パーキンソン病遺伝子治療臨床研究における安全性評価とpositron emission tomography(PET)による有効性の評価

文献情報

文献番号
200707032A
報告書区分
総括
研究課題名
パーキンソン病遺伝子治療臨床研究における安全性評価とpositron emission tomography(PET)による有効性の評価
課題番号
H18-遺伝子-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中野 今治(自治医科大学医学部内科学神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤 敬也(自治医科大学 医学部 遺伝子治療学・血液学)
  • 村松 慎一(自治医科大学 医学部 神経内科学・東洋医学)
  • 加藤 正哉(自治医科大学 医学部 脳神経外科学・救急医学)
  • 佐藤 俊彦(宇都宮セントラルクリニック・放射線診断学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
42,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、進行期パーキンソン病(PD)患者の両側被殻に、芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素(AADC)遺伝子を組み込んだアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクター(AAV-AADC)を定位脳手術的に注入し、その安全性を検証することを主目的とし、服用するL-DOPAによってドパミン産生を促して症候の改善を図る。ジスキネジアはL-DOPAの投与量を減らすことにより阻止する。また、FMT-PETシステムを構築して、導入遺伝子発現効率の非侵襲的評価方法を確率する。
研究方法
進行期PDでは、線条体のAADC活性が著しく低下して、服用するL-DOPAから合成されるドパミンが不足する。そこで、AADC遺伝子を被殻の神経細胞に導入、発現するAADCにてL-DOPAをドパミンに変換する遺伝子治療臨床研究を計画した。本研究では、進行期PD患者6例(低用量と高用量の2群、各群3例)に、全身麻酔下で定位脳手術的にAAV-AADCを両側被殻に注入する。安全性は臨床症候と脳画像を含めた検査データから評価し、治療効果はUPDRS、Hoehn&Yahr重症度分類等にて判定する。治療前および後導入1か月、6か月にFMT-PETを行う。
結果と考察
共同研究相手のGenzyme社からGMPレベルの治療用ベクターと注入装置を輸入し、FMT合成装置を構築した。2006年秋、厚生労働大臣の承認を得、2007年5月に第1例に、同年7月に第2例に実施した。2例とも導入ベクター自体による有害事象はなく、治療後6か月の時点では、PD症状の改善が見られ、FMT-PETで導入遺伝子の発現が確認され、本治療の有効性が示唆された。第2例で術後右前頭葉白質出血が見られ、軽度の左肩麻痺等が出現したが、その症状は徐々に消失した。この出血は手術終了直後の脳CTでは見られず、数日後のCTで確認されたことから、静脈あるいは毛細血管損傷による出血と考えられた。同時期の頭部MRIでは、遺伝子を導入した被殻には異常はなく、本治療遺伝子導入は安全であると考えられる。今後は、手術手技を改善して出血の予防を図る。
結論
進行したPD患者2例にAAV-AADCを定位脳手術的に両側被殻に注入する遺伝子治療を実施した。ベクターの安全性に問題なく、L-DOPAの服用により治療6か月でもPD症候の改善と導入遺伝子の発現がFMT-PETで観察された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-