超音波を利用したsiRNA内包バブルリポソームのがん局所療法の臨床試験導入

文献情報

文献番号
200712007A
報告書区分
総括
研究課題名
超音波を利用したsiRNA内包バブルリポソームのがん局所療法の臨床試験導入
課題番号
H17-ナノ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松村 保広(国立がんセンター東病院臨床開発センターがん治療開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 安永 正浩(国立がんセンター東病院臨床開発センターがん治療開発部 )
  • 丸山 一雄(帝京大学薬学部)
  • 立花 克郎(福岡大学医学部)
  • 古市 泰宏((株)ジーンケア研究所)
  • 小玉 哲也(東北大学先進医工学研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
48,082,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
安全な低侵襲治療システムの確立のために、超音波発生プローブを試作し, バブル崩壊に最適な超音波の特性を求める。siRNA組込み型バブルリポソームと超音波の併用によるRNAi効果について評価する。いくつかの標的遺伝子について、そのサイレンシングが実際に抗腫瘍活性をもたらすか調べる。膀胱腫瘍への膀胱注入モデルを設定し、超音波・バブルリポソーム併用実験を行う。
研究方法
1)試作の1-MHz超音波プローブを配置する。3軸高剛性・精密型自動ステージを取り付ける。超音波発生面から1-mmの距離に, 超音波発生面に垂直にハイドロフォンの受圧面を配置する。超音波発生面に平行に二次元面を走査する。パルス発生器で増幅させて1-MHzの超音波を発生させる。 2)COS-7細胞にルシフェラーゼ発現プラスミドChol-siRNAと組込みバブルリポソームを添加し、超音波照射した。3)標的候補遺伝子のサイレンシングによる癌細胞増殖阻害の評価をin vivoで行う。4)ヌードマウス表在性膀胱がんモデル系の安定的作製法を確立すべく検討を重ねた。
結果と考察
1)超音波の照射面の圧力分布を一様にしたことにより、作製した超音波プローブが市販のものよりも導入効率が4-8倍高いことがわかった。2)siRNA 組込み型バブルリポソームと超音波の併用においてルシフェラーゼの発現抑制が観察された。3)Eg5、Cdc5、KNTC2、RecQL1のそれぞれのsiRNAで50~70%程度の抗腫瘍活性を見出した。4)膀胱がんの膀胱壁内への移植は100%の確立でヒト表在性膀胱がんの形態をとっていた。イムノバブルリポソームはバブルリポソームに比べ有意にルシフェラーゼ活性を抑制した。
 機器としての超音波装置と核酸のキャリアとしてのバブルリポソームが改良を重ねてきた結果、安全で効率よい分子導入装置が確立できた。siRNAのターゲット候補も数種類選択されてきたが、今後がん種ごとに、さらに慎重にターゲット分子は選択していくべきである。局所遺伝子デリバリーモデルとしては膀胱がんに焦点をあてて作成してきた結果、安定して表在性膀胱がんがマウス膀胱内に生着するようになった。
結論
今後正常組織へのダメージの有無につきさらなる検討が必要である。超音波・ナノバブルリポソームの併用療法の基礎ができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200712007B
報告書区分
総合
研究課題名
超音波を利用したsiRNA内包バブルリポソームのがん局所療法の臨床試験導入
課題番号
H17-ナノ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松村 保広(国立がんセンター東病院臨床開発センターがん治療開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 安永 正浩(国立がんセンター東病院臨床開発センターがん治療開発部)
  • 丸山 一雄(帝京大学薬学部)
  • 立花 克郎(福岡大学医学部)
  • 古市 泰宏((株)ジーンケア研究所)
  • 小玉 哲也(東北大学大学院先進医工学研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ナノサイズの機能化バブルリポソームと、非侵襲用超音波装置とのハイブリッドにより、核酸医薬を用いて、非侵襲または超低侵襲的に核酸治療を施すシステムを開発することである。
研究方法
1)今回作製した超音波プローブと市販の超音波プローブとで、遺伝子導入効率を比較した。2)パーフルオロプロパンガスを封入したPEGナノバブルリポソームの作製。3)標的候補遺伝子に対して、RNA干渉に伴う細胞増殖抑制効果を評価する。4)非臨床評価のための前臨床評価用in vivoモデル系の構築: ヒト肝がん、ヒト脳腫瘍、ヒト卵巣がん、ヒト膀胱がん細胞株にルシフェラーゼ発現プラスミドを導入した。局所投与評価を行うために、それぞれの同所移植モデルの作成を行った。5)抗体修飾を施したリポソームと修飾を施していないリポソームを用いてバブルを調整した。Luciferase-siRNAを投与することにより、核酸導入効率を比較した。
結果と考察
