ナノテクノロジーを用いたDDSによる耳鳴の克服

文献情報

文献番号
200712046A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノテクノロジーを用いたDDSによる耳鳴の克服
課題番号
H19-ナノ-若手-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 達則(京都大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 壽一(京都大学大学院医学研究科)
  • 田畑 泰彦(京都大学再生医科学研究所)
  • 三浦 誠(京都大学大学院医学研究科)
  • 中川 隆之(京都大学医学部附属病院)
  • 平海 晴一(京都大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内耳ドラッグデリバリーシステムを用いることで、これまで現実的な治療方法がなかった耳鳴に対して、簡便で確実な治療方法を提供する。
研究方法
局所麻酔薬リドカインは、耳鳴抑制効果があることが知られているが、作用が持続しないことや副作用の可能性などで現実的な治療として用いることができなかった。これらを、リドカインを徐放製剤を蝸牛正円窓膜上に極細径内視鏡を用いて正確に留置することで解決できると考えた。
 実際には、まずリドカイン徐放製材の作成を行った。ゼラチンハイドロゲルやポリ乳酸/グリコール酸ポリマー(PLGA)によるリドカイン徐放性材の作成を行い、それぞれの徐放性について検討した。続いて、in vivoで蝸牛にリドカインを徐放できることを確認するために、実験動物で徐放製剤投与を行い、経時的に蝸牛内のリドカイン濃度を測定した。
 ヒトにおける実施ができることを確認するため、ヒト側頭骨標本と極細径内視鏡を用いて実際の操作できるかどうかを検討した。
結果と考察
DDS製剤として、ゼラチンハイドロゲルはリドカインと結合せず、徐放性がないことが明らかになった。PLGAは作成条件に応じてパーティクルサイズが変化し、これとともに徐放速度や徐放期間が変化することが分かった。しかし、PLGAは粉状の製剤で、操作性が良くないので、リドカインと結合しないハイドロゲルと組み合わせることで徐放性と操作性を両立できると考えられた。
 リドカイン含有PLGAパーティクルをゼラチンハイドロゲルとともにモルモットの正円窓窩に留置し、1、3、7、14日後に蝸牛外リンパ中のリドカイン濃度をHPLCで測定したところ、リドカインは3日目から検出され、7日目には高値になり、14日目でも検出可能であったことから、このパーティクルは確かに蝸牛にリドカインを徐放できることや1?2週間の徐放効果が期待できることなどが明らかになった。
 ヒト側頭骨標本(2標本)について、鼓膜切開して極細径内視鏡で正円窓窩・正円窓膜を確認したところ、実際に視認できた。しかしここから正円窓窩を操作するための鉗子等を挿入することは容易ではないと考えられた。


 
結論
リドカイン徐放製剤を作成し、これを用いて蝸牛への徐放が可能であることが示された。今後、徐放性剤の最適化と臨床試験への準備を進めて行く。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-