文献情報
文献番号
200708005A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物の毒性発現を決める薬物動態・効果制御分子の推定と毒性回避を指向したスクリーニング系の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H17-トキシコ-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 雄一(東京大学 大学院薬学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 家入 一郎(九州大学 大学院薬学研究院)
- 徳永 勝士(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
33,628,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
薬物の薬効・毒性発現を決める因子を、遺伝子ノックアウト動物や遺伝子発現細胞などを用いて、薬物動態や薬効関連遺伝子の個々の相対的な重要性について明らかにし、さらにin vitro実験系を通じた定量的な予測法の確立を目指す。さらにそれらの結果に基づき、個々の遺伝子の多型と薬効・毒性との関連を探る臨床研究を行い、候補SNPsを迅速に診断できるチップの開発を行うことで、臨床医療に成果を還元できるように努める。
研究方法
肝臓における取り込み・排泄トランスポーターの同定を、共発現細胞を用いて複数の薬物について試みた。サンドイッチ培養肝細胞の系を用いて排泄トランスポーターの寄与率評価法を構築した。腎臓は、in vitro実験の結果を基にしてOAT1, OAT3の臨床で使用可能なプローブ薬を選択し、臨床研究で妥当性を評価した。トランスポーター発現変動メカニズムとしてOAT1, URAT1の上流域のDNAメチル化を観察した。また、sulfasalazineの体内動態に与えるBCRP, NAT2の遺伝子多型との関連を探る臨床研究を行なった。さらに、代謝酵素・トランスポーターの遺伝子多型を同時に迅速に判定可能な診断法を構築した。
結果と考察
新たに構築した共発現細胞を用いて、複数の薬物の胆汁排泄メカニズムを明らかにした。MDR1, MRP2, BCRPの適切な選択的阻害剤の探索に成功し、スタチン3種の胆汁排泄メカニズムが異なることを明らかにした。腎臓では、OAT1, OAT3のプローブ薬ならびにOAT1選択的阻害剤を見出し、臨床試験の結果、一部はヒトトランスポーター機能の評価に使いうる可能性が示唆された。またOAT1, URAT1の発現は、HNF1α/ βの転写因子とDNAメチル化の両方に制御されていることを示した。Sulfasalazineの体内動態にBCRP (Q141K)とNAT2の遺伝子多型が影響することが明らかになった。DigiTag2法を用いて、代謝酵素・トランスポーター13遺伝子の多型を同時診断することに成功した。
結論
肝取り込み・排泄機構を調べるための評価系の構築を行なった。さらにヒトin vivoで腎臓のトランスポーター機能を推定できるプローブ薬の探索に一部成功した。また、トランスポーターの転写制御に新たにDNAメチル化を考慮する必要があることを見出した。さらにsulfasalazineの体内動態におけるBCRP, NAT2の重要性が明らかとなった。また、新たなSNP迅速タイピング法を構築し、有用であることを実証した。
公開日・更新日
公開日
2008-04-11
更新日
-