1)照射面の圧力分布が一様になったことで、分子の細胞への導入効率が市販のプローブに比べ4倍高くなった。2)作製したバブルリポソームは周囲をPEGで覆っているために溶液中でよく分散していた。バブルリポソームと超音波の併用により、ルシフェラーゼ発現抑制が認められた。3)Eg5、Cdc5、KNTC2、RecQL1のそれぞれのsiRNAで50~70%程度の抗腫瘍活性を見出した。4)ルシフェラーゼ強制発現させた肝がん、脳腫瘍、卵巣がん、そして膀胱がんの同所移植腫瘍はルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを腹腔内投与することにより、photon imagerにて、移植部での増殖状態を追跡できることがわかった。加えて、肝がん、脳腫瘍の動注方法、膀胱がんに対する膀胱注入方法も確立した。5)イムノバブルリポソームはバブルリポソームに比べ有意にルシフェラーゼ活性を抑制した。高い分子導入効率が得られる超音波装置が完成した。またナノバブルリポソームおよび抗体が付加されたイムノバブルリポソームは一定の規格で作製できるようになった。また局所核酸治療の非臨床モデルが確立した。
結論
世界初の超音波治療をめざす土台作りができた。今後は表在性膀胱がんに焦点をあてて臨床開発をめざす。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200712007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
癌領域における遺伝子核酸治療に関して臨床的成功例はない。理由のひとつに癌局所へのデリバリーが効率良くされていない点にある。そこで、臨床的に局所治療が有効とされている癌とその局所投与モデル評価系を確立した。そのうちの膀胱が癌同所移植モデルに対し、バブルリポソームと核酸の複合体を膀胱注入し、外部から正常組織にはダメージを与えないエネルギーの超音波を照射することにより、バブルを崩壊させ、その時の衝撃で核酸を膀胱内腫瘍に導入させる方法の確立に成功した。
臨床的観点からの成果
表在性膀胱癌は再発を繰り返し、最終的に浸潤癌となり膀胱全摘が余儀なくされる。今回開発した超音波治療システムは正常組織を損傷することなく効率よく生体深部への核酸導入を可能とする。治療も効果の判定も超音波で判断でき、すべてが非侵襲で治療が完結できる、画期的な診断治療システムが完結できる。本法はまた、装置の小型化により臨床現場において極めて簡易に施行でき、超音波を低侵襲的に目的部位に照射できるので、患者のQOLを低下することなく治癒がめざせる。
ガイドライン等の開発
このような新技術は国民の医療・福祉及び物づくり国家の使命という観点からも開発の迅速化、承認申請の円滑化が必須である。薬剤局所投与治療器といった分野での評価ガイドラインが妥当と考えるが、バブルリポソームについてはすでに抗がん剤内包リポソームの承認薬もあるし、超音波に関しては各種診断および結石破砕術が臨床で行われていることを考えると、非臨床から臨床への移行におけるエンドポイントをクリアにしておけば評価の困難さはないものと考える。
その他行政的観点からの成果
遺伝子・核酸治療は全身的治療法の臨床試験での不成功を受けて、世界的にその開発意欲が減退している。本研究で開発されたシステムはその閉塞感を打破し、臨床応用可能な治療法として世界に発信できる。本法は安全性が高く、患者のQOLを高めることができ、社会的貢献度は計り知れない。成果の社会への還元という点からも、日本のみならず世界の医療・福祉の向上におおいに貢献するものと期待される。
その他のインパクト
在日米商工会議所出版物ACCj Journal2007年3号に、研究内容を紹介された。日本機械学会誌2008年1月号に解説記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
36件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
71件
学会発表(国際学会等)
24件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Suzuki R, Matsumura Y, Maruyama K et al.
Tumor specific ultrasound enhanced gene transfer in vivo with novel liposomal bubbles.
J Control Release , 125 (2) , 137-144  (2008)
原著論文2
Suzuki R, Takizawa T, Maruyama K,et al.
Effective gene delivery with novel liposomal bubbles and ultrasonic destruction technology.
Int J Pharm , 354 , 49-55  (2008)
原著論文3
Aoi A, Watanabe Y, Kodama T, et al.
Herpes simplex virus thymidine kinase-mediated suicide gene therapy using nano/microbubbles  and ultrasound.
Ultrasound in Medicine and Biology. , 34 (3) , 425-434  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-