ナノ無機・有機複合塩を用いた遺伝子送達システムの開発

文献情報

文献番号
200712013A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノ無機・有機複合塩を用いた遺伝子送達システムの開発
課題番号
H17-ナノ-若手-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
木村 剛(国立大学法人東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 古薗 勉(国立循環器病センター研究所先進医工学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノメディシン研究領域における重要課題の一つである遺伝子送達システムの開発においては、低細胞傷害性、高遺伝子導入効率を兼ね備える遺伝子ベクターが望まれている。本研究事業では、効率的遺伝子導入のためのpH応答性ナノ無機粒子の創出と高圧技術を用いたナノ無機粒子を含有する非電荷の水素結合性高分子と遺伝子との複合体である「ナノ無機粒子/水素結合性高分子/遺伝子複合体」の創製により、低毒性、高効率なナノ無機・有機複合型遺伝子ベクターの開発を目的としている。本年度は、前年度までに開発したpH応答性ナノ無機粒子/水素結合性高分子/遺伝子複合体の最適化とin vitro/in vivo遺伝子導入における有効性を検討した。
研究方法
湿式法および改良エマルジョン法にて得たpH応答性ナノ無機粒子と水素結合性高分子とDNAを種々の割合で混合し、異なる条件にて高圧処理を施しpH応答性ナノ無機粒子/水素結合性高分子/DNA複合体を調製した。サイズ・分散性等の物性およびin vitro/in vivo遺伝子導入での細胞傷害性、遺伝子発現等を検討した。また、プラスミドDNA溶液に高圧処理を施し、凝縮度、酵素耐性、被転写・翻訳効率等の基礎的検討とin vivo遺伝子導入での遺伝子発現等を検討した。In vivo遺伝子導入は、DNA単独投与にて効果的な遺伝子発現を示すハイドロダイナミックス法にて行った。
結果と考察
超高圧処理によりpH応答性ナノ無機粒子/水素結合性高分子/DNA複合体が得られた。得られる複合体のサイズは、用いる水素結合性高分子の濃度に依存し、低濃度にてナノサイズの複合体が得られた。In vivo遺伝子導入においては、pH応答性ナノ無機粒子を含まない超高圧誘起水素結合性高分子/DNA複合体にて、DNA単独に比べて低い遺伝子発現が示されたが、pH応答性ナノ無機粒子/水素結合性高分子/DNA複合体では、約10倍の遺伝子発現の増加が示された。これはナノ無機粒子の含有効果を示唆している。DNA単独への高圧処理にてDNA凝縮体が得られ、凝縮度は圧力依存的であり、高い圧力にて高凝縮のDNAが得られた。凝縮DNAを用いたin vivo遺伝子導入においては、未処理DNAでは一過的な高遺伝子発現に続く経時的な減少を示したが、一方の高圧凝縮DNAの場合は、経時的に遺伝子発現が増加した。これはDNAの凝縮状態からの巻き戻りに由来すると考えられる。
結論
本研究により、ナノ無機・有機複合型遺伝子ベクターの有用性が示された。また、高圧凝縮DNAの有効性が示され、構造科学的観点からの新しい知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200712013B
報告書区分
総合
研究課題名
ナノ無機・有機複合塩を用いた遺伝子送達システムの開発
課題番号
H17-ナノ-若手-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
木村 剛(国立大学法人東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 古薗 勉(国立循環器病センター研究所先進医工学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノメディシン研究領域における重要課題の一つである遺伝子送達システムの開発においては、低い細胞傷害性、高い遺伝子導入効率を兼ね備える遺伝子ベクターが望まれている。本研究事業では、効率的遺伝子導入のためのpH応答性ナノ無機粒子の創出と超高圧技術を用いたナノ無機粒子を含有する非電荷の水素結合性高分子と遺伝子との複合体である「ナノ無機粒子/水素結合性高分子/遺伝子複合体」の創製により、低毒性、高遺伝子発現効率なナノ無機・有機複合型遺伝子ベクターの開発を目的としている。
研究方法
湿式法および改良エマルジョン法によりpH応答性ナノ無機粒子を調製し、溶解性、分散性、サイズ等の物性を検討した。種々の水素結合性高分子を用いてpH応答性ナノ無機粒子とDNAを種々の割合で混合し、異なる条件にて超高圧処理を施し素結合性高分子/DNA複合体およびpH応答性ナノ無機粒子/水素結合性高分子/DNA複合体を調製した。サイズ・分散性等の物性およびin vitro/in vivo遺伝子導入での細胞傷害性、遺伝子発現等を検討した。得られた知見を基に、複合体調製における最適化を検討した。また、プラスミドDNA単独に高圧処理を施し、凝縮度、酵素耐性、被転写・翻訳効率等の基礎的検討とin vivo遺伝子導入での遺伝子発現等を検討した。
結果と考察
