ヒト末梢血中リンパ球を用いたトキシコゲノミクス基盤研究

文献情報

文献番号
200708006A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト末梢血中リンパ球を用いたトキシコゲノミクス基盤研究
課題番号
H17-トキシコ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤村 昭夫(自治医科大学 臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 康雄(自治医科大学 臨床薬理学 )
  • 篠原 歩(東北大学大学院 システム情報学)
  • 石野 明(東北大学大学院 システム情報学)
  • 津田 英利(自治医科大学 臨床薬理学 )
  • 草間 幹夫(自治医科大学 歯科口腔外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医薬品の安全性を前臨床試験中に予測するシステムを構築するために、ヒトリンパ球由来培養細胞を用いた研究手法を確立する事を目的とした。
 本年度は平成18年度に確立した、腎障害性の有無を見分けるアルゴリズムの有用性を評価するために、国内の複数の施設に薬物曝露後の発現データの取得を依頼し解析を行った。さらに、臨床試験でのトキシコゲノミクス研究の基盤を整備するために、患者から採血を行い、末梢血リンパ球の遺伝子発現データを取得・解析するための問題点を明らかにする事を目的とした。
研究方法
 平成18年度までにリンパ球由来の細胞を用いて、腎障害性薬物を予測する方法と妥当性を検討した。本年度は、 患者を対象として薬物の服用前後に採血を行い 、遺伝子発現解析を行うのに充分なデータが得られるか否か、検討した。また、平成18年度に構築した腎障害性アルゴリズムの妥当性を確認するために、国内の複数の施設に腎障害あり5、なし5計10薬物の発現データの取得を依頼し、解析した。
結果と考察
 今回実施した遺伝子解析研究は、平成18年度末に本学遺伝子解析倫理評価ワーキンググループにより、承認を受けた。同意の得られた患者20名を対象として、薬物服用前と服用後にそれぞれ2mL採取し、これを用いてRNAの抽出、cDNAの合成および、チップによる解析を行った。得られたデータは概ね良好であったが、採血後速やかにRNA調整をする必要があることが明らかになった。国内の複数の施設で得られた発現データについては、全ての施設において品質基準をクリアしており、今後各施設で得られた同一プラットフォームの発現データを比較する事は妥当であると考えられた。
結論
 末梢血リンパ球より発現データを取得する際の問題点が明らかとなった。次いで他施設により得られた発現データの妥当性を検討し、リンパ球の培養条件を一定にする必要のあることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200708006B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト末梢血中リンパ球を用いたトキシコゲノミクス基盤研究
課題番号
H17-トキシコ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤村 昭夫(自治医科大学 臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 康雄(自治医科大学 臨床薬理学)
  • 篠原 歩(東北大学大学院 システム情報学)
  • 石野 明(東北大学大学院 システム情報学)
  • 津田 英利(自治医科大学 臨床薬理学)
  • 草間 幹夫(自治医科大学 臨床薬理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医薬品の安全性を前臨床試験中に予測するシステムを構築するために、ヒトリンパ球由来培養細胞を用いた研究手法を確立する事を目的とした。
研究方法
 国内で臨床使用されている注射薬より、合計160薬物の遺伝子発現データを取得した。前期の腎障害あり40薬物、腎障害なし40薬物をtraining set、残りをtest setとした。前期の発現データより、腎障害の有無により有意に発現変化する遺伝子を選び、薬物の腎障害性を予測するために、判別器として適切なアルゴリズムとパラメータを検討した。続いて、得られた腎障害性予測アルゴリズムの有用性を調べるために、国内の複数の施設による曝露データを解析した。さらに、臨床検体として末梢血リンパ球を取り扱う際の問題点を明らかにするために、薬物服用前後に採血して遺伝子発現データを得た。また、腎障害性薬物の発現データの解析により見出された遺伝子の機能を調べ、細胞にどのような影響を与えるのか検討した。
結果と考察
 training setにおいて腎障害ありとなしの薬物群間で有意に発現が変化していた遺伝子を詳細に検討し、32遺伝子を抽出した。これらを用いて予測に用いる判別器を検討し、サポートベクターマシーン法が最適である事が明らかにした。test setの薬物腎障害性をブラインド化した結果、約83%の精度で予測が可能であった。国内の複数の施設で得られたデータは、比較が可能なデータの質ではあったが、 腎障害性の予測精度は50%であった。これは細胞継代回数の違いによる、薬物反応性の相違によるものと考えられた。また、臨床検体として血液サンプルを取り扱った時、一部サンプルで不良データが見られた。採血より時間が経過したサンプルほど質が不良であったので、サンプル調整は採血後15分以内に行うことが望ましいと考えられる。急性骨髄球性白血病治療薬である三酸化ヒ素では、時間依存的・濃度依存的に酸化ストレス時に誘導される遺伝子が見出され、さらに抗酸化剤を併用する事によって、細胞障害が軽減されるが、治療効果に影響を与えないことが明らかになった。
結論
 リンパ球を用いてトキシコゲノミクス研究を行い、毒性予測に必要な様々な知識を蓄積した。さらに、蓄積したデータを基に毒性メカニズムにアプローチし、治療上有用性が示唆されるような応用モデルを見出した。また、将来的に臨床の場でトキシコゲノミクス研究を実施する場合の問題点を抽出するために基礎検討を行い、問題点を明らかにした。さらに、薬物の腎障害軽減の可能性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200708006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
末梢血中細胞を用いたトキシコゲノミクス研究の基盤を整備し、患者を対象としたトキシコゲノミクス研究を実施することが可能になった。また、薬物の腎障害性の有無を鑑別するための新しい評価法を確立した。さらに遺伝子発現情報により、三酸化ヒ素による有害反応がスーパー・オキサイドによるものであることを見出し、その軽減法を見出した。
臨床的観点からの成果
本研究によって確立した腎障害性の有無を鑑別する新しい評価法を、創薬の段階で用いることによって、臨床の場でより腎障害の少ない、安全性の高い医薬品が開発されるものと考えられる。さらに、三酸化ヒ素は白血病の治療に用いられているが、その有害反応を軽減するためには抗酸化作用のあるαーリポ酸を併用することが有用であることを見出した。
ガイドライン等の開発
特にない
その他行政的観点からの成果
より安全性の高い医薬品の創薬、および患者における有害反応の早期予測が可能となる。その結果、医薬品に対するリスクマネジメントの質が向上し、それによって国民の安全な生活が確保される。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Numata A, Shimoda K, Kamezaki K. et al.
Signal transducers and activators of transcription 3 augments the transcriptional activity of CCAAT/enhancer-binding protein a in granulocyte colony-stimulationg factor signaling pathway
J Biol Chem , 280 , 12621-12629  (2005)
原著論文2
大島康雄 藤村昭夫
日本人組織を用いたトキシコゲノミクス研究
臨床薬理 , 36 , 11-12  (2005)
原著論文3
H. Ando, Y. Oshima, H. Yanagihara et al.
Profile of rhythmic gene expression in the livers of obese diabetic KK-A(y) mice
Biochem Biophys Res Commun , 346 , 1297-1302  (2006)
原著論文4
A. Sasaki, Y. Oshima, S. Kishimoto et al.
Individual Differences in Gene Expression in Primary Cultured Renal Cortex Cells Derived from Japanese Subjects
IPSJ Transactions on Bioinformatics , 47 , 67-72  (2006)
原著論文5
A. Sasaki, Y. Oshima, and A. Fujimura
An approach to elucidate potential mechanism of renal toxicity of arsenic trioxide
Experimental Hematology , 35 , 252-262  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-