光線力学的治療に有効な多機能型薬剤内封ナノ運搬体の開発

文献情報

文献番号
200712048A
報告書区分
総括
研究課題名
光線力学的治療に有効な多機能型薬剤内封ナノ運搬体の開発
課題番号
H19-ナノ-若手-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小野 努(岡山大学大学院 環境学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大河原 賢一(岡山大学大学院 医歯薬総合研究科)
  • 加来田 博貴(岡山大学大学院 医歯薬総合研究科)
  • 阪田 功(株式会社 光ケミカル研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
光線力学的治療(PDT)は,外部から腫瘍組織選択的に印加する光刺激によって局所的な抗がん効果を期待するものであり,光増感物質を腫瘍組織内部へ安定に送達する技術基盤の確立が鍵を握る。そのため,PDTに必要なポルフィリン類を高効率で封入可能なナノ運搬体の調製技術を構築するとともに,腫瘍組織への移行の駆動力となる高い血中濃度が維持可能な血中滞留型ナノ運搬体の創製とPDTへの適用を目指す。また,疎水性薬物を高効率で内封する機能を積極的に活用して,殺細胞効果とは作用機序の異なる抗腫瘍効果が期待されるレチノイド化合物の開発と多剤併用型薬剤へ応用を検討する。
研究方法
光増感物質であるポルフィリンは疎水性が高く,水中油滴型エマルションをベースとしたナノ運搬体の開発を種々の方法で行った。600 nm付近で効率的に一重項酸素を発生する機能性ポルフィリンを開発し,高効率で内封可能な血中滞留性も良好な100 nm程度のナノ運搬体を検討した。また,ポルフィリン含有ナノキャリアを細胞培養培地中に添加したとき,光照射による殺細胞効果をin vitro実験系で評価した。さらに,光増感物質によるPDTと異なる作用機序を有するレチノイド誘導体による相乗効果の可能性を探るため,毒性試験,細胞増殖抑制効果について検討した。
結果と考察
本年度の研究成果として,PEG-PLAブロックコポリマーを用いて,機能性ポルフィリンを約87%と高効率で内封可能な100 nm以下のポリ乳酸ナノ粒子を開発することに成功した。また,本ナノ運搬体を用いてcolon26細胞に対するin vitro実験系により,機能性ポルフィリン内封ナノキャリアを含む培養液中への光照射により,優れた殺細胞効果が得られた。本ナノ粒子からのポルフィリンの拡散は極めて低いと考えられ,ナノ運搬体からの細胞死への作用機序について今後の検討が必要と考えられる。
結論
機能性ポルフィリン含有ナノ粒子を用いて,光照射時に高い殺細胞効果が得られた。しかしながら,ナノキャリアからの殺細胞作用機序については更なる検討が必要であり,今後は光増感物質を効果的に活用できるナノ運搬体の設計指針を明確にするとともに,in vitro系での実験結果をフィードバックして優れたナノ運搬体の設計を行い,in vivoでの体内動態評価とPDTによる抗腫瘍効果について検討を行う。

公開日・更新日

公開日
2008-04-23
更新日
-