ナノサイズリポソームを用いた急性心筋梗塞治療法の開発

文献情報

文献番号
200712037A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノサイズリポソームを用いた急性心筋梗塞治療法の開発
課題番号
H19-ナノ-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
南野 哲男(大阪大学 医学系研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 浅井 知浩(静岡県立大学 薬学部)
  • 黒田 俊一(大阪大学 産業科学研究所)
  • 北風 政史(国立循環器病センター 臨床研究開発部)
  • 金  智隆(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 朝倉 正紀(国立循環器病センター 臨床研究開発部)
  • 浅沼 博司(近畿大学医学部付属病院 救急診療科)
  • 堀  正二(大阪大学 医学系研究科 循環器内科学)
  • 高島 成二(大阪大学 分子血管医学)
  • 蜂須 麗(北海道システム・サイエンス社 バイオ事業部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急性心筋梗塞は依然死亡率の高い疾患であり、梗塞後心不全は<生活の質の低下>や医療費増大を招くため、心筋梗塞に対する新たな治療法の開発は厚生労働行政上重要な課題である。本研究の目的は、1)医薬工・企業の異分野連携にて、心筋梗塞や心不全などの病的心臓への特異的薬物送達のための新技術の開発、2)特許戦略に基づいて作成されたステルスリポソーム化製剤を用いた新しい心筋梗塞治療薬の創薬である。
研究方法
医学部(大阪大学)・薬学部(静岡県立大学)・工学(大阪大学)・企業(北海道システムサイエンス)の異分野連携による研究体制を確立し、2007年4月から研究を開始した。最初に、電子顕微鏡にて心筋梗塞部位における血管内皮構造を検討した。また、ラット心筋梗塞モデルを用いて、蛍光標識やRI標識リポソームを用いた検討により、虚血再灌流部位への特異的集積を評価した。さらに、RI標識リポソームを用いた検討により、リポソーム化されたアデノシンの血中滞留時間の延長の有無を調べた。最後に、リポソーム化により、アデノシンの血圧低下や脈拍数低下などの副作用が軽減され、同時に、心筋虚血再灌流障害が軽減されるか否かを検討した。
結果と考察
最初に、電子顕微鏡にて心筋梗塞部位を詳細に検討した結果、血管内皮構造の破綻を認め、がん組織と同様に、ナノサイズリポソームの同部位への集積が期待された。そこで、麻酔下ラット心筋梗塞モデルを用いて、蛍光標識リポソームを用いた検討をおこない、虚血再灌流部位への特異的集積を確認した。また、RI標識リポソームを用いた検討により、リポソーム化されたアデノシンの血中滞留時間の延長、虚血再灌流部位への集積増強が確認できた。さらに、リポソーム化により、アデノシンの血圧低下や脈拍数低下が軽減され、同時に、心筋梗塞サイズ縮小効果や致死的不整脈軽減作用が増強されることをラットならびに大型動物(イヌ)にて確認した(特願2007-073016)。また、主任研究者らは薬剤Xの経口投与にて心筋梗塞サイズを軽減することを特許申請しており、そのリポソーム化に成功した。リポソーム化アデノシンや薬剤Xの前臨床試験(安全性試験・薬物動態試験など)を早期に開始する予定である。
結論
リポソームを用いた心筋梗塞治療薬の開発が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-06-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)