オーダーメイド薬物治療のための革新的なベッドサイド遺伝子診断法の開発と応用

文献情報

文献番号
200707017A
報告書区分
総括
研究課題名
オーダーメイド薬物治療のための革新的なベッドサイド遺伝子診断法の開発と応用
課題番号
H17-ファーマコ-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松原 洋一(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 呉 繁夫(東北大学大学院医学系研究科 )
  • 水柿 道直(東北薬科大学 薬学部)
  • 平塚 真弘(東北薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
27,267,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、主任研究者らが独自に開発した、イムノクロマトグラフィー試験紙による革新的な遺伝子診断法を用いることによって、一般医療機関において薬理学的遺伝子多型を簡便・迅速に検出できる検査法を確立し、個別化薬物療法が実施できる体制を確立することにある。確立することにある。
研究方法
1)CASSOH法の前臨床試験と臨床応用へ向けての検討
 前臨床試験の対象となる薬理学的遺伝子多型の選定、インフォームド・コンセントおよび遺伝カウンセリングについての検討、さらに安全性・非侵襲性の検討をおこなった。
2)CASSOH法に用いる唾液検体の採取器具の検討
 唾液検体の採取法と処理法について検討をおこなった。
3)薬物代謝酵素遺伝子多型の酵素活性に与える影響の検討
 キサンチンオキシダーゼ(XO)の21種類の遺伝子多型を導入したXOバリアント酵素をCOS-7細胞に発現させ、これらの発現タンパクを用いて酵素活性を測定した。
4)日本人集団における有用な薬理遺伝的遺伝子多型情報の収集
 日本人由来のDNA 200検体について、CYP2J2のプロモーター (-3246?+45) とCYP2J2、CYP2S1及びCYP2W1の各エキソン (各9箇所) についてSNPスクリーニングとハプロタイプ解析を行った。
結果と考察
1)前臨床試験の対象となる薬理学的遺伝子多型の選定をおこなうとともに、個別化薬物療法のための遺伝子診断を一般病院で普及させるために必要な、新しい遺伝カウンセリングのあり方についての検討および安全性・非侵襲性の検討をおこなった。
2)CASSOH法に用いる唾液を簡便かつ定量的に採取する器具を開発することができた。
3)キサンチンオキシダーゼ遺伝子の変異型について、発現量の有意な低下を証明した。また、発現タンパク質の酵素速度論的解析をあわせて行った。
4)日本人集団における有用な薬理遺伝的遺伝子多型情報の収集
 CYP2J2、 CYP2S1およびCYP2W1遺伝子に新規SNPを同定した。また、日本人におけるCYP2W1遺伝子が7種類のハプロタイプを含んでいることを明らかにした。
結論
今年度の研究によって、当初の研究計画がほぼ達成された。今後、本法を一般医療機関に普及させることにより、ベッドサイド遺伝子診断による個別化薬物療法の実用化が可能と考えられる

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200707017B
報告書区分
総合
研究課題名
オーダーメイド薬物治療のための革新的なベッドサイド遺伝子診断法の開発と応用
課題番号
H17-ファーマコ-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松原 洋一(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 呉 繁夫(東北大学大学院医学系研究科)
  • 水柿 道直(東北薬科大学 薬学部)
  • 平塚 真弘(東北薬科大学 薬学部)
  • 佐々木 崇光(東北薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、主任研究者らが独自に開発した、イムノクロマトグラフィー試験紙による革新的な遺伝子診断法を用いることによって、一般医療機関において薬理学的遺伝子多型を簡便・迅速に検出できる検査法を確立し、個別化薬物療法が実施できる体制を確立することにある。
研究方法
1)イムノクロマトグラフィー試験紙の改良と作成
 イムノクロマトグラフィー試験紙の感度向上と、安定供給および品質管理を確保するために、試験紙の各素材について再検討をおこなうとともに試験紙構造を改変・簡略化した、
