タスクフォースによる先端医学と社会の調和のための基盤整備

文献情報

文献番号
200707020A
報告書区分
総括
研究課題名
タスクフォースによる先端医学と社会の調和のための基盤整備
課題番号
H17-生命-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小林 英司(自治医科大学臓器置換研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 丸山 英二(神戸大学大学院法学研究科)
  • 絵野沢 伸(国立成育医療センター研究所)
  • 安東 由喜雄(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
6,008,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床研究における被験者保護の意識を研究者自身の自律性から発するようにする方策の検討。
研究方法
分担者がコアになったタスクフォースがそれぞれの課題に取り組んだ。本年度全体会議は2回。第10回研究会議;田代志門(東北大).研究と診療を区別する理論モデル、ルヴァインの枠組みの意義と限界。第11回研究会議;全体総括。
結果と考察
1)生体肝移植にまつわる諸問題の検討—小林;ドナー保護を最重要課題ととらえ、2005年3月発行の生体肝移植ドナーに関する調査報告書提言7項目のフォローアップの準備を行った。2)生体ドナー親等制限の再検討—丸山;生体臓器移植関連の法令指針におけるドナーの親等制限について考察。有効性について否定的評価を下し、それに代わり「現在または過去における実質的な共同生活に裏付けられた感情的・精神的共感関係」を提示。3)再生医療における研究者の意識調査—絵野沢;医学研究における自律性は研究者自らが発するべきである。そのために学生、若手研究者、若手医師への教育が必要と考え、教材候補としてForgive and Rememberを取り上げ、内容を精査して教材化をめざした。4)家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の遺伝子診断ガイドライン作成—安東;熊本大学医学部FAPグループの活動をもとに、生体肝移植および遺伝子診断について遺伝子診断ガイドライン(自主ルール)を作成。これまで課題だった発症前遺伝子診断の県外患者への具体的な支援方法、ドナー候補者に対する「知る権利」と「知らないでいる権利」の保証、ドナーの自発性判定と発症前遺伝子診断の意思決定との関連の把握と支援、診断確定後の治療法、肝臓移植選択のための意思決定支援方法、県外在住で症状が進行した患者に対する家族を含めた支援体制について言及。
本研究の到達目標は、法や指針などの外的枠組みと研究者の自主ルールが車の両輪として動くことである。その車輪を支えるのが審査や研究の透明性確保と教育である。透明性は審査過程の公開や研究成果公表。教育は、医療における研究的側面を、医学系学生や若手の医療従事者に知らしめることである。
結論
生体肝ドナー保護に関する継続的配慮の必要性とその準備。生体ドナー親等制限の再検討。医療行為にある研究の認識を高める必要性と教育用教材の試作。遺伝病FAPの遺伝子診断新ガイドラインの作成。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200707020B
報告書区分
総合
研究課題名
タスクフォースによる先端医学と社会の調和のための基盤整備
課題番号
H17-生命-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小林 英司(自治医科大学臓器置換研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 丸山 英二(神戸大学大学院法学研究科)
  • 絵野沢 伸(国立成育医療センター研究所)
  • 安東 由喜雄(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
革新的医療と期待される遺伝子治療や再生医療、個人に合った治療をめざすゲノム解析研究などで多くの成果が臨床研究のレベルに達している。その中で医師から患者への不十分な説明などによる弊害も顕在化している。そこで臨床研究における被験者保護に関し研究者の自律性の在り方を考えることを目的とした。
研究方法
全体活動は15回の会議、ワークショップ、調査。他、各分担者がタスクフォースを組み活動した。
結果と考察
