糖鎖プライマー法を利用した白血病等の発現糖鎖パネル化と発現糖鎖プローブの開発による診断・治療への応用

文献情報

文献番号
200707027A
報告書区分
総括
研究課題名
糖鎖プライマー法を利用した白血病等の発現糖鎖パネル化と発現糖鎖プローブの開発による診断・治療への応用
課題番号
H18-ゲノム-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤本 純一郎(国立成育医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 智典(慶應義塾大学理工学部)
  • 清河 信敬(国立成育医療センター研究所)
  • 片桐 洋子(国立成育医療センター研究所)
  • 梅澤 明弘(国立成育医療センター研究所)
  • 中島 英規(国立成育医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
細胞に発現する糖鎖は、細胞の成熟やがん化により発現パターンが大きく変化することが知られている。本研究では、生物系特定産業技術支援機構のプロジェクトで開発推進され、NEDOのプロジェクトでも糖鎖大量生産技術として採用された「糖鎖プライマー法」を活用して、未分化細胞である組織幹細胞や小児がん細胞などに発現している糖鎖を網羅的に解析してパネル化する。更に大量に生産した糖鎖を抗原として利用し、優秀な糖鎖抗体を樹立する。将来的にこれら糖鎖パネルや糖鎖抗体を診断・治療へ応用することを目指す。
研究方法
細胞の成熟やがん化により、糖鎖構造が多様に変化することが知られているが、構造の多様性や精製・分析が困難であることから、蛋白質と比較すると糖鎖の医療分野での応用はごく限られている。本研究では生きた細胞をいわば糖鎖工場として利用する「糖鎖プライマー法」を応用し、様々な白血病等の細胞に糖鎖を大量に産生させて液体クロマトグラフィーと質量分析装置を組み合わせたLC/MSで糖鎖の発現及び構造解析を行って各細胞の発現糖鎖のパネル化を行う。
結果と考察
糖鎖プライマー法を使用したことで、従来の細胞から抽出した糖鎖からは同定が困難なOアセチル化シアル酸を含んだ糖鎖の同定に加え、硫酸基を持った糖鎖の同定が可能であった。骨髄由来造血系前駆細胞の単球系細胞分化誘導系ではこれまで細胞株で得られていた知見と異なる結果が得られた。B前駆細胞性急性リンパ性白血病に発現する代表的抗原CD10のもつ糖鎖構造を明らかにし、糖鎖構造の違いでCD10の持つ酵素活性が変化することを明らかにした。糖蛋白質糖鎖についてはヒドラジン分解法をもとに安全で効率よく糖蛋白質N結合型糖鎖を遊離させ、LC/MSで発現糖鎖を解析する系を確立した。
結論
従来法では同定が困難であった構造の糖鎖が糖鎖プライマー法を適用することで同定することができた。更に発現糖鎖パネルをクラスター解析し、発現糖鎖による細胞のクラス分類することが可能となった。この成果を応用して今後糖蛋白質糖鎖を含め、さらに多種多様な細胞の発現糖鎖解析を行い、発現糖鎖パネルの充実を図って診断・治療におうようするための情報を蓄積する。糖鎖プライマー法で得られた糖鎖は化学的に修飾して抗原性を高め、優秀な糖鎖抗体を作り出すことを目指す。更に、糖鎖パネル情報や糖鎖抗体を用いた診断・治療応用への可能性を検討する。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-