臨床応用可能な人工血小板としてのH12結合微粒子のin vivo評価

文献情報

文献番号
200710010A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床応用可能な人工血小板としてのH12結合微粒子のin vivo評価
課題番号
H18-創薬-一般-026
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
半田 誠(慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康夫(慶應義塾大学医学部 内科学)
  • 武岡 真司(早稲田大学理工学術院 医工学)
  • 後藤 信哉(東海大学医学部 内科学)
  • 鈴木 英紀(東京都臨床医学総合研究所 循環器病研究部門)
  • 鎌田 徹治(慶應義塾大学医学部 解剖学)
  • 梶村 眞弓(慶應義塾大学医学部 医化学)
  • 村田 満(慶應義塾大学医学部 中央臨床検査部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
35,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工血小板/血小板代替物のプロトタイプとして、初年度(平成18年度)の研究により絞り込まれた人工微粒子(H12担持リポソーム)の止血機能、適応方法、安全性を、in vivo実験系を中心に評価した。
研究方法
フィブリノーゲンのγ鎖C末端アミノ酸配列(HHLGGAKQAGDV: H12)をその表面に担持させ、アデノシン5’-二リン酸(ADP)を内包させたリポソーム(H12(ADP)小胞体)を対象とした。人工微粒子の静脈内投与による止血効果や安全性を、血小板減少ウサギの出血時間の測定に加え、新たに確立した腹部手術モデルで評価し、その適応法を検討した。さらに、標識した人工微粒子の止血部位集積性や体内動態を、ラットを用いてCTスキャンや生体顕微鏡に観察し、また、ヒト血小板とのin vitro相互作用を電子顕微鏡により解析した。
結果と考察
血小板減少ウサギにおけるH12(ADP)小胞体の止血効果(出血時間短縮)の持続は、その血中濃度に依存して、少なくとも投与後6時間まで観察された。また、腹部の手術部位からの出血量に対しても、血小板濃厚液に匹敵して、用量依存的に減少効果を発揮した。造影剤内包小胞体のラット尾静脈や頚静脈の血管傷害部位への特異的な集積がCTスキャン解析により初めて明らかとなった。また、ラット腸間膜微小循環おける出血部位のリアルタイム観察で、H12結合微粒子が血小板血栓と特異的な相互作用を示すことが確認され、さらに、超微形態学的検討でも、ヒトの活性化血小板との特異的な相互反応が観察された。小胞体の静脈投与により、ウサギにおいて血栓傾向などの急性毒性を示さずに、循環血液中での血小板活性化作用は認められなかった。
結論
人工血小板の最終候補であるH12(ADP)小胞体は、血小板に匹敵する止血効果を、安全に発揮し、その適応は出血の治療や予防にまで拡大できる可能性が指摘できた。さらに、その作用は活性化血小板との特異的な相互反応で止血局所でのみ発揮されることが確認された。多方面からの安全性評価とともに微粒子の止血機能の最適化を行い、人工血小板の実用化を目指してゆく。

公開日・更新日

公開日
2008-06-11
更新日
-