1)生体肝移植では、C型肝硬変への対応、プロトコールバイオプシーの要否、血液型不適合ドナーなど各施設にさまざまなルールがあり、相互の情報交換が必要。またドナーのケアは極めて重要と認識。2005年3月発行の生体肝移植ドナー調査報告の7提言のフォローアップに向けた準備を行った。2)生体臓器移植関連の法令指針におけるドナー親等制限について考察。有効性に否定的評価を下し、代わって「現在または過去における実質的な共同生活に裏付けられた感情的・精神的共感関係」を提示。3)ヒト幹細胞を用いる臨床研究指針の枠外に置かれた胎児組織利用研究に対し専門家集団が自律的に見解をまとめPublic Involvementに進め、我が国の意思決定を行うべきと考えた。教育による自律性育成が有効と考え、教材候補としてForgive and Rememberを精査し教材化をめざした。4)熊本大学医学部家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)診療グループの実績と文献調査をもとに遺伝子診断ガイドライン(自主ルール)を作成。これまで課題だった県外患者の発症前遺伝子診断の具体的支援、生体肝移植ドナー候補者の手術への自発性判定と発症前遺伝子診断の意思決定との関連の把握と支援、遠隔地患者、家族の支援について言及。
先行2研究で患者本位のインフォームド・コンセント、市民との双方向対話をテーマとした。本研究では専門家集団の自律性を取り上げた。法や指針などの外的枠組みと研究者の自主ルールは車の両輪として動くことが望ましい。それを支えるのが透明性と教育である。透明性は研究計画の審査や成果の公開による。教育は、医療における研究的側面を学生や若手医療従事者によく知らしめることである。
結論
生体肝ドナー保護の継続的配慮を準備。生体ドナー親等制限の再検討。研究的医療行為の認識を高める教育教材の試作。遺伝病FAPの遺伝子診断ガイドラインの作成。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200707020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療における研究的側面については、ニュルンベルグ綱領に始まり、ヘルシンキ宣言、ベルモントレポートなど種々の学術的研究、行政的検討がなされてきた。学術的に研究と診療行為の境界は議論が多く、専門家の手によってすら未だ明解な解答はなされていない。わが国においてはこのテーマに関し前述の3つのコード、レポートに匹敵する体系的検討はない。本研究で得られた事実の蓄積が基盤になり、研究と診療の境界についてわが国としての考えを確立する第一歩になると考える。
臨床的観点からの成果
大きな問題を内包しつつ一般化の途にある生体ドナーや遺伝子診断、今後の発展が期待される再生医療について、医療行為の中にある研究的側面を明示し、その功罪を考え、マイナス面の最小化への提言を行った。特に若手への教育が重要であるとの結論を得、実効的方策を提言した。
ガイドライン等の開発
生体肝ドナー保護に関する継続的配慮の必要性とその準備。準備完了後、実行に移す予定。生体ドナーの親等制限の再検討を論文として発行。医療行為の中にある研究、研究的行為の認識を高める必要性と、そのための試験教材の作成。教材は使用環境が整い次第、実地に用いる。遺伝病(家族性アミロイドポリニューロパチー)の遺伝子診断に関する実地に根ざしたガイドラインの策定。まずは自主ルールとして使用を開始。
その他行政的観点からの成果
本研究は先行2研究(創薬等ヒューマンサイエンス研究事業「公共的な研究利用ヒト組織バンクシステムの構築の検討」、科学技術振興調整費「先端医科学の認知に向けた社会的基盤調査」)の成果をもとに行った。また厚労科研特別研究「生体肝移植ドナーの安全性とケアの向上のための研究」のフォローアップの準備を行った。このように、個々の研究を、そこで終結させることなく、有機的に統合し、わが国の先端医療研究が医療環境の中で無理なく健全に発展するという大目的に向かって研究を進めた。
その他のインパクト
医学研究の健全な発展に向け、主任研究者小林が提唱してきた「患者本位のインフォームド・コンセント」「専門家と市民の双方向対話」に加え、第三の要素として「専門家集団の自律性」という新キーワードが内容を持った形で世に送り出されることになった。今後、この自律性と法・指針の両輪モデルがわが国の医療機関における臨床研究の理論的支柱になるものと思う。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
9件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
出願中
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-