ES細胞由来神経細胞を用いた薬剤の神経毒性評価システムの開発と神経毒性関連遺伝子・タンパク質データーベース構築

文献情報

文献番号
200708004A
報告書区分
総括
研究課題名
ES細胞由来神経細胞を用いた薬剤の神経毒性評価システムの開発と神経毒性関連遺伝子・タンパク質データーベース構築
課題番号
H17-トキシコ-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
金村 米博(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究部政策医療基盤技術開発研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 角田 達彦(独立行政法人理化学研究所 遺伝子多型研究センター)
  • 和田 昭盛(神戸薬科大学 生命有機化学研究室)
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学 医学部生理学教室)
  • 入江 康至(岩手医科大学 医学部薬理学講座)
  • 山崎 麻美(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性神経疾患に対する有効かつ安全な薬剤開発を効率化する支援技術として、ES細胞を用いた薬剤安全性の高感度評価システムの開発と毒性関連遺伝子・タンパク質データベースの構築を目指す。
研究方法
安全性評価用基準神経系細胞の確立として、ヒトEC細胞からの効率的ドーパミン作動性神経細胞作製技術の開発、ヒトES細胞からの神経分化細胞作成法の開発を実施した。これらを応用し、ヒトES細胞由来神経幹細胞/前駆細胞の既存薬5種に対する薬剤応答性を評価し、そのデータベース化を行い、マイクロアレイ、プロテインチップを使用した薬剤毒性に関連する遺伝子・タンパク質発現情報の包括的取得を実施した。これら結果から、薬剤毒性関連遺伝子・タンパク質情報のデータベース化と毒性関連遺伝子ネットワークの検討を実施した。また、メタンフェタミン、レチノイン酸アナログの細胞毒性の評価を実施した。倫理面への配慮として、ヒトES細胞の使用計画は「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」に基づき承認され実施し、ヒトES細胞由来分化細胞を用いた研究計画は各施設内倫理委員会の承認を受けて実施した。
結果と考察
ヒトES細胞(KhES-1)からヒト神経幹細胞/前駆細胞の作成に成功し、各種薬剤のヒト神経幹細胞/前駆細胞に対する細胞毒性の特徴を明らかにするに至った。マイクロアレイ、プロテインチップを応用した解析によって、メタンフェタミン、レチノイン酸アナログの細胞毒性に関連する遺伝子と詳細な分子メカニズムを明らかにし、ヒト神経幹細胞/前駆細胞を含む複数のヒト細胞種における複数の薬剤応答遺伝子データベース、ヒト各種組織での網羅的転写産物データベースの構築に成功した。以上の結果から、ヒトES細胞由来神経幹細胞/前駆細胞の各種薬剤に対する応答性の特徴が明らかになり、正常ヒト神経系細胞における薬剤毒性関連分子に関する情報の取得に成功したと考えられる。
結論
ヒトES細胞由来神経系細胞を用いて薬剤応答性評価試験を実施するための技術体系を確立し、ヒト神経幹細胞/前駆細胞を含む複数のヒト細胞種における複数の薬剤応答性に関するデータベースならびにトランスクリプトームデータベースの構築に成功した。得られた成果は、難治性神経疾患に対する有効かつ安全な薬剤開発を効率化する支援技術として有益なもので、最終的に研究プロジェクトの当初目標を達成できたものと結論づけられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200708004B
報告書区分
総合
研究課題名
ES細胞由来神経細胞を用いた薬剤の神経毒性評価システムの開発と神経毒性関連遺伝子・タンパク質データーベース構築
課題番号
H17-トキシコ-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
金村 米博(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究部政策医療基盤技術開発研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 角田 達彦(独立行政法人理化学研究所 遺伝子多型研究センター)
  • 和田 昭盛(神戸薬科大学 生命有機化学研究室)
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学 医学部生理学教室)
  • 山崎 麻美(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
  • 入江 康至(岩手医科大学 医学部薬理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性神経疾患に対する有効かつ安全な薬剤開発を効率化する支援技術として、ES細胞を用いた薬剤安全性の高感度評価システムの開発と毒性関連遺伝子・タンパク質データベースの構築を目指す。
研究方法
安全性評価用基準神経系細胞の確立として、株化ヒト神経系細胞の特性解析と、無血清培養法、細胞分化誘導法、ES細胞(ヒトを含む)からの神経分化細胞作成法の開発を実施した。これらを応用し、ヒトES細胞由来細胞を含む合計13細胞種に対する既存薬43種の薬剤応答性を評価し、そのデータベース化を行い、マイクロアレイ、プロテインチップを使用した薬剤毒性に関連する遺伝子・タンパク質発現情報の包括的取得を実施した。また毒性試験用に新規レチノイン酸アナログ合成を実施した。これら結果から、薬剤毒性関連遺伝子・タンパク質情報のデータベース化と毒性関連遺伝子ネットワークの検討を実施した。倫理面への配慮として、ヒトES細胞の使用計画は「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」に基づき承認され実施し、ヒトES細胞由来分化細胞を用いた研究計画は各施設内倫理委員会の承認を受けて実施した。
結果と考察
ヒトES細胞(KhES-1)からヒト神経幹細胞/前駆細胞の作成に成功し、各種薬剤のヒト神経幹細胞/前駆細胞に対する細胞毒性の特徴を明らかにするに至った。マイクロアレイ、プロテインチップを応用した解析によって、メタンフェタミン、レチノイン酸アナログの細胞毒性に関連する遺伝子と詳細な分子メカニズムを明らかにし、ヒト神経幹細胞/前駆細胞を含む複数のヒト細胞種における複数の薬剤応答遺伝子データベース、ヒト各種組織での網羅的転写産物データベースの構築に成功した。以上の結果から、ヒトES細胞由来神経幹細胞/前駆細胞の各種薬剤に対する応答性の特徴が明らかになり、正常ヒト神経系細胞における薬剤毒性関連分子に関する情報の取得に成功したと考えられる。
結論
