救急救命士の需給に関する研究

文献情報

文献番号
199700308A
報告書区分
総括
研究課題名
救急救命士の需給に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
信川 益明(杏林大学医学部医療科学教室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 健康政策調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
救急救命士は、救急業務の高度化の進展等を背景として、需要、供給ともに急速に増大し、養成校の養成枠も増加している状況である。しかし、今後、救急救命士の専門性、養成校、養成所の養成定員、国家試験の合格率、救急救命士の求人状況、離職状況、消防職員の退職年齢等の環境の変化が予測される。このため中長期的な救急救命士の需給について試算を行い、質の高い人材確保、効率的な人的資源配分の観点から、救急救命士の需給の在り方について検討を行うことが必要である。
研究方法
救急救命士の養成校数、養成定員、国家試験合格率、求人状況等を調査などをもとに救急救命士の需給の現状を把握した。更に今後予測される環境変化、その他の政策的要因等をパラメータとして中長期的な需給の動向につき試算を行った。その結果をもとに、救急救命士の養成のあり方を検討した。
需要側の関係因子は、患者数、医療施設数、老人保健関係施設数、福祉施設数、公共施設数、老人人口、交通事故件数、救急出動件数、火災発生件数、求人施設、求人件数、平均出動時間などが挙げられる。供給側の関係因子は、養成所数、入学者数、途中退学者数、卒業者数、合格者数、合格率、男女比率、就業率、退職者数、退職年齢、救急車台数、救急隊数、勤務時間、配属先の変更、並びに救急救命士として現場の職務を離れる一般的年齢、救急救命士国家試験合格者年齢階級別人数、救急救命士の離職率算定データなどが挙げられる。
自治省消防庁における民間養成校からの採用についても重要な検討項目であり、民間養成校からの採用に関する基礎的なデータを収集するため、5つの民間養成校を対象として、郵送による質問紙法により調査を実施した。調査項目は、入学者数、途中退学者数、卒業者数、国家試験合格者数、就職率、就職先(消防関係機関等)などであった。
結果と考察
需給バランスについては、現行体制の場合、平成19年に需要者数22,419人、供給者数22,330人となり、需給格差が89人と最も少なく、ほぼ需給は均衡することになる。消防機関関係養成施設の養成期間を現行の6ヶ月から10ヶ月~1年間に変更し教育の充実を図った場合(1年間に約600人養成人員が減少)では、供給者数が増加せず、需給は均衡しなかった。民間養成校の定員、就職率、国家試験合格率を各々600人増員、800人増員、1,000人増員、1,200人増員と、現行の就職率75%から85%、95%に、現行の合格率71%から80%、90%に変更した場合のシミュレーションを実施した。
その結果、?合格率71%、就職率75%、800人増の場合、平成19年に需給は均衡した。?合格率71%、就職率85%、600人増の場合、平成19年に需給は均衡した。?合格率71%、就職率95%、600人増の場合、平成16年に需給は均衡した。?合格率71%、就職率95%、1,000人増の場合、平成15年に需給は均衡した。?合格率80%、就職率95%、1,000人増の場合、平成14年に需給は均衡した。?合格率90%、就職率95%、1,200人増の場合、平成13年に需給は均衡した。現行体制では平成19年に救急救命士の需給が均衡するが、消防機関関係養成施設の教育体制の充実を図るために、養成課程を1年間とした場合、民間養成校の就職率の向上と定員増が行われれば、現行体制と同じ平成19年に需給は均衡することとなる。 今後は、公共施設や社会福祉施設など将来的に救急救命士の設置が望まれ、社会的要請による救急救命士の将来的な需要が発生する可能性のあるケースに関しては、その配置場所と配置人数のシミュレーションのもと、将来需要に算入する推計を実施することが必要である。
結論
現行体制では平成19年に救急救命士の需給が均衡したが、質の高い人材確保などを図るため、消防機関関係養成施設の養成課程を1年間とした場合、民間養成校の就職率の向上と定員増が行われれば、現行体制と同じ平成19年に需給は均衡すること、及び国家試験合格率、就職率、定員の変化により平成19年以前にも需給が均衡することが示された。今後、公共施設や社会福祉施設などの社会的要請による救急救命士の将来的な需要を推計することが必要である。

公開日・更新日

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