ストレス遺伝子チップを用いた医薬品の副作用機構の解明と、副作用のない新規医薬品開発戦略の確立

文献情報

文献番号
200708007A
報告書区分
総括
研究課題名
ストレス遺伝子チップを用いた医薬品の副作用機構の解明と、副作用のない新規医薬品開発戦略の確立
課題番号
H17-トキシコ-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
水島 徹(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大塚 雅巳(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
13,802,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品副作用に関する感受性の個人差を規定する遺伝子多型を同定し、感受性を予測するシステムを確立する。
薬剤性間質性肺炎の発症機構を解明し、その実験動物モデルを確立する。
研究方法
 抗癌剤(ゲフィチニブ(イレッサ))、抗リウマチ薬(レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ)、漢方薬(小紫胡湯、牛車腎気丸)による間質性肺炎副作用発症機構を解明し、副作用の少ない新薬を開発するために、これらの医薬品のストレス遺伝子チップによる解析を行った。
 またsiRNA法や各種阻害剤などを用いて、これらの医薬品によるこれら遺伝子の抑制機構を解析した。そしてその抑制がこれらの医薬品の主作用(抗癌や抗リウマチなど)と関連があるのかを調べた。またこれらの遺伝子を恒常的に発現しているトランスジェニックマウス、及びこれらの遺伝子のノックアウトマウスを入手し、間質性肺炎誘導性を調べ、これらの遺伝子が間質性肺炎に関与しているかを調べた。また有機化学合成によりこれらの医薬品の誘導体を合成した。
結果と考察
薬剤性間質性肺炎副作用が問題になっている抗リウマチ薬等に関してトランスクリプトソーム解析を行い、これらの医薬品が抗炎症作用を持つタンパク質の発現を強く抑えることがこの副作用の原因であることを示唆すると共に、その実験動物モデルの確立に成功した。
結論
N薬剤性間質性肺炎に関する研究は、その分子機構の全体像を解明、動物モデルの更なる改良、患者の副作用感受性診断、副作用の少ない新薬の開発を目指して、研究を継続したい。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200708007B
報告書区分
総合
研究課題名
ストレス遺伝子チップを用いた医薬品の副作用機構の解明と、副作用のない新規医薬品開発戦略の確立
課題番号
H17-トキシコ-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
水島 徹(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大塚 雅巳(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品副作用に関する感受性の個人差を規定する遺伝子多型を同定し、感受性を予測するシステムを確立する。
薬剤性間質性肺炎の発症機構を解明し、その実験動物モデルを確立する
研究方法
新規ストレス遺伝子の検索
 細胞に各ストレスを与えた時に誘導される遺伝子を、既存のDNAチップ(ゲノム情報からランダムに遺伝子をチップ化したもの)を使って検索した。

副作用のないNSAIDsの発見
 我々が見いだしたNSAIDsの膜傷害性に関する構造活性相関を基に、新たに30種のNSAIDsを合成した。

間質性肺炎副作用に関する研究
 抗癌剤(ゲフィチニブ(イレッサ))、抗リウマチ薬(レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ)、漢方薬(小紫胡湯、牛車腎気丸)による間質性肺炎副作用発症機構を解明し、副作用の少ない新薬を開発するために、ストレス遺伝子チップによる解析を行った。
 
