再生医療等の先端医療分野におけるインフォームド・コンセント取得と生命倫理に関する研究

文献情報

文献番号
200707022A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療等の先端医療分野におけるインフォームド・コンセント取得と生命倫理に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H17-生命-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
横出 正之(京都大学医学部附属病院探索医療臨床部)
研究分担者(所属機関)
  • 村山 敏典(京都大学医学部附属病院探索医療臨床部)
  • 伊藤 良子(京都大学大学院教育学研究科臨床心理実践学講座)
  • 小杉 眞司(京都大学大学院医学研究科健康管理学 医療倫理学)
  • 清水 章(京都大学医学部附属病院探索医療開発部)
  • 手良向 聡(京都大学医学部附属病院探索医療臨検証部)
  • 角 栄里子(京都大学医学部附属病院探索医療臨床部)
  • 松山 晶子(京都大学医学部附属病院探索医療検証部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先端医療における一番の問題点は各医療機関の施設倫理審査委員会の審査基準に統一性がなく、十分な審議をされぬまま承認されうる危険性である。また、難病に直面して精神状態が不安定である被験者に複雑多岐な説明を行って、はたして有効なインフォームド・コンセント(IC)を得ることができるかどうかが疑問である。このような問題を解決するために、多方面の研究者や倫理委員会委員、臨床心理士を含むコメディカル、市民代表等を招いて、医療倫理に関するフォーラムを開催し、集学的かつ社会に開かれた討議に基づき、臨床心理学的視点を含めた合意形成を目指す。
研究方法
京都大学探索医療センターとともに探索的医療の推進に力を入れている東京大医科研、名古屋大、大阪大、九州大、(財)先端医療振興財団が中心になり、平成14年度にトランスレーショナルリサーチ(TR)懇話会が発足して、そこで共通倫理審査指針が作成された。われわれはこのTR懇話会を基盤にTR研究会という組織を構築し、研究者間のネットワークを構築するとともに、医療倫理とインフォームドコンセントについての市民公開シンポジウムの開講を通じて、市民との情報交換を行う。また、今年度は医療人類学的視点から、臨床試験をめぐる環境についての韓国との国際比較研究を計画する。
結果と考察
平成19年度は10月に、3回目となる市民公開シンポジウム「ここが知りたい。医療倫理とインフォームドコンセント。」を開講し、医療倫理に関する市民の啓蒙と意見交換の場を持つことができた。その他各班員が専門性を生かしたアプローチを行うことにより、有機的な研究組織の構築を可能にして、問題提起・解決に向けて努力している。平成20年3月に韓国ソウル国立大学倫理委員会事務局のKim准教授を招き、臨床試験を実施する環境や研究者の態度に関する日韓共同研究を実施する具体的な計画を立案することができた。
結論
TR研究会に参加した各研究者は情報交換の場がないことを痛感しており、今後さらにこの会を発展させて、臨床試験を倫理的に進める方策を探索する場としたい。また、市民公開シンポジウムの開催を通じ、医療倫理は「わかりにくい」という声があるものの、多くの市民は強い関心を持っていることを再認識した。医療倫理やICは、日常診療でも重要な課題であるので、このような啓蒙活動を継続し、社会に真の利益が還元できる臨床研究を目指していきたい。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200707022B
報告書区分
総合
研究課題名
再生医療等の先端医療分野におけるインフォームド・コンセント取得と生命倫理に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H17-生命-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
横出 正之(京都大学医学部附属病院探索医療臨床部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 良子(京都大学大学院教育学研究科臨床心理実践学講座)
  • 清水 章(京都大学医学部附属病院探索医療開発部)
  • 小杉 眞司(京都大学大学院医学研究科健康管理学 医療倫理学)
  • 手良向 聡(京都大学医学部附属病院探索医療検証部)
  • 村山 敏典(京都大学医学部附属病院探索医療臨床部)
  • 角 栄里子(京都大学医学部附属病院探索医療臨床部)
  • 松山 晶子(京都大学医学部附属病院探索医療検証部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規医療開発を目標とする多くの臨床試験の被験者候補は、重症もしくは急性期にあり、精神・心理的に不安定であるため、有効なインフォームド・コンセント(IC)を得ることができるかどうかが疑問であることから、各施設の倫理審査の質的向上ならびに均一化、臨床心理士を交えた具体的なICの手順や被験者候補の精神・心理状態の評価方法の確立を目指す。またこれらの審査には社会的合意形成が必須であることから、患者、家族、市民代表等からの意見収集を行い、集学的かつ社会に開かれた討議に基づいた、臨床心理学的視点を含めた合意形成を目指す。
研究方法
治験施計画書立案ならびにそれを推進するうえでの診療支援構築と検証、臨床心理学的面接の実践ならびに検証、医療倫理学を含めた臨床研究に関する国際比較、京都大学医学研究科医学部医の倫理委員会への研究申請の解析、治療効果を適切に評価できる代理マーカーまたは代理エンドポイントの開発検証、市民向け公開講座の開催、わが国における探索医療実施機関の状況把握のための基本データ構築を研究方法とした。
結果と考察
医学、臨床心理学、生物統計学、看護学、薬学、医療倫理学の分野からなる集学的研究組織が編成された。この研究組織を中軸に全国のトランスレーショナルリサーチ従事者の研究会を開催し、わが国における探索医療の問題点を検討し、これまでになかった研究者交流の機会を提供することに成功した。また、京都大学で実施された医師主導治験ならびにヒト幹細胞を用いる臨床研究において被験者の心理状態をも考慮したICの手順作成を行った。医師主導治験は多施設共同治験に発展したが、この際の他の施設への手順ならびに倫理的配慮面についても支援できた。さらに市民啓発と社会的合意形成をめざす市民参加型公開講座を計3回京都市内で開講した(参加者50-80名)。講座後のアンケートでは今後も開講を望む声が多く、医師・研究者と患者・市民による医療倫理の相互理解に向け、着実に前進している。
