肝ステム細胞を用いた毒性発現の評価解析方法の確立

文献情報

文献番号
200708008A
報告書区分
総括
研究課題名
肝ステム細胞を用いた毒性発現の評価解析方法の確立
課題番号
H17-トキシコ-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
三高 俊広(札幌医科大学 医学部附属がん研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,156,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝前駆細胞である小型肝細胞を用いて毒性発現の評価解析方法を確立し、網羅的遺伝子発現解析を組み合わせて薬剤の副作用や相互作用を予測する技術を開発しようとするものである。またヒト正常肝臓より小型肝細胞を分離培養する方法を確立し、不足しているヒト肝細胞の供給に道を付けたいと考えている。
研究方法
・ホルモン異常状態における薬剤の代謝酵素遺伝子誘導発現の解析
 甲状腺ホルモンのCYP2B1発現に対する影響をin vitro 及びin vivoで検討した。また成熟化誘導した小型肝細胞の遺伝子発現GeneChipを用いて網羅的に解析し、成熟肝細胞と比較検討した。
・ 小型肝細胞の増殖機序と肝ステム細胞から小型肝細胞を誘導する方法の確立
Follistatin/Activinの小型肝細胞における発現とその増殖に対する影響を調べた。ガラクトサミン投与により障害肝を作成し、肝ステム細胞であるOval細胞を分離培養し、小型肝細胞への分化誘導を検討した。
結果と考察
・ 凍結保存後の肝細胞を無血清で培養するとCYP2B1発現は低下し、甲状腺ホルモン低下症ラットにおいてもCYP2B1発現は低下する。この研究成果は、甲状腺ホルモンがCYP2B1の発現に必須であることを示している。
・ 成熟化誘導した小型肝細胞は、成熟肝細胞に近い遺伝子発現パターンを持つようになり、小型肝細胞の持つ未熟性や増殖能が減少・消失するようになることを示している。
・ 小型肝細胞はFollistatin発現が高く、Activin Aの発現が抑えられているために強い増殖活性を示すことがわかった。この研究成果は、ヒト小型肝細胞の増殖を促進させる培養方法の改善に寄与すると考えられる。
・ ラットの障害肝臓からOval細胞を分離・培養し肝細胞・胆管上皮細胞に分化させることに成功した。この研究成果は、病的肝臓から分離した小型肝細胞以外のステム細胞からも小型肝細胞を誘導可能であることを示唆している。
結論
成熟化誘導した小型肝細胞は成熟肝細胞に相当する機能の多くを有していることがわかった。また肝ステム細胞から小型肝細胞を誘導できることもわかった。ヒト小型肝細胞の分離培養が可能になり、小型肝細胞の増殖機序も明らかになったことから小型肝細胞を増やして創薬研究に使える見込みが立ったと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200708008B
報告書区分
総合
研究課題名
肝ステム細胞を用いた毒性発現の評価解析方法の確立
課題番号
H17-トキシコ-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
三高 俊広(札幌医科大学 医学部附属がん研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝前駆細胞である小型肝細胞を用いて毒性発現の評価解析方法を確立し、網羅的遺伝子発現解析を組み合わせて薬剤の副作用や相互作用を予測する技術を開発しようとするものである。またヒト正常肝臓より小型肝細胞を分離培養する方法を確立し、不足しているヒト肝細胞の供給に道を付けたいと考えている。
研究方法
本研究事業では主に以下の(1)?(4)の研究を行った。
(1)毛細胆管へ分泌される代謝産物の同定方法の確立
(2)ホルモン異常状態における薬剤の代謝酵素遺伝子誘導発現の解析
(3)ヒト小型肝細胞を効率よく分離培養する方法の確立  
(4)小型肝細胞の増殖機序と肝ステム細胞から小型肝細胞を誘導する方法の確立
結果と考察
(1)毛細胆管へ分泌される代謝産物の同定方法の確立
成熟化誘導した小型肝細胞は、胆汁排泄機能を有し、毛細胆管中に排泄された胆汁成分を回収することにより代謝産物の同定が可能になった。
(2)ホルモン異常状態における薬剤の代謝酵素遺伝子誘導発現の解析
肝細胞におけるCYP2B1の発現に甲状腺ホルモンが必須であることがわかった。また成熟化誘導した小型肝細胞は、成熟肝細胞に近い遺伝子発現パターンを持つようになり、成熟肝細胞の代替になり得ること示した。
(3)ヒト小型肝細胞を効率よく分離培養する方法の確立
ヒト小型肝細胞は、ヒアルロン酸と無血清培養液を併用すると分離培養可能であり100倍以上増殖することがわかった。また心臓死した肝臓からも分離可能であった。
(4)小型肝細胞の増殖機序と肝ステム細胞から小型肝細胞を誘導する方法の確立
小型肝細胞はFollistatin発現が高く、Activin Aの発現が抑えられているために強い増殖活性を示すことがわかった。またラットの障害肝臓からOval細胞を分離・培養し肝細胞・胆管上皮細胞に分化させることに成功した。この研究成果は、小型肝細胞のソースの多様化と増殖効率の改善に寄与すると考えられる。
