文献情報
文献番号
200710013A
報告書区分
総括
研究課題名
宿主細胞の細胞内免疫機構に基づく新規エイズ治療薬の開発
課題番号
H19-政策創薬-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山本 直樹(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 梁 明秀(国立感染症研究所エイズ研究センター)
- 澤崎 達也(愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
29,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HIV感染症の成立には宿主タンパク質とHIVタンパク質間の相互作用が必須である。感染にともなう宿主個体のウイルスに対する細胞内免疫応答機構の1つとして、宿主因子によるウイルスタンパク質の修飾、ウイルス-宿主タンパク質複合体の形成機構を理解するため分子生物学的研究を行った。
研究方法
研究には主として以下の方法を用いた:1)HIV-1感染実験、2)Gene reporter assay、3)電子顕微鏡での観察、4)免疫染色と共焦点顕微鏡での観察、5)GST pulldown analysis、6)Microtubule spin-down assay。さらに7)コムギ無細胞タンパク質合成系によりプロテインカイネースタンパク質ライブラリーの構築ならびに、基質タンパク質のリン酸化はAlphaScreen法を行った。
結果と考察
1.HIV-1感染におけるSOCS1の関与:SOCS1はHIV-1の感染によって誘導され、Posttranscriptional MechanismによりHIV-1の増殖を促進した。またSOCS1とHIV-1 Gag Proteinとの相互作用が見られた。さらにSOCS1はGagの構造を安定化させplasma membraneへの移動を促進した。SOCS1をsiRNAで欠損させると、HIV-1粒子の増殖とGagの動きを阻止した。そのとき免疫染色により、SOCS1-HIV-1Gag複合体は微小管に沿って局在することがわかった。2.機能的リン酸化するキナーゼの同定:AKT1およびPKCζがGagタンパク質をリン酸化することを検出することができた。今回の我々の研究成果は、SOCS1を介したGagタンパク質の細胞内輸送の分子機構をさらに詳細に明らかにしたものであり、SOCS1やその関連因子がAIDS/HIV治療における有望な宿主側標的因子として新しい治療法の確立につながることが期待される。
結論
SOCS1がHIV-1感染を助け、IFN非依存的に後期ウイルス増殖過程において重要な役割を担うことを示した。これらのことは、SOCS1が細胞内でHIV-1Gagをコントロールする重要な細胞因子であることを示唆しており、AIDSなどの治療における標的因子として新しい治療法の確立につながる可能性があると期待される。
公開日・更新日
公開日
2008-06-11
更新日
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