宿主ゲノム多様性を考慮したCTL誘導エイズワクチン開発戦略

文献情報

文献番号
200710018A
報告書区分
総括
研究課題名
宿主ゲノム多様性を考慮したCTL誘導エイズワクチン開発戦略
課題番号
H19-政策創薬-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
俣野 哲朗(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 彰方(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
  • 朱 亜峰(ディナベック株式会社)
  • 明里 宏文(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界のHIV感染者数増大は極めて深刻な問題であり、この問題克服の切り札となるエイズワクチン開発は国際的重要課題である。我々はこれまで、センダイウイルス(SeV)ベクターを用いた細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導型予防エイズワクチンを開発し、アカゲザルエイズモデルにて世界で唯一のワクチンによるSIV複製制御例を報告してきた。本研究では、我々のCTL誘導型予防エイズワクチンの臨床応用に向け、宿主ゲノム多様性のワクチン有効性への影響を明らかにすることを目的として、ビルマ産アカゲザルエイズモデルにて、宿主遺伝子多型のワクチン効果への影響を解析することとした。具体的には、(1)主に細胞性免疫に関与するMHC遺伝子多型のワクチン有効性への影響の解析、(2)主に自然免疫に関与するMHC関連遺伝子多型のワクチン有効性への影響の解析、(3)SIV複製に関与するその他の宿主因子の解析の3つを骨子とする。
研究方法
平成19年度には、(1)これまで特定してきたMHC-Iハプロタイプのうちの4つについて、各々を有する群における予防ワクチンの抗SIVmac239効果を検討した。(2)活性型NKレセプターNKG2DのリガンドであるRAET/ULBPについて遺伝子構造解析を行った。(3)ヒトHIV感染への関与が知られているcyclophilin AについてSIV複製への影響を解析した。
結果と考察
(1)ワクチンによりSIV持続感染成立阻止にいたるMHC-Iハプロタイプ共有群および持続感染成立が阻止できない群を見出した。この結果は、MHC-I依存的なワクチン効果を初めて明示するものである。(2)アカゲザルRAET/ULBP遺伝子群の構造を明らかにした。(3)アカゲザル細胞でのSIV複製においてもcyclophilin Aが重要な役割を担っていることを示した。
結論
CTL誘導型予防エイズワクチンのMHC-I依存性の有効性を初めて明らかにした。さらに、MHC関連遺伝子群の解析を進展させ、また、アカゲザル宿主因子としてcyclophilin A のSIV複製への関与を明らかにした。本研究の進展は、CTL誘導型予防エイズワクチン開発戦略の方向性を示すとともに、現在計画中のワクチン臨床試験第1相に引き続く第2・3相への進展に向けてのさらなる根拠の提示に結びつくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-