結果と考察
SNPのデータベースからNSAIDs 潰瘍感受性が変化させるSNP22種を同定した。

胃潰瘍副作用の少ないNSAIDsを発見した。

薬剤性間質性肺炎副作用が問題になっている抗リウマチ薬等に関してトランスクリプトソーム解析を行い、これらの医薬品が抗炎症作用を持つタンパク質の発現を強く抑えることがこの副作用の原因であることを示唆すると共に、その実験動物モデルの確立に成功した。
結論
NSAIDsに関しては、医薬品開発(臨床試験)を製薬企業と共同で進めていく。また薬剤性間質性肺炎に関する研究は、その分子機構の全体像を解明、動物モデルの更なる改良、患者の副作用感受性診断、副作用の少ない新薬の開発を目指して、研究を継続したい。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200708007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で開発した改良型ストレス遺伝子チップは、トキシコゲノミックスの研究に有用であると考えられる。実際我々はこのDNAチップを用いてNSAIDsで誘導されるストレス遺伝子の解析を行い、NSAIDs潰瘍感受性の個人差を規定している遺伝子多型の候補遺伝子の同定に成功した。
臨床的観点からの成果
これまでの我々の研究から、COX-2に対する選択性がなく、かつ膜傷害性のないNSAIDsは、胃潰瘍誘発副作用、及び心筋梗塞誘発副作用のない真に安全なNSAIDsになることが示唆されていた。本研究で我々はこのアイデアに従い、実際にCOX-2に対する選択性がなく、かつ膜傷害性のないNSAIDsのスクリーニングを行い、そのようなNSAIDsが胃潰瘍誘発副作用、及び心筋梗塞誘発副作用のない真に安全なNSAIDsであることを示した。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
本研究から生まれたNSAIDsの抗アルツハイマー病作用に関しては、2007年9月11付けの新聞各紙、及びテレビで広く報道された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
1. Mima, S., Tsutsumi, S., Ushijima, H. et al.
Induction of claudin-4 by non-steroidal anti-inflammatory drugs and its contribution to their chemopreventive effect.
Cancer Res. , 65 , 1868-1876  (2005)
原著論文2
2. Arai, Y., Tanaka, K., Ushijima, H. et al.
Low direct cytotoxicity of nabumetone on gastric mucosal cells.
Dig. Dis. Sci. , 50 , 1641-1646  (2005)
原著論文3
3. Tomisato, W., Tanaka, K., Tsutsumi, S. et al.
Low direct cytotoxicity and cytoprotective effects of nitric oxide-releasing indomethacin.
Dig. Dis. Sci. , 50 , 1927-1937  (2005)
原著論文4
4. Tanaka, K., Tomisato, W., Hoshino, T. et al.
Involvement of intracellular Ca2+ levels in non-steroidal anti-inflammatory drug-induced apoptosis.
J. Biol. Chem. , 280 , 31059-31067  (2005)
原著論文5
5. Ushijima, H., Tanaka, K., Takeda, M. et al.
Geranylgeranylacetone protects membranes against non-steroidal anti-inflammatory drugs.
Mol. Pharmacol. , 68 , 1156-1161  (2005)
原著論文6
6. Tsutsumi, S., Namba, T., Tanaka, K. et al.
Celecoxib up-regulate endoplasmic reticulum chaperones that inhibit celecoxib-induced apoptosis in human gastric cells.
Oncogene. , 25 , 1028-1029  (2006)
原著論文7
7. Aburaya, M., Tanaka, K., Hoshino, T. et al.
Heme oxygenase-1 protects gastric mucosal cells against non-steroidal anti-inflammatory drugs.
J. Biol. Chem. , 281 , 33422-33432  (2006)
原著論文8
8. Makise, M., Takahashi, N., Matsuda, K. et al.
Mechanism for the degradation of origin recognition complex containing Orc5p with a defective walker A motif and its suppression by over-production of Orc4p in yeast cells.
Biochem. J. , 402 , 397-403  (2007)
原著論文9
9. Hoshino, T., Nakaya, T., Araki, W. et al.
Endoplasmic reticulum chaperones inhibit the production of amyloid-β peptides.
Biochem. J. , 402 , 81-89  (2007)
原著論文10
10. Namba, T., Hoshino, T., Tanaka, K. et al.
Up-regulation of 150-kDa oxygen-regulated protein (ORP150) by celecoxib in human gastric carcinoma cells.
Mol. Pharmacol. , 71 , 860-870  (2007)
原著論文11
11. Tanaka, K., Tsutsumi, S., Arai, Y. et al.
Genetic evidence for a protective role of heat shock factor 1 against irritant-induced gastric lesions.
Mol. Pharmacol. , 71 , 985-993  (2007)
原著論文12
12. Namba, T., Ishihara, T., Tanaka, K. et al.
Transcriptional activation of ATF6 by endoplasmic reticulum stressors.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 355 , 543-548  (2007)
原著論文13
13. Mima, S., Ushijima, H., Hwang, H-J. et al.
Identification of the TPO1 gene in yeast, and its human orthologue TETRAN, which cause resistance to NSAIDs.
FEBS Lett. , 581 , 1457-1463  (2007)
原著論文14
14. Ishihara, T., Hoshino, T., Namba, T. et al.
Involvement of up-regulation of PUMA in non-steroidal anti-inflammatory drug-induced apoptosis.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 356 , 711-717  (2007)
原著論文15
15. Tanaka, K. Namba, T., Arai, Y. et al.
Genetic evidence for a protective role for heat shock factor 1 and heat shock protein 70 against colitis.
J. Biol. Chem. , 282 , 23240-23252  (2007)
原著論文16
16. Asano, T., Makise, M., Takehara, M. et al.
Interaction between ORC and Cdt1p of Saccharomyces cerevisiae.
FEMS Yeast Res. , 8 , 1256-1262  (2007)
原著論文17
17. Matsuda, K., Makise, M., Sueyasu, Y. et al.
Yeast two-hybrid analysis of the origin recognition complex of Saccharomyces cerevisiae: interaction between subunits and identification of binding proteins.
FEMS Yeast Res. , 8 , 1263-1269  (2007)
原著論文18
18. Hoshino, T., Nakaya, T., Houman, T. et al.
Involvement of prostaglandin E2 in production of amyloid-β peptides both in vitro and in vivo.
J. Biol. Chem. , 282 , 32676-32688  (2007)
原著論文19
19. Makise, M., Matsui, N., Yamairi, F. et al.
Analysis of origin recognition complex in Saccharomyces cerevisiae, by use of degron mutants.
J.Biochem.  (2008)
原著論文20
20. Takehara, M., Makise, M., Takenaka, H. et al.
Analysis of mutant origin recognition complex with reduced ATPase activity in vivo and in vitro.
Biochem. J.  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-