結論
本研究では①医療機関の倫理審査と臨床試験の質的向上、②探索型医療現場にも対応しうる被験者の心理状態も考慮した適正なIC取得の手順や評価システム開発、③先端医療に関する患者、家族、市民の意見の収集と社会合意形成の基盤造りをめざしたが、いずれもこれまで十分な研究交流のなかった分野間での学際的な研究組織を形成することにより十分な成果を収めることができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200707022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
先端医療におけるインフォームド・コンセント(IC)の取得に関する倫理的観点からの集学的研究は萌芽的であり、学術的にも類をみない共同研究を実施できた。特に、臨床心理学の手法応用は被験者保護の観点からも重要である。また、本研究は国際学会・国際誌を通じて公表を行うと同時に医療倫理に関する国際基準についても常に対応すべく実施し得たと考える。さらに、市民参加型公開講座を主宰し、多くの参加者から意見を収集し得たことで、探索型医療に関する合意形成の基盤を構築できたとともに、社会的還元にも繋がり得る。
臨床的観点からの成果
京都大学で実施された医師主導臨床試験(2件の医師主導治験ならびに2件のヒト肝細胞を用いる臨床研究を含む)において、被験者の心理状態をも考慮したICの手順作成を行うことにより、被験者の権利擁護を重視した臨床研究を遂行することができた。このうち、1件の医師主導治験は多施設共同治験に発展したが、この際の他の施設への治験業務遂行のための手順ならびに倫理的配慮についても、本研究を通じて支援できた。
ガイドライン等の開発
先端医療の対象となる患者・被験者は重症もしくは急性期の状態にあり、精神・心理的に不安定である場合が多く、有効なICを得ることができるかどうかが疑問であることから、「トランスレーショナルリサーチ実施にあたっての共通倫理審査指針」の改訂を通じて各施設の倫理審査の質的向上ならびに均一化に取り組むとともに、臨床心理士を交えた具体的なICの手順や被験者候補の精神・心理状態の評価方法を確立した。
その他行政的観点からの成果
臨床研究に関する倫理指針の改訂にあたり、平成19年7月に、厚生労働省医政局研究開発振興課宛に「臨床研究に関する倫理指針の見直し」に向けての政策提言(自主臨床研究における無過失補償の充実や、被験者保護法の制定など)を行い、その内容の一部が、現在 厚生科学審議会科学技術部会臨床研究の倫理指針に関する専門委員会で議論されている 臨床研究に関する倫理指針の改正素案に反映されたものと考える。
その他のインパクト
本研究において、医療倫理とICをテーマとして市民啓発と社会的合意形成をめざす市民参加型公開シンポジウムを各年度に毎回計3回京都市内で開講したところ、いずれも50-80名の参加者を得て、パネルディスカッションにて活発な意見交換と討議を行うことができた。シンポジウム後のアンケートでは今後も開講を望む声が多く、医師・研究者と患者・市民による医療倫理の相互理解に向け、着実に前進している。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
40件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
坂東 委久代
被験者の権利擁護が確立されるために・・・-臨床研究コーディネーターの立場から-
心理学ワールド , 36 , 13-16  (2007)
原著論文2
村山 敏典
心・血管系と再生医療
日老医誌 , 43 , 322-325  (2006)
原著論文3
村山 敏典
アカデミアからみた探索的IND.
臨床評価 , 33 , 600-602  (2006)
原著論文4
村山 敏典
はたして、我が国でクリティカル・パス・リサーチは実践できるのか?
臨床評価 , 34 , 123-125  (2007)
原著論文5
村山 敏典
自主臨床試験と医師主導治験
医学のあゆみ , 221 , 992-994  (2007)
原著論文6
Harauma A,Murayama T, Yokode M etal.
Mulberry leaf powder prevents atherosclerosis in apolipoprotein E-deficient mice.
Biochem Biophy Res Commun , 358 , 751-756  (2007)
原著論文7
Akamizu T,Murayama T,Yokode M etal.
plasma ghrelin levels in healthy elderly volunteers:the levels of acylated ghrelin in elderly females correlate positively with serum IGF-1 levels and bowel movement frequency and negatively with systolic blood pressure.
J.Endcrinol. , 188 , 333-344  (2005)
原著論文8
Zhuge X,Murayama T,Yokode M etal.
CXCL16 is a novel angiogenic factor for human umbilical vein endothelial cells.
Biochem Biophy Res Commun , 331 , 1295-1300  (2005)
原著論文9
Shinomiya T,Hukunaga M,Yokode M etal.
Plasma asylated ghrelin levels correlate with subjective symptoms of functional dyspepsia in female patients.
Scand J Gastroenterol , 40 , 648-653  (2005)
原著論文10
村山 敏典
トランスレーショナル・リサーチからクリティカル・パス・リサーチへ
臨床評価 , 32 , 513-515  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-