心不全に対しβ遮断薬療法を安全かつ有効に導入するための統合的ゲノム薬理学研究

文献情報

文献番号
200707029A
報告書区分
総括
研究課題名
心不全に対しβ遮断薬療法を安全かつ有効に導入するための統合的ゲノム薬理学研究
課題番号
H18-ファーマコ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
岩尾 洋(大阪市立大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 洋(北海道大学大学院医学研究科)
  • 葭山 稔(大阪市立大学大学院医学研究科)
  • 寺崎 文生(大阪医科大学医学部)
  • 藤尾 慈(大阪大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
38,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会の高齢化に伴って慢性心不全患者が増加し、医学的にも社会的にも問題になっている。近年、β遮断薬が心不全患者の予後・心機能を改善することが大規模臨床試験により明らかにされた。しかしながら、β遮断薬が有効性を示す患者は、約60?70%と言われており、無効な例では、心不全が悪化する危険がある。本研究の目的は、ゲノム情報に基づきβ遮断薬療法への反応性を予測すること、そのために必要な遺伝子多型判定機器を開発することにある。
研究方法
ゲノム疫学的アプローチとして、1) β遮断薬の薬効を決定する遺伝子多型候補の選出、2) 心不全患者を対象とした、β遮断薬治療への反応性と遺伝子多型との相関に関する解析、3) ベッドサイドで利用可能な遺伝子多型判定機器の作製、を行った。また、分子薬理学的アプローチとして、カニクイザルにエピネフリンを投与し、“たこつぼ型”心筋症(心不全)モデルを作成し、β遮断薬による心機能改善効果を検討した。効果の解析は、心エコー図や網羅的遺伝子発現解析および定量RT-PCR法による遺伝子発現解析にて行った。
結果と考察
1) β遮断薬投与前の短縮率(FS)が、β遮断薬反応性と逆相関することが明らかになり、β遮断薬は左室収縮能が低下している症例により大きな有効性が期待できる。第1集団および第2集団で共通してβ遮断薬の薬効と相関を示した遺伝子多型として、7個の遺伝子を見いだした。これらの遺伝子多型を臨床現場で判定するために、等温増幅法を用いた遺伝子判定機器の作製に着手した。FSが20%未満の症例では、ある数式をこれまでの症例に当てはめると、そのスコアにより90%以上の確率でレスポンダーであると予測される。
2) “たこつぼ型”心筋症モデルを作成し、β遮断薬投与が、カテコールアミンにより低下した心機能を改善させることを確認するとともに、心不全関連遺伝子の発現変化について解析を行った。コントロール群心尖部に比べてとエピネフリン投与群心尖部における遺伝子発現が2倍以上のものは約2500遺伝子、0.5倍以下のものが約600遺伝子見つかり、1)でβ遮断薬の薬効と相関を示した遺伝子の多くは、壁運動異常を認めた心尖部においてその発現が大きく変動しており、引き続き検討を要する。
結論
平成19年度、2つの独立した患者集団より7個の遺伝子の遺伝子多型とβ遮断薬に対する反応性との間に相関をみた。これらの遺伝子多型の組み合わせにより、β遮断薬に対する反応性を予測する数式を作成した。また、サル心不全モデルにおいて心不全に関連した遺伝子の発現変動について、部位別に検討を行い、心機能と遺伝子発現との関連について調べた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
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