文献情報
文献番号
200712012A
報告書区分
総括
研究課題名
がん新生血管を標的としたAll in oneデバイスによる革新的siRNAデリバリーシステムとがん治療法の開発
課題番号
H17-ナノ-若手-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
石田 竜弘(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
- 浅井 知浩(静岡県立大学 大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまでの検討において細胞死を誘導するsiRNAを獲得し、新生血管に親和性を有するデリバリーシステム(リポソーム)の開発を行ってきた。平成19年度はこれらの有用性についてin vivo動物モデルを用いて検討をおこない、がん新生血管の破壊とそれに伴うがんの退縮を実現させうる革新的がん治療法の開発が可能であるか評価した。
研究方法
siRNA/キャリア(リポソーム)複合体のin vivo活性は、HT-1080細胞移植ヌードマウスモデルを用い、腫瘍内への直接投与、あるいは静脈内への投与によって評価した。抗腫瘍活性は腫瘍体積の変化および生存日数を指標に評価した。
結果と考察
siRNA/リポソーム複合体(新規処方)のin vivo活性に関して、担がんモデル動物を用いて検討を行った。まず、判定が簡便な腫瘍内直接投与法によってin vivo活性を評価した。検討の結果、顕著な腫瘍増殖抑制効果が得られ、Argonaute2 (Ago2) knockdownによってin vivoでも期待した効果が得られることが明らかとなった。そこで、静脈内投与によっても同様の抗腫瘍効果が得られるか検討したところ、腫瘍体積が小さい段階(繰り返し投与初期)では治療群において腫瘍増殖抑制効果が観察されたが、漸次その効果はなくなり繰り返し投与後期ではコントロール群との有意差は見られなくなった。これは腫瘍が小さい段階では血管新生を阻害する事が大きな意味を持つが、ある程度腫瘍が増殖すると成熟した血管が多くなりAgo2 knockdownの影響が現れにくくなったからであると考えられる。類似の現象が低分子化合物や抗体を用いた抗血管新生療法でも観察されており、抗がん剤との併用療法で高い抗腫瘍効果が得られる事が報告されている。したがって、本システムにおいても、抗がん剤との併用によって高い抗腫瘍効果が得られる可能性が考えられ、新規治療法となる可能性が極めて高いと考えられる。
結論
RNAi機構において重要なAgo2をknockdownすること、およびAgo2をknockdownする能力を持つsiRNAをがん新生血管に選択的にデリバリーすることで、これまで困難であったsystemic injectionによって腫瘍増殖抑制効果を獲得しうるシステムの構築に成功した。
公開日・更新日
公開日
2008-04-11
更新日
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