薬物代謝に関与する発現タンパク質の超高感度検出と解析

文献情報

文献番号
200708003A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物代謝に関与する発現タンパク質の超高感度検出と解析
課題番号
H17-トキシコ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
甲斐 雅亮(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 椛島 力(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 柴田 孝之(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,430,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物代謝は、主にチトクロームP450(CYP)の酵素類が担い、薬効に対する個人差を調べるためには、CYP自体の個人差を直接解析できる新手法が必要である。本研究目的は、当該研究者らが創製した化学発光性高分子を超高感度検出用プローブ(以下、発光プローブ)として適応し、簡易なプロテインチップ膜上で、極微量の各種CYPを一斉に検査できる新技術を開発することである。
研究方法
1) 発光プローブの基本骨格に、CYP類を直接結合させる極めて簡易なプロテインチップ高感度検出法の開発研究を行った。
2) 4の25乗種類のDNAプールより転写酵素にて、RNAプールを作成し、CYP3A4と結合する59 mer RNAアプタマーの検索実験を行った。
3) 核酸又はタンパク質を基本骨格とする化学発光性高分子を合成し、アビジンに対する結合性を評価した。
結果と考察
1) ブロッキング剤を改良することで、発光プローブ自体が、膜上にスポットしたCYP類を認識できることが分かり、発光プローブを牛血清アルブミン存在下、pH 7.2のトリス塩酸緩衝液中で混合させるのみで、PVDF膜上の10 ngレベルのCYP類を直接化学発光検出することに成功し、極めて簡便なCYPプロテインチップ検出法を開発できた。
2) 4の25乗種類の塩基配列を有する59 mer RNAプールから、CYPと強く結合するRNAを探索する新たな手法を開発し、CYPと結合する59 mer RNA鎖を検出できた。
3) DNAやタンパク質に直接発光物質とビオチンを導入させる合成法に成功し、それらがアビジンと連鎖的に結合して、強く発光することが分かった。
結論
本研究事業に用いた発光プローブは、結合している低分子量化学発光物質の数に応じて数分以内に強く発光するので、チップ膜上のCYPを迅速かつ簡便に直接検出する世界最高感度の手法を開発できた。しかし、多種抗体の必要な網羅的検査法の実用化には、CYPを特異的に認識でき、かつ強い結合性を示す安価なアプタマー核酸を創製し、それを用いた超高感度検出法をさらに構築する必要がある。また、日常検査として肝細胞の使用は不適切であるので、代替として採取容易な細胞の培養技術と評価法を開発し、正常及び患者個人の簡易なCYP発現量を検査できる新手法の開発研究を引き続き行うことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200708003B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物代謝に関与する発現タンパク質の超高感度検出と解析
課題番号
H17-トキシコ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
甲斐 雅亮(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 椛島 力(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 柴田 孝之(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物代謝は、主にチトクロームP450(CYP)の酵素類が担い、薬効に対する個人差を調べるには、CYP自体の個人差を直接解析できる新手法が必要である。本研究目的は、細胞内において微量に発現している各種CYPの一斉超高感度多型検出手法を開発して、薬の副作用との相関を調査することである。
研究方法
デキストラン高分子にビオチン及びルミノール又はイソルミノールを導入した化学発光検出用プローブ(以下、発光プローブ)を合成し、安価なPVDF或いはナイロン膜から成るプロテインチップ上のCYP類に対する一斉超高感度な新検出法の開発実験を行った。また、各種CYPを認識する抗体作成には膨大な費用を要する為、抗体の代替としてDNA及びRNAアプタマーの探索実験を行った。さらに、核酸又はタンパク質を基本骨格とする化学発光性高分子を合成し、アビジンに対する結合性を評価した。
結果と考察
膜に吸着させたCYPに、抗体を結合させたのち発光プローブをアビジンと連鎖的に結合させることにより、膜上のCYP3A4の定量的検出手法の開発に成功した。次に、モノクローナル抗体、検体であるCYP、ビオチン化ポリクローナル抗体、及び発光プローブを順次連結させて検出するCYP類の網羅的一斉検出法を開発した。さらに、発光プローブの基本骨格に、CYP類を直接結合させる極めて簡易なプロテインチップ高感度検出法の開発にも成功した。一方、4の25乗種類のDNAプール中から、CYP3A4と結合する59 mer DNAアプタマー(結合定数10の5-6乗/M)とRNAアプタマーを分離検出することができた。また、DNAやタンパク質に直接発光物質とビオチンを導入させる合成法に成功し、それらがアビジンと連鎖的に結合して強く発光することが分かった。
