新規磁性薬剤化合物の画像診断への応用

文献情報

文献番号
200712031A
報告書区分
総括
研究課題名
新規磁性薬剤化合物の画像診断への応用
課題番号
H19-ナノ-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
石川 義弘(横浜市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江口 晴樹(同上)
  • 李 進(同上)
  • 黒谷 玲子(同上)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
磁性物質は無機化合物というのが旧来の常識であった。ところが、エレクトロニクスの先端分野では「磁性を持った有機化合物」が多数研究・報告されている。これらはまだ医療に応用されていない。我々は石川島播磨重工業(株)基盤研究所との共同研究から、超伝導などの金属材料の研究に用いられる物理理論(第一原理解析方法)の応用により、「一般化合物に磁性を見つける方法」を開発した〔国際特許申請中〕。そこで本手法を利用することにより、一般化合物の中から磁性化合物を選定し、MRにおける造影剤として開発することが本申請の目的である。
研究方法
我々の特許技術である第一原理解析法による磁性予測技術を用いて、一般化合物の磁性を予測し、磁性の存在が予測された化合物については物理的な磁性測定をおこなった。SQUID等の磁性測定装置において、磁場磁化曲線を求めることによって、室温を含む様々な温度環境下において磁性の存在を検討した。また培養細胞実験において、本化合物が生物学的活性を有するかの検討もおこなった。さらにファントム実験において、様々な測定条件の下で、MR撮影における造影剤として機能するかを検討した。くわえて、生体内に投与した場合においても同様にMR撮影における造影剤として機能するかの検討をあわせて行った。
結果と考察
磁性強度の測定においては、磁場磁化曲線においてマグネタイドに匹敵する磁性強度を発見し、極低温のみならず室温条件でも磁性の存在を確認した。また培養細胞における誘導実験では、磁場設定によって薬剤を誘導できることが確認され、さらに薬剤の持つ薬理効果(例:細胞増殖抑制作用)も磁場によって誘導可能であることがわかった。ファントム実験においてはMR造影機能が確認され、濃度依存性にMRシグナルの増強が確認された。さらに生体投与実験においては、小動物用のMR撮影装置を利用して、造影効果が確認された。
結論
我々の研究成果から、第一原理測定法を用いて有機磁性体を同定することが可能であること、またそのような有機磁性体は有機物質としての薬理学的作用を示すことができるのみならず、磁場による誘導が可能であり、さらにMR撮影においては造影剤として機能する可能性が示された。旧来的なMR造影剤は金属物質が主体であり、生物学的作用を有する造影剤は開発されていないが、本研究成果をもとに、将来的にMR撮影技術において革新的な変化が起こることが考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-