動物由来物質を排除したワクチン及び組織培養インフルエンザワクチンの製造方法の開発研究

文献情報

文献番号
200710001A
報告書区分
総括
研究課題名
動物由来物質を排除したワクチン及び組織培養インフルエンザワクチンの製造方法の開発研究
課題番号
H17-創薬-一般-049
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
田代 眞人(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤篤(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
  • 沼﨑啓(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
  • 駒瀬勝啓(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
  • 大槻紀之(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
  • 高崎智彦(国立感染症研究所 ウイルス第1部 )
  • 井上直樹(国立感染症研究所 ウイルス第1部 )
  • 大隈邦夫(財団法人 化学及び血清療法研究所)
  • 真鍋貞夫(財団法人 阪大微生物病研究会観音寺研究所)
  • 李富雄(社団法人 北里研究所)
  • 末原章宏(武田薬品工業株式会社)
  • 細井和男(デンカ生研株式会社)
  • 板村繁之(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生物を材料に使う生物学的製剤の性状は一般医薬品に比べ不安定である。医薬品GMPにより製造の再現性が確保されるようになった。製造に利用する動物由来物質に含まれる未知の感染性因子や微量の既知の因子の製剤への混入を排除することは困難である。そこで、本研究ではウイルスワクチン製造過程における動物由来物質の代替法の検討を目的とした。大流行が懸念されるインフルエンザウイルスのワクチンの製造に、従来の発育鶏卵製造法から安定供給が可能な組織培養製造法に変換することを検討した。
研究方法
自ら増殖する力の無いウイルスを増やすには宿主細胞が必須である。その細胞を維持、増殖するのに必要な、ウシ由来血清、ブタ由来トリプシン等を用いずにウイルスを増殖する方法の開発を行った。また、初代培養細胞の代わりに管理継代された株化細胞を用いることなどを検討した。インフルエンザウイルスについてはMDCK細胞の特定細胞株を使って増殖させ、どちらも得られたウイルスが従来の方法で得たウイルスと変わらずに製剤として使えるか否かを検討した。
結果と考察
おたふくかぜ、麻疹、風疹、水痘、日本脳炎、A型肝炎のワクチンについて無血清培地やトリプシンの代替品を使って従来の方法と同様にウイルスが増やせることが判った。しかし、おたふくかぜワクチンでは、無血清培地で継代を繰り返すと、より高い頻度で変異体が観察され、ウイルスのポピュレーション管理が大切であることがわかった。鶏卵に代わってMDCK細胞を使ってインフルエンザウイルスを増やせることが判った。むしろ、MDCK細胞を使った方が、抗原的にヒト間で流行しているウイルスに近い利点があった。
結論
多くの健康な人が予防のために用いるワクチンは安全性が高くなければならない。ワクチンの製造には予期せぬ感染性因子の混入を防ぐために他動物由来物質を用いない細胞培養システムを使うことが望ましい。無血清培地の性能の進歩により従来法と変わらず細胞並びにウイルスを増やすことが可能になった。しかし、この一方でワクチンウイルスが質的に以前と同等でなくなる例も認められ、注意が必要であった。インフルエンザウイルスの場合は、培養細胞の使用により抗原的によりよいものが作れる可能性があった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200710001B
報告書区分
総合
研究課題名
動物由来物質を排除したワクチン及び組織培養インフルエンザワクチンの製造方法の開発研究
課題番号
H17-創薬-一般-049
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
田代 眞人(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤篤(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
  • 沼﨑啓(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
  • 駒瀬勝啓(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
  • 大槻紀之(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
  • 高崎智彦(国立感染症研究所 ウイルス第1部 )
  • 井上直樹(国立感染症研究所 ウイルス第1部 )
  • 大隈邦夫(財団法人 化学及び血清療法研究所)
  • 真鍋貞夫(財団法人 阪大微生物病研究会観音寺研究所)
  • 李富雄(社団法人 北里研究所)
  • 末原章宏(武田薬品工業株式会社)
  • 細井和男(デンカ生研株式会社バイオロジック医薬品開発・インフルエンザワクチン開発部)
  • 板村繁之(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生物材料を用いる生物学的製剤の性状は一般医薬品に比べ不安定である。医薬品GMPの実施により製造の再現性が確保されるようになったが、製造に利用する動物由来物質に含まれる未知の感染性因子、またはごく微量の既知の因子の製剤への混入を排除できないため、本研究では動物由来物質の代替を検討することを目的とした。また、近年大流行が懸念されるインフルエンザウイルスのワクチン製造について、安定供給が不安な従来の発育鶏卵製造法から、鶏卵に依存せずに製造できる組織培養細胞製造に代替することを検討した。
研究方法
ウイルスを増やすには宿主細胞が必須である。その細胞を維持、増殖する為に他動物由来の物質であるウシ血清、ブタトリプシン等を用いずまた、ウイルスを培養すること、初代培養細胞の代わりに管理継代された株化細胞を用いることなどを検討した。また、インフルエンザウイルスについては、MDCK細胞の特定細胞株を使って増殖させ、従来の方法で得たウイルスと変わらずに製剤として使えるか否かを検討した。
結果と考察
おたふくかぜ、麻疹、風疹、水痘、日本脳炎、A型肝炎のワクチンについて無血清培地やトリプシン代替品を使って従来の方法と同様にウイルスが増やせた。しかし、おたふくかぜワクチンでは、無血清培地で継代すると、高頻度で変異体が観察された。一方、鶏卵に代わってMDCK細胞を使ってインフルエンザウイルスを増やせることが判ったが、安全性や増殖効率の検討が必要である。MDCK細胞を使った方が、抗原的にヒト間で流行しているウイルスに近い利点があった。
結論
多くの健康な人が予防のために用いるワクチンは安全性が高くなければならない。ワクチンの製造には予期せぬ感染性因子の混入を防ぐために他動物由来物質を用いない細胞培養システムを使うことが望ましい。無血清培地の性能の進歩により従来法と変わらず細胞並びにウイルスを増やすことが可能になった。しかし、この一方でワクチンウイルスが質的に以前と同等でなくなる例も認められ、注意が必要であった。インフルエンザウイルスの場合は、培養細胞の使用により抗原的によりよいものが作れる可能性があった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200710001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
おたふくかぜ、麻疹、風疹、水痘、日本脳炎、A型肝炎のワクチンについて無血清培地やトリプシン代替品を使って従来の方法とほぼ同様にウイルスが増やせることが判った。しかし、おたふくかぜや麻疹ワクチンでは、無血清培地で継代を繰り返すと、より高い頻度で変異体が観察され、ウイルスのポピュレーション管理が大切であることがわかった。鶏卵に変ってMDCK細胞を使ってインフルエンザウイルスを増やせることが判った。むしろ、MDCK細胞を使った方が、抗原的にヒト間で流行しているウイルスに近い利点があった。
臨床的観点からの成果
動物に由来する材料を完全に排除した生ワクチンの製造は、不可能ではないが非常に困難であることが示唆された。方法論からも、試行錯誤を繰り返さざるを得ない点も多く、計画した成果は十分には達成されたとは言いがたい。しかし、リスクを少しでも低下させることは可能であり、現状の改善においては大きな進展がもたらされると評価される。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
現行ウイルスワクチン製造には宿主細胞が必須であり、この排除は極めて困難である。また、無血清培養液には様々な細胞増殖因子が必要だが、これらも遺伝子組換え技術を用いた生物製剤である。従って、動物由来の材用を完全に排除することは不可能に近い。現時点では、動物由来の微生物、感染性因子の存在、迷入のリスクを最小化すること、又そのリスク評価を厳密に行うことが、現実的な解決方法であろう。絶対的に安全な生物製剤は存在しないということを、社会全体に理解してもらう努力が必要である。
その他のインパクト
欧米では既に組織培養細胞を用いたインフルエンザワクチン開発がほぼ終了しており、製造設備の建設が進んでいる。WHOも組織培養ワクチン導入を見越して、ウイルスサーベイランスおよびワクチン製造用ウイルスに関して、組織培養への移行の検討を開始した。我が国では、実用化に向けた組織培養細胞の開発は大幅に遅れているが、具体的なワクチンの規格を制定し、ワクチンの安全性や品質確保に必要な試験方法の検討や必要に応じて新たな試験方法の開発を進めることが、国家プロジェクトとして必須である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
29件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-