結論
本研究に用いた発光プローブは、結合している低分子量化学発光物質の数に応じて数分以内に強く発光するので、チップ膜上のCYPを迅速かつ簡便に検出する世界最高感度の手法を開発できた。しかし、多種抗体の必要な網羅的検査法の実用化のためには、CYPを特異的に認識でき、強い結合性を示す安価なアプタマー核酸を創製し、それを用いた超高感度検出法をさらに構築する必要がある。また、日常検査に肝細胞の使用は不適切であるので、採取容易な細胞の培養技術と評価法を開発し、正常及び患者個人の簡易なCYP発現量を検査できる新手法の開発研究の継続が重要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200708003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究に用いた発光プローブは、結合している低分子量化学発光物質数に応じ、数分以内に強く発光するので、チップ膜上のCYPを迅速かつ簡便に検出できる世界最高感度の手法を開発できた。しかし、多種抗体が必要な網羅的検査法実用化のためには、CYPを特異的に認識し、強い結合性を示す安価なアプタマー核酸を創製する必要があった。そこで、4の25乗種類のDNAプール中からCYP3A4と結合する59 mer DNAアプタマーとRNAアプタマーを探索し、それらを分離検出することができた。
臨床的観点からの成果
本研究事業で開発したCYP類のプロテインチップサンドイッチ検出法により、薬を投与した動物やヒトの肝細胞内のCYP発現量を測定できる可能性は高いことが分かった。しかし、検出されるCYPの種類は、入手できる抗体が2-3種類しかないので、極めて限られたものになるので、早急に、抗体代替用アプタマーを創製する必要性があることが分かった。さらに、日常検査として肝細胞を用いるのは不適切であるので、採取が容易な口内粘膜細胞などの代替細胞の検体調製技術の開発研究が必須であることが分かった。
ガイドライン等の開発
現在、各種CYPタンパク質は極めて高価であり、それらのモノクローナル抗体の作成技術が企業にあっても、免疫には大量のCYPが必要なため、需要の少ない各種CYP抗体類の作成には、莫大な経費が必要である。したがって、抗体の代替としてアプタマー核酸が開発できれば、いつでも誰でも、それらを試験管内で大量合成できるので、検査費用が極めて安価になる。このような特殊な検査法の開発には、経費の掛からない手法技術並びに日常的検査に相応した検体調製技術など、現実的な手法を構築させる研究支援が必要と考える。
その他行政的観点からの成果
安価かつ簡易なプロテインチップ膜を用いるCYP類の新しい検査技術を開発することができた。さらに、この検査原理は、各種腫瘍(がん)マーカーやプリオンタンパク質などの特殊な生体タンパク質の迅速な検査法としても応用できる。
その他のインパクト
肝細胞の代替として日常的に入手できる検体の調製技術は、薬によって発現されるCYPの定量的検査において重要な要素であるが、今後の医薬品開発においても、有効性及び安全性評価に対する新たな評価法を提供するものであるので、極めて社会的に意義あるものと考える。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
27件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Keiko Tonooka, Tsutomu Kabashima, Mutsumi Yamasuji, et al.
Facile determination of DNA-binding nuclear factor-κB by chemiluminescence detection
Anal. Biochem. , 364 , 30-36  (2007)
原著論文2
H. Zhang, C. Smanmoo, T. Kabashima, et al.
Dextran-Based Polymeric Chemiluminescent Compounds for the Sensitive Optical Imaging of a Cytochrome P450 Protein on a Solid- Phase Membrane
Angew. Chem. Int. Ed. , 46 , 8226-8229  (2007)
原著論文3
T. Kabashima, Z. Yu, C. Tang, et al.
A Selective Fluorescence Reaction for Peptides and Chromatographic Analysis
Peptides , 29 , 356-363  (2008)
原著論文4
M. N. Wainaina, T. Shibata, C. Smanmoo, et al.
Fluorescence detection of amino acids in the post-cleavage conversions for manual sequencing of a peptide
Anal. Biochem. , 374 , 423-425  (2008)
原著論文5
Keiko Tonooka, Tsutomu Kabashima, Takayuki Shibata, et al.
Facile Assay of Telomerase Activity Utilizing a DNA-Detectable Chemiluminogenic Reagent
Anal. Sci. , 24 , 471-475  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-