湿式法、改良エマルジョン法によりナノ無機粒子が得られた。湿式法によるナノ無機粒子の調製においては、リン酸・炭酸混合液の混合比を制御することでpH応答性ナノ無機粒子が得られた。超高圧処理によりpH応答性ナノ無機粒子/水素結合性高分子/DNA複合体が得られ、用いる水素結合性高分子の種類・濃度および圧力処理条件により複合体の物性制御が可能であった。複合体を用いたin vitro遺伝子導入では、細胞傷害性は低く、また、効率的な細胞内取り込みが示された。in vivo遺伝子導入では、複合体投与による遺伝子発現の向上が示され、ナノ無機粒子の含有効果が示唆された。DNA単独への高圧処理にてDNA凝縮体が得られ、その凝縮度の制御も可能であった。凝縮DNAのin vivo遺伝子導入では、経時的に遺伝子発現が増加し、凝縮状態からの巻き戻りに由来すると考えられた。
結論
本研究では、ナノ無機・有機複合型遺伝子ベクターの創製に関する要素技術の開発を行い、遺伝子送達における本技術の有用性が示された。また、DNAが高圧印加により凝縮される現象を見出し、遺伝子送達での有効性が示され、構造科学的観点からの新たな知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200712013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究事業では、ナノ無機・有機複合塩の創製と遺伝子送達システム開発における高圧技術の応用が示され、従来の化学的アプローチとは異なるプロセス工学からの遺伝子送達システムの創出という観点からの新しい要素技術開発基盤を提供できたと考えられる。また、新たにDNAの高圧凝縮現象を見出し、その遺伝子送達への応用が示めされ、構造科学的観点からの新しい知見が得られた。
臨床的観点からの成果
本研究事業では、高圧技術を応用したナノ無機・有機複合体および高圧凝縮DNAを創製し、in vitro/in vivo遺伝子導入での低毒性・高効率な遺伝子送達が可能であった。前者においては臨床にて利用されている既存の生体適合性材料が応用でき、後者においては現在の臨床応用研究にて約20%を占めるNaked plasmid DNA法への応用可能性が示めされた。
ガイドライン等の開発
従来からの人工材料による遺伝子送達においては、遺伝子担持体の細胞傷害性が改善すべき課題である。本研究事業では、細胞障害性の低減を主眼とし、臨床にて利用されている既存の生体適合性材料の応用あるいは遺伝子担体の使用を抑制した遺伝子送達システムの開発研究を実施し、有用性を示した。遺伝子治療におけるガイドライン等の開発における有用な研究成果と考える。
その他行政的観点からの成果
現在の遺伝子治療の臨床応用研究においては、遺伝子単体投与、遺伝子担持体での投与では効果が低く、また、一過性であることが問題点であり患者への負担は大きい。本研究事業では、遺伝子のナノスケール化に高圧技術を導入することで遺伝子の長期発現の可能性を示したことから上述の欠点を補えることが示唆され、ナノテクノロジーを応用した医療技術(ナノメディシン)の基盤技術の一つとして考えられる。
その他のインパクト
平成18年2月23日の日刊工業新聞に本研究事業の成果の一部が取り上げられた。また、平成20年1月17日の日経産業新聞に本研究事業の一部が取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
ホームページにて研究・学会発表等の情報公開および講演会での講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kwangwoo Nam, Tsuyoshi Kimura, Akio Kishida.
Influence of cross-linking on physochemical and biological properties of collagen-phospholipid hybrid gel
Trans. Mater. Res. Soc. Jpn. , 31 (2) , 735-738  (2006)
原著論文2
Kwangwoo Nam, Tsuyoshi Kimura, Akio Kishida
Preparation and cheracterization of cross-linked collagen-phospholid polymer hybrid gel
Biomaterials , 28 (1) , 1-8  (2007)
原著論文3
Tsuyoshi Kimura,Tsutomu Furuzono, Akio Kishida et al.
Preparation of PVA/DNA hydrogels via hydrogen bonds by ultra high pressure treatment and controlled release of DNA from hydrogels for gene delivery
Journal of Artificial Organs , 10 (2) , 104-108  (2007)
原著論文4
Kwangwoo Nam, Tsuyoshi Kimura, Akio Kishida
Physical and biological properties of collagen-phospholipid polymer hybrid gels
Biomaterials , 28 (20) , 3153-3162  (2007)
原著論文5
Tsuyoshi Kimura, Toshiya Fujisato, Akio Kishida et al.
Characteristics of compacted plasmid DNA by high pressurization
Nucleic Acids Symposium Series , 51 , 343-344  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-