結論
本研究により、小型肝細胞は長期間の培養及び凍結保存ができ、成熟肝細胞と同等の機能を有し、薬剤等のADME研究に十分応用可能なことを示した。またヒト小型肝細胞の分離培養も可能なことを示した。本研究事業の成果は、医薬品開発に要する時間・経費を削減し、動物実験の負担を少なくし、優れた医薬品の創成と価格低下によって、医療費削減、国民医療・衛生に多大な寄与をすることに繋がると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200708008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
動物個体を使わずに化学物質の代謝経路や排泄過程を推測できる実験系が確立されたことにより動物実験を相当数減らせることが期待できる。また肝細胞機能を長期間維持する実験系ができたことで、肝細胞への長期暴露や薬剤の相互作用の実験を行うことができるようになった。培養条件の改善や肝ステム細胞から小型肝細胞を誘導する方法の確立したことにより、病的肝臓や心臓死後の肝臓からもヒト小型肝細胞を誘導することが可能になったと考えられる。
臨床的観点からの成果
ヒト小型肝細胞は比較的新鮮な正常ヒト肝組織が入手できれば、肝細胞分離操作を行ない、無血清培地を用いることで選択的に増殖させることができるようになった。成熟化誘導した小型肝細胞が肝細胞と同様な機能を有していることがわかったので、これまで破棄されてきた手術肝組織や不適ドナー肝臓、心臓死後の摘出肝臓から小型肝細胞を分離培養することでヒト肝細胞を得ることができる目途が立った。新たな正常ヒト肝細胞の供給により、再生医療への応用が期待できる。
ガイドライン等の開発
該当事項無し
その他行政的観点からの成果
該当事項無し
その他のインパクト
2005年12月6日毎日新聞朝刊にてヒト小型肝細胞の研究について紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
68件
口頭発表44件、ポスター発表24件
学会発表(国際学会等)
9件
口頭発表2件、ポスター発表7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
PCT出願した特許2件が各国での審査に移行した
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugimoto S, Harada K, Mitaka T, et al.
Hepatic organoid formation in collagen sponge of cells isolated from human liver
Tissue Engineering , 11 (4) , 626-633  (2005)
原著論文2
Miyamoto S, Hirata K, Mitaka T, et al.
Expression of cytochrome P450 enzymes in hepatic organoid reconstructed by rat small hepatocytes
Journal of Gastroenterology and Hepatology , 20 (6) , 865-872  (2005)
原著論文3
Kon J, Ooe H, Mitaka T, et al.
Expression of CD44 in rat hepatic progenitor cells
Journal of Hepatology , 40 (1) , 90-98  (2006)
原著論文4
Ooe H, Kon J, Mitaka T, et al.
Cytochrome P450 expressions of cultured rat small hepatocytes after long-term cryopreservation
Drug Metabolism and Disposition , 34 (10) , 1667-1671  (2006)
原著論文5
Chen Q, Kon J, Mitaka T, et al.
Selective Proliferation of Rat Hepatocyte Progenitor Cells in Serum-free Culture
Nature Protocols , 2 (5) , 1197-1205  (2007)
原著論文6
Oshima H, Kon J, Mitaka T, et al.
Functional Expression of Organic Anion Transporters in Hepatic Organoids Reconstructed by Rat Small Hepatocytes
Journal of Cellular Biochemistry (in press)  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-