神経変性タンパク質の細胞局所場に於ける動態・フィブリル化のイメージングに基く効率的な医薬品評価系の開発

文献情報

文献番号
200712027A
報告書区分
総括
研究課題名
神経変性タンパク質の細胞局所場に於ける動態・フィブリル化のイメージングに基く効率的な医薬品評価系の開発
課題番号
H19-ナノ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
諸根 信弘(国立精神・神経センター神経研究所微細構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 永井 健治(北海道大学電子科学研究所)
  • 和田 圭司(国立精神・神経センター神経研究所)
  • 中村 俊(東京農工大学大学院共生科学技術研究院)
  • 内野 茂夫(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経変性疾患(プリオン病、アルツハイマー病、パーキンソン病)のための効率的な医薬品評価系の開発に向けて、「病因関連タンパク質の細胞局所場に於ける動態・フィブリル化」を複合的に可視化する技術を開発した。
研究方法
1)病因タンパク質の動態解析には、電子線トモグラフィー、蛍光ライブイメージング、in silico薬剤スクリーニング、子宮内電気穿孔法に基づく複合的なイメージングシステムを適用した。
2)タンパク質のフィブリル化解析には、新しい偏光分光型顕微鏡システムを開発した。
結果と考察
病因タンパク質の動態解析:
1)細胞膜上のプリオンタンパク質の機能調節に関わる、神経膜骨格を細胞全体にわたって可視化した。細胞質内部のプリオンがミトコンドリア膜上でシャペロン等と複合体形成することを確認した。2)記憶に必須な分子である脳由来神経栄養因子BDNFによる興奮性シナプスの伝達効率の上昇機構で、イオンチャネル型グルタミン酸受容体GluR1のシナプス膜への集積に必須であることなどを明らかにした。3)その欠損が網膜視細胞変性を引き起こす脱ユビキチン化酵素UCH-L3について、阻害剤探索をin silico薬剤スクリーニングを行い、5万個の候補分子のうち3つの化合物で、ubiquitin-AMCに対する阻害作用を確認した。4)機能欠失が広汎性発達障害をもたらすシナプス機能分子Shank3について、遺伝子導入の時期や部位を選別することで、特定の神経細胞が形成するシナプスのみを可視化できる、子宮内電気穿孔法を確立した。このように、正常な生理的環境下での病因タンパク質の細胞内での構造や機能を明らかにした。
タンパク質のフィブリル化解析:
5)フィブリル可視化用の偏光分光型顕微鏡システムを開発し、Homo FRETに基づくセンサータンパク質Calmodulin-M13で、Ca2+の結合による実用上有効な蛍光異方性を検出した。これにより、病因タンパク質のフィブリル形成が可視化されると期待できる。
結論
「ナノテクノロジーを基盤とする複合的な可視化技術」により、神経変性疾患に関わる病因タンパク質の生理的条件下での細胞内動態が明らかになってきた。次年度以降、病態極初期にみられる「タンパク質のフィブリル化」にいたる素過程についても解明して、それらを調節する「医薬品の効果を評価する系」の確立を目指す。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-