2)定温度核酸増幅法の検討
 定温度核酸増幅法とイムノクロマト試験紙による検出の組合わせを検討した。
3)唾液検体を用いた遺伝子診断法の開発
 唾液検体の有用性に注目し、検討をおこなった。
4)臨床的に有用な薬理遺伝学的遺伝子多型情報の収集と評価
 薬剤反応性に影響を及ぼすと考えられる遺伝子について日本人集団での多型頻度を解析した。また、日本人集団における新規の薬理遺伝学的遺伝子多型を探索するとともに、機能解析をあわせて実施した。
5)薬物代謝酵素遺伝子多型検査への応用
 臨床的に特に有用と考えられる各種の薬理遺伝学的遺伝子多型について、イムノクロマト試験紙を用いた検出条件の最適化をおこなった。
6)臨床検査としての検討とキット化の試み
 イムノクロマト試験紙および唾液検体の採取・処理キットを作成した。 
結果と考察
本研究開始時の目標は、ほぼ計画通りに達成され、ベッドサイド遺伝子診断による個別化薬物療法の実用化が可能となった。国内外に例を見ない迅速・簡便・安価な遺伝子検査法の開発に成功したことにより、本研究の成果は日経産業新聞の1面トップ記事に取り上げられるなど、社会的にも大きな注目を浴びた。今後、上記の遺伝子診断システムを、実際に臨床の現場に導入していくためには、これらの技術をシームレスに統合し、一般の臨床検査技師が実施できるように整備することによって、わが国におけるオーダーメイド薬物療法の普及が期待される。
結論
本研究によって確立された遺伝子診断法を種々の薬理遺伝学的遺伝子診断に応用することにより、一般医療機関におけるオーダーメイド薬物療法を飛躍的に推進することが期待される。今後、オーダーメイド薬物療法を臨床の現場へ導入していくことによって、わが国における薬害防止、医療コストの削減、国民の健康増進に寄与するものと予想される。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200707017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ファーマコジェネティクスに基づく個別化薬物療法はその臨床的な重要性が唱えられて久しいが、実際に一般の医療機関で実施することは困難である。本研究では、この問題を解決すべく、国内外に例を見ない迅速・簡便・安価な遺伝子検査法を開発することに成功した。この手法では、血液を用いることなく、一般病院の臨床検査室レベルで、60分以内に薬理遺伝学的遺伝子多型を検出することが可能で、これまでにない画期的な技術である。
臨床的観点からの成果
本研究により、唾液を用いた遺伝子診断が可能となったことは、今後のオーダーメイド薬物療法の普及にとって大きな意味を持っている。臨床の現場において、薬剤処方の適否だけを目的として痛みや不快感を伴う採血を実施することは難しく、また肝炎やHIVなどの感染の危険性も無視できない。唾液をもちいた遺伝子診断の普及は、ファーマコジェネティクスに基づく個別化薬物療法の発展と普及に欠くべからざる手技となるであろう。
ガイドライン等の開発
本研究では、新しい技術の開発に焦点をあわせたものであり、ガイドライン等の作成は行なっていない。
その他行政的観点からの成果
ファーマコジェネティクスに基づく個別化薬物療法については、今すぐにでも実践することによって薬害を未然に防止できるものが少なくない。もはや基礎的な研究にばかり力を注いでいる場合ではない。本研究で完成された遺伝子診断技術を一般病院で普及させ、オーダーメイド薬物療法を臨床の現場へ導入していくことによって、わが国における薬害防止、医療コストの削減、国民の健康増進に大きく寄与するものと予想される。
その他のインパクト
これまでに例をみない、唾液を用いた迅速・簡便・安価な遺伝子検査法の開発に成功したことにより、本研究の成果は日経産業新聞の1面トップ記事に取りあげられた(平成19年8月23日)。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
31件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ebisawa A, Hiratsuka M, Sasaki T, et al.
Two novel single nucleotide polymorphisms (SNPs) of the CYP2D6 gene in Japanese individuals
Drug Metabol Pharmacokin , 20 , 294-299  (2005)
原著論文2
Hiratsuka M, Sasaki T, Mizugaki M, et al.
