難治性循環器疾患を克服する超小型ナノ神経センサー兼刺激治療装置の開発

文献情報

文献番号
200712019A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性循環器疾患を克服する超小型ナノ神経センサー兼刺激治療装置の開発
課題番号
H18-ナノ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 厚範(国立循環器病センター研究所循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉町 勝(国立循環器病センター研究所循環動態機能部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性心不全は、各種薬物療法の進歩にも関わらず死亡率が依然として高い(5年生存率50%)。慢性心不全の増悪・治癒には自律神経異常が極めて重要であり、研究チームは迷走神経刺激治療によってラット心不全モデル動物の救命実験に成功した。しかし現存の神経医療は不十分であり、神経モニターは数時間程の交感神経モニターに限定され、神経刺激は神経束全体刺激のため目的外の神経線維刺激による副作用(嘔吐等)を回避できない。従って慢性心不全の制圧には、ヒト自律神経活動を長期間モニターし且つ制御治療できる、全く新しいハイテク医療装置の開発が必要であり、その鍵を握る。本研究の目的は、このような自律神経医療を可能とする神経装置を開発することである。
研究方法
ナノエレクトロニクスを含むMEMS技術による、微小針電極を集積化した超小型神経センサー兼刺激装置を開発する。簡単な手術で末梢神経に装置を装着する。針電極は極細なため組織傷害性が小さく低侵襲的で安全である。頚部迷走神経及び下肢脛骨・腓骨神経に装置を装着し、適当な電極の組合せから迷走神経心臓枝および交感神経活動を検出し長時間連続モニターでき、更にその電極刺激によって、副作用なく迷走神経心臓枝を高選択刺激できる特色を有する。
結果と考察
応力シミュレーションと動物実験等によって装置材料や構造を検討し、タングステン微小針電極を12本集積化した世界最小レベルの電極アレイ神経装置を開発した。この装置を急性動物実験(ウサギ)において植込み、交感神経(下肢腓骨・脛骨神経)及び迷走神経心臓枝(頚部迷走神経)の活動の選択モニターに成功した(世界初、国内特許出願-特願2007-023501)。さらに、MEMS技術によって神経装置の耐用性を改良した。フォトリソ及びドライ・ウェットエッチング技術でSi台座を構造形成し、Au/Pt/Tiメタル膜で配線電極パターンを形成、針電極とAu線を接続固定し、装置を絶縁被覆した。さらに装置を保護するSiチューブ部及び全体のシリコンゲル固定を開発し、身体活動等による神経-装置のズレや損傷を克服した。この装置を慢性動物実験(ウサギ等)において植込み、意識化動物において自律神経モニター且つ刺激に成功した。また体表刺激装置(特願2005-345307)と融合した自律神経閉ループ制御システムを構築し、動物治療実験に成功した。さらに組織解析等で装置安全性を裏付けるデータを蓄積した。
結論
本研究で開発中の神経装置は、心不全などの循環器疾患において、自律神経のモニターや制御治療に有効であると期待される。装置のさらなる改良を行ってゆく予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
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