補助心臓の実用化
課題番号
H17-フィジ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
梅津 光生(早稲田大学 理工学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 清隆(早稲田大学 高等研究所)
  • 村山 雄一(慈恵会医科大学)
  • 白石 泰之(東北大学 加齢医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
短期間使用や緊急時使用に備えた低価格で手軽な補助心臓,すなわち1施設1台:富山の常備薬のような全世界的にも試みがない補助心臓の開発を目指している.最終年度は動物実験を含めた総合評価を実施し本システムの達成度を検討した.
研究方法
1)2006年度にまとめられた人工心臓審査ガイドラインにそったConfidence Level 80%, Reliability Level 80%のもと7日間の保証期間を目指し,8日間駆動をのべ8回路で耐久試験を実施した.2)急性動物実験によりIABP駆動装置の最適駆動条件を明らかにし,従来の空気圧駆動装置や使用実績のある人工弁と比較試験により,本システムの総合評価を行った.いずれの実験でも動物倫理を尊重し,迅速にデータの取得後,安楽死させた.
結果と考察
人工心臓の拍出性能は8日間連続使用においても十分な性能を保持できると判明し,各デバイスでの損傷は見られなかった.これにより本システムの耐久性が今後示されると考えられる.IABP駆動装置の最適駆動条件に関して,急性動物実験と新たに開発した静脈還流量を規定した心尖脱血回路から検討し,両者においてポンプの拍出性能は心室の拡張期にポンプ流入期を一致させることで最大補助率60%を得ることが判明した.また急性動物実験での総合評価では急激な容態の悪化はなく,安定した拍出性能を示した.人工弁においてはJellyfish弁が特に低シストール領域で従来弁より35%優れた拍出性能を示し,本システムに用いる弁として最適であることが判明した.これらの結果を総合的に判断し,本システムは実用化にむけた前臨床データを取得していく段階に達していることを確認した.
結論
急性動物実験でのシステムの総合的な評価により,ハードウェアとしてみた本システムは既に実用化の前段階にあり今後前臨床試験データを取得していく段階に達していることを確認した.

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200713006B
報告書区分
総合
研究課題名
1施設1台:富山の常備薬型補助心臓の実用化
課題番号
H17-フィジ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
梅津 光生(早稲田大学 理工学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 清隆(早稲田大学 高等研究所)
  • 夜久 均(京都府立医科大学)
  • 村山 雄一(慈恵会医科大学)
  • 白石 泰之(東北大学 加齢医学研究所)
  • 田村 泰一(早稲田大学 アジア太平洋研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
短期間使用や緊急時使用に備えた低価格で手軽な補助心臓,すなわち1施設1台:富山の常備薬のような全世界的にも存在しない補助心臓の開発を目的とした.
研究方法
第1年次はオーストラリアで開発された旋回渦流型拍動血液ポンプ(Spiral Vortex Pump ; 以下SV Pump)をベースに再設計し安定した量産技術の確立をおこなった.第2年次にかけては,普及率の高いIABP駆動装置の流用技術の確立をおこなった.血液停滞域を排除したSV Pumpを用いて一巡閉鎖回路を作成し新鮮血を循環させることで空気非接触という環境で生体内の血行動態を忠実に再現する技術の確立を試みた.また,第1,2年次においては実用化研究としての本システムの最適推進法に関して検討を重ねた.第3年次には人工心臓審査ガイドラインにそったConfidence Level 80%, Reliability Level 80%のもと7日間の保証期間を目指し耐久試験を実施した.さらに,急性動物実験によりIABP駆動装置の最適駆動条件を明らかにした.
結果と考察
SV Pumpの量産法として真空成型法と高周波ウェルダー溶着法を採用し二次成型を加えることで均質かつ安定に生産する技術を確立することができた.IABP駆動装置の流用においては,駆動ラインに圧力緩衝ユニットをつけることで溶血量を従来レベルと遜色のない程度に低減でき,さらに十分な拍出性能を確保できることが分かった.In vitro抗血栓性試験においてポンプ内面をMPCでコーティングし,Biospanという臨床実験が世界的に蓄積されている材料と比較して優位に抗血栓性が高いことを実証した.耐久性に関しては人工心臓の拍出性能は8日間連続使用においても十分な性能を保持できることが判明した.IABP駆動装置の最適駆動条件はin vivo, in vitroの両面から検討し,左室の拡張期にポンプ流入期を一致させることで最大補助率60%を得られることがわかった.
結論
SV PumpとIABP駆動装置を使用した本システムは実用化レベルに達した.“低価格な医療用具が存在する”事実が医療に複数の選択肢を提供し,病院運営の効率化,医療費の削減に寄与できると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200713006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)1施設1台の普及を目指した富山の常備薬のような補助心臓を,製作法の確立および拍出性能や生体適合性等のin vitro評価,またin vivoによるシステムの総合的な評価により,実用化レベルに達することができた.2)補助心臓の拍出性能や耐久性等の評価のために新規に評価技術を確立した.例えば,量産化が可能となった血液ポンプを用いて医療用具の抗血栓性を体外で評価するという新しい切り口を提唱し,補助心臓の開発初期段階における動物実験に替わる評価方法を確立した.
臨床的観点からの成果
1)SV Pumpの大量生産技術の確立,また普及率の高いIABP駆動装置の流用技術の確立により,本システムを幅広く普及させることが可能になった.また,7日間の保証期間を得られたことによりBTR用途の補助心臓としての普及が可能となった.2)本研究より得られた“低価格な医療用具が存在する”という事実が医療に対して複数の選択肢を提供することになり,安全性・有効性に重点を置いた従来の医療に新しい切り口を定常すると期待される.
ガイドライン等の開発
平成18年度に行われた体内埋め込み型能動型機器(高機能人工心臓システム)審査ガイドライン策定ワーキンググループの検討報告書作成に寄与した.
その他行政的観点からの成果
真空成形法による補助心臓の製作法の確立により,従来の補助心臓に比べ1/10程度の超低価格補助心臓の製作が可能となった.重症心不全に対する低価格で補助効果の大きい医療器具の実用化により,医療費の大幅な削減が可能になると期待される.
その他のインパクト
講演やマスコミを通して一般国民への啓発的な普及を積極的に行ってきた.主なものを以下に挙げる.1)循環器系における医用機械工学の最新研究動向について,第3回メディカルテキスタイルの開発に関する研究会,2007.12.20(講演) 2)日経産業新聞,2006.2.6 3)1億人の大質問!?笑ってこらえて!,日本テレビ,2006.10.25

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
29件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
20件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Masateru Furusato, Kiyotaka Iwasaki, Mitsuo Umezu, et al.
A reproduction of inflow restriction in the mock circulatory system to evaluate a hydrodynamic performance of a ventricular assist device in practical conditions
Life system modeling and simulation , 553-558  (2007)
原著論文2
Takashi Tanaka, Kiyotaka Iwasaki, Mitsuo Umezu, et al.
Tensile test to ensure a safety of cannula connection in clinical ventricular assist device(VAD)
Life system modeling and simulation , 546-552  (2007)
原著論文3
Yuma Kokuzawa, Kiyotaka Iwasaki, Mitsuo Umezu, et al.
Investigation of a hyderodynamic performance of a ventricular assist device after its long-term use in clinical application
Life system modeling and simulation , 429-435  (2007)
原著論文4
田中隆、岩﨑清隆、梅津光生 他
量産向け旋回渦流型人工心臓内面検査装置の開発
第5回生活支援工学系学会連合大会講演予稿集 , 24-24  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-