A novel single nucleotide polymorphism of the human methylenetetrahydrofolate reductase gene in Japanese individuals
Drug Metabol Pharmacokin , 20 , 387-390  (2005)
原著論文3
Aoki Y, Kure S, Matsubara Y, et al.
Germline mutations in HRAS proto-oncogene cause Costello syndrome.
Nat Genet , 37 , 1038-1040  (2005)
原著論文4
Niihori T, Kure S, Matsubara Y. et al.
Functional analysis of PTPN11/SHP-2 mutants identified in Noonan syndrome and childhood leukemia
J Hum Genet , 50 , 192-202  (2005)
原著論文5
Otomo J, Kure S, Matsubara Y, et al.
Electrophysiological and histopathological characteristics of progressive atrioventricular block accompanied by familial dilated cardiomyopathy caused by a novel mutation of lamin A/C gene.
J Cardiovasc Electrophysiol , 16 , 137-145  (2005)
原著論文6
Suzuki Y, Kure S, Matsubara Y, et al.
Mutations in the holocarboxylase synthetase gene HLCS.
Hum Mutat , 26 , 285-290  (2005)
原著論文7
Hiratsuka M, Sasaki T, Mizugaki M, et al.
Genetic testing for pharmacogenetics and its clinical application in drug therapy
Clin Chim Acta , 363 , 177-186  (2006)
原著論文8
Hiratsuka M, Sasaki T, Mizugaki M, et al.
Competitive allele-specific short oligonucleotide hybridization (CASSOH) with enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) for the detection of pharmacogenetic single nucleotide polymorphisms (SNPs)
J Biochem Biophys Methods , 67 , 87-94  (2006)
原著論文9
Niihori T, Kure S, Matsubara Y, et al.
Germline KRAS and BRAF mutations in cardio-facio-cutaneous syndrome
Nat Genet , 38 , 294-296  (2006)
原著論文10
Sasaki T, Hiratsuka M, Mizugaki M, et al.
Three novel single nucleotide polymorphisms of the human thiopurine s-methyltransferase gene in Japanese individuals
Drug Metab Pharmacokinet , 21 , 332-336  (2006)
原著論文11
Hiratsuka M, Sasaki T, Mizugaki M, et al.
Genetic polymorphisms and haplotype structures of the CYP4A22 gene in a Japanese population
Mutat Res Fundam Mol Mech Mutagen , 599 , 98-104  (2006)
原著論文12
Kure S, Matsubara Y, et al.
Rapid diagnosis of glycine encephalopathy by 13C-glycine breath test.
Ann Neurol , 59 , 862-867  (2006)
原著論文13
Kamada F, Kure S, Matsubara Y, et al.
A novel KCNQ4 one base deletion in a large pedigree with hearing loss: Implication for the genotype-phenotype correlation.
J Hum Genet , 51 , 455-460  (2006)
原著論文14
Kure S,Matsubara Y, et al.
Comprehensive mutation analysis of GLDC, AMT, and GCSH in nonketotic hyperglycinemia.
Hum Mutat , 27 , 343-352  (2006)
原著論文15
Kanno J, Kure S, Matubara Y, et al.
Allelic and non-allelic heterogeneity in pyridoxine dependent seizures revealed by mutational analysis of ALDH7A1 gene.
Mol Genet Metabol , 91 , 384-389  (2007)
原著論文16
Kanno J, Kure S, Matubara Y, et al.
Genomic deletion within GLDC is a major cause of nonketotic hyperglycinemia.
J Med Genet , 44 , 69-69  (2007)
原著論文17
Narumi Y, Kure S, Matsubara Y, et al.
Molecular and clinical characterization of cardio-facio-cutaneous (CFC) syndrome: overlapping clinical manifestations with Costello syndrome
Am J Med Genet A , 143 , 799-807  (2007)
原著論文18
Hanzawa Y, Sasaki T, Hiratsuka M, et al.
Three novel single nucleotide polymorphisms (SNPs) of