ヒトES細胞由来神経系細胞を用いて薬剤応答性評価試験を実施するための技術体系を確立し、ヒト神経幹細胞/前駆細胞を含む複数のヒト細胞種における複数の薬剤応答性に関するデータベースならびにトランスクリプトームデータベースの構築に成功した。得られた成果は、難治性神経疾患に対する有効かつ安全な薬剤開発を効率化する支援技術として有益なもので、最終的に研究プロジェクトの当初目標を達成できたものと結論づけられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200708004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヒトES細胞由来神経系細胞を応用した薬剤応答性評価試験系の構築に成功した本研究成果は、今後、発展が予測される内在性ヒト神経幹細胞に対する薬剤開発プロセスの先駆的研究の一つに成り得る先進性に富んだ成果と考える。また、構築に成功した2つの主要なデータベースはヒト正常細胞を用いて取得した情報で、学術的に極めて貴重な情報を含むデータベースであり、その応用範囲は高いものと考える。
臨床的観点からの成果
一般臨床の現場で神経疾患治療に標準的に使用される薬剤の、正常ヒト正常神経幹細胞/前駆細胞に及ぼす影響・細胞毒性を明らかにすることができた本研究成果は、薬剤の内在性ヒト神経幹細胞に対する毒性・副作用を考える上で有益な情報をもたらす成果であり、臨床的観点から貴重な成果であると考える。
ガイドライン等の開発
ヒト正常細胞・組織に関連した2つの主要なトランスクリプトームデータベースの構築を行い、一般公開できる体制を整えた本研究成果は、研究プロジェクト成果の社会還元という点で社会的意義が大きく、国民福祉、健康増進に大きく貢献できる成果であったと考えられる。
その他行政的観点からの成果
本研究成果で得られた薬剤応答性評価試験系は、近年開発され、現在、国を挙げてその応用技術開発が進められている人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使用した創薬研究への応用も十分可能なものであり、今後、ヒトiPS細胞を応用した創薬研究の加速と発展にも大きく貢献できると同時に難治性神経疾患に対する有効かつ安全な薬剤開発を効率化する支援技術としての応用性が見込まれ、行政的観点からも有用な成果であると考える。
その他のインパクト
ヒトES細胞を創薬研究に応用した成功例の一つとして、社会的にインパクトのある成果を発信できたものと考えられる。また、構築に成功した2つの主要なデータベースは従来から多くみられる動物細胞が主体のデータベースや癌細胞に由来する株化細胞のみを使用したデータベースとは一線を介するもので、インパクトのある成果であると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
58件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kobayashi S, Kanemura Y, Islam MO, et al.
Effect of all-trans retinoic acid and 13-substituted retinoic acids on human neural stem/progenitor cells’ neurogenesis.
Carotenoid Science , 8 , 77-80  (2005)
原著論文2
Mori H, Ninomiya K, Kino-oka M, et al.
Effect of neurosphere size on the growth rate of human neural stem/progenitor cells.
Journal of neuroscience research , 84 (8) , 1682-1691  (2006)
原著論文3
Wada A, Mizuguchi Y, Shinmen M, et al.
Preparation and Biological Activity of Retinoic Acid Analogs Containing an Aromatic Ring.
Letters in drug design & discovery , 3 (2) , 118-122  (2006)
原著論文4
Wada A, Shinmen M, Uenishi J, et al.
A Novel Synthesis of 2-Substituted Indole Derivatives: A Palladium Catalyzed Cross-coupling Reaction of Enol Triflate Derived from N-Methyl-2-Indolone with (Alkenyl) tributylstannane and Acetylene.
Letters in organic chemistry , 3 (11) , 817-819  (2006)
原著論文5
Mizuguchi Y, Wada A, Nakagawa K, et al.
Antitumoral Activity of 13-Demethyl or 13-Substituted Analogues of All-trans Retinoic Acid and 9-cis Retinoic Acid in the Human Myeloid Leukemia Cell Line HL-60.
Biological & pharmaceutical bulletin , 29 (9) , 1803-1809  (2006)
原著論文6
Mori H, Ninomiya K, Kanemura Y, et al.
Image cytometry for analyzing regional distribution of the cells inside human neurospheres.
Journal of bioscience and bioengineering , 103 (4) , 384-387  (2007)
原著論文7
Wada A, Mizuguchi Y, Miyake H, et al.
Preparation and Biological Activities of Heteroarotinoids.
Letters in drug design & discovery , 4 (6) , 442-445  (2007)
原著論文8
Yamano Y, Fujita Y, Mizuguchi Y, et al.
Synthesis of γ-Hydroxybutenolides Applying Crossed Aldol Condensation in the Presence of a Bulky Lewis Acid and Their Anti-tumor Activity.
Chemical & pharmaceutical bulletin , 55 (9) , 1365-1370  (2007)
原著論文9
Kato M, Miya F, Kanemura Y, et al.
Recombination rates of genes expressed in human tissues.
Human molecular genetics , 17 (4) , 577-586  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-