転写因子E2Fによる癌レギュローム解析から抗がん剤の安全性予測へ向けた研究開発

文献情報

文献番号
200708013A
報告書区分
総括
研究課題名
転写因子E2Fによる癌レギュローム解析から抗がん剤の安全性予測へ向けた研究開発
課題番号
H17-トキシコ-若手-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 健一(明治大学 農学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、転写因子E2F1・E2F4のゲノムワイドなプロモーター選択性と既知抗がん剤による細胞障害とのパラメトリックな関係を基盤データとして整備し、医薬品候補化合物の安全性を細胞レベルで簡便に予測可能な実験基盤の確立を目的とする。医薬品候補化合物の早期安全性評価は重要であり、ゲノム科学を応用することで得られる新技術はRegulatory Scienceに大きく貢献する。
研究方法
細胞としてHeLaおよび正常肺線維芽細胞WI-38細胞を、また、抗がん剤として、ピリミジンアナログでDNA合成阻害剤である5-フルオロウラシル(以下、5-FU)と植物アルカロイドでトポイソメラーゼII阻害剤であるエトポシド(以下、VP-16)を用いた。クロマチン免疫沈降法(以下、ChIP)によりE2F1あるいはE2F4の候補遺伝子プロモーターへの結合パターンを解析した。
結果と考察
転写因子E2F1・E2F4の全標的遺伝子同定を目指した前年度までの取り組みとして、siRNAによりE2F1あるいはE2F4の発現を抑制した細胞を調整しDNAマイクロアレイなどによる網羅的発現解析から多くの標的候補遺伝子を同定した。今回、これら遺伝子情報を基に、いくつかの解析候補遺伝子を選定し、抗がん剤として5-FUあるいはVP-16をHeLaならびにWI-38細胞に投与し、E2F1あるいはE2F4のプロモーターへの結合パターンがどのように変化するか解析した。検討した18遺伝子における解析から、今後有益と考えられる情報を得ることができた。しかしながら、ChIP法ではPCRによる検出を含むためartifactなPCRバンドを検出している可能性も高い。また、再現性をさらに詳しく検討する必要も高い。未知の化合物の薬効・副作用を予測するためには、さらなる網羅的解析が必要であると考えられる。また、より定量的な解析精度の向上が達成できれば、より再現性の高い、普遍的な遺伝子セットが抽出可能と思われる。
結論
本研究では、これまでに転写因子E2F1およびE2F4のsiRNAによる発現抑制細胞での網羅的発現解析を実施し多数のユニークな標的候補遺伝子を同定することに成功した。当該年度では特に選定した18遺伝子について、抗がん剤である5-FUおよびVP-16によりE2F1・E2F4が標的遺伝子プロモーターに対して示す結合パターンの解析を実施した。同時に細胞の表現型も観察した。以上より、特定の遺伝子セットの抽出が可能となり、新規化合物の副作用を予測可能なアッセイ系確立に近づいた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200708013B
報告書区分
総合
研究課題名
転写因子E2Fによる癌レギュローム解析から抗がん剤の安全性予測へ向けた研究開発
課題番号
H17-トキシコ-若手-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 健一(明治大学 農学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗がん剤として開発される新規低分子化合物が正常細胞に対しては副作用を示さず、一方、がん細胞に対しては増殖に対し抑制的に作用するかどうか、簡便なアッセイで予測できれば未然に医薬品開発のコストを低減できるし、患者に対しても不要な侵襲を防止でき、国民の福祉に貢献可能である。本研究ではヒト細胞に抗がん作用を有する化合物を投与した結果、細胞が示す応答性とE2F標的遺伝子プロモーター上でのE2F1とE2F4のアフィニティーとのパラメトリックな関係を網羅的に解析することで、化合物による細胞傷害を効率的に予測する系の確立を目指した。
研究方法
内在性E2F1およびE2F4の発現を抑制し、高密度DNAマイクロアレイによる網羅的発現解析から、解析候補遺伝子を探索した。同時に、E2F1抗体によるクロマチン免疫沈降(ChIP)法で回収したDNA断片の解析から、E2F1標的遺伝子を探索した。抗がん剤として5-FUおよびVP-16をHeLaおよびWI-38細胞に投与し細胞生存率と細胞死を評価した。がん細胞であるHeLa細胞に対してのみ薬効を示し、正常細胞であるWI-38に対してはほとんど副作用を示さない薬剤濃度を決定し、選定した遺伝子プロモーターにおけるE2F1とE2F4の結合性変化をChIP法で検出した。
結果と考察
転写因子E2F1およびE2F4の標的遺伝子を高密度DNAチップでスクリーニングし、いくつかの標的候補遺伝子を得た。5-FUをがん細胞に暴露した際には細胞死が、正常細胞に暴露した場合ではG1停止(修復可能なDNA障害)が惹起される濃度、あるいはそういった状態に細胞が至らない濃度におけるE2F結合パターンをChIP法で探索・収集し、18遺伝子における解析から、今後有益と考えられる情報を得ることができた。今後、未知の化合物の薬効・副作用を予測するためには、さらなる網羅的解析が必要であると考えられる。より定量的な解析精度の向上が達成できれば、より再現性の高い、普遍的な遺伝子セットが抽出可能と思われる。
結論
当初予想したように、プロモーター近傍に存在するE2F結合コンセンサス配列でE2F1とE2F4が競合的に作用しあうことで特定の遺伝子発現を制御する事実が見出された。抗がん剤として5-FUおよびVP-16、細胞としてHeLaおよびWI-38を用い、選定した18遺伝子プロモーター近傍配列を標的としたChIP解析から、E2F1・E2F4のプロモーター選択性と抗がん剤による細胞障害とのパラメトリックな関係を抽出する系の構築に一歩前進した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200708013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
転写因子E2F1・E2F4のプロモーター選択性と抗がん剤による細胞障害とのパラメトリックな関係を抽出する系の構築に一歩前進した。今回得られた検討結果を基盤として、さらに多数の遺伝子、抗がん剤について再現性の高い情報を蓄積する必要性が示唆された。
臨床的観点からの成果
本研究は培養細胞を用いたアッセイ系の結果であり、臨床的にどの程度応用可能かは現時点で判断することが困難である。
ガイドライン等の開発
該当せず。
その他行政的観点からの成果
該当せず。
その他のインパクト
該当せず。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshida K
Identification of a novel cell-cycle-induced MCM family protein MCM9
Biochemical and Biophysical Research Communications  (2005)
原著論文2
Yoshida K
Identification and characterization of human ZNF18 gene in silico
International Journal of Molecular Medicine  (2005)
原著論文3
Yoshida K
Cell-cycle-dependent regulation of the human and mouse Tome-1 promoters
FEBS Letters  (2005)
原著論文4
Hayashi R, Goto Y, Haga A et al
Comparative genomics of MCM8 orthologous genes reveals transcriptional regulation by transcription factor E2
Gene  (2006)
原著論文5
Goto Y, Hayashi R, Kang D et al
Acute loss of transcription factor E2F1 induces mitochondrial biogenesis in HeLa cells
Journal of Cellular Physiology  (2006)
原著論文6
Hayashi R, Goto Y, Tanaka R et al
Transcriptional regulation of human chromatin assembly factor ASF1
DNA and Cell Biology  (2007)
原著論文7
Tategu M, Arauchi T, Tanaka R et al
Systems biology-based identification of crosstalk between E2F transcription factors and the Fanconi anemia pathway
Gene Regulation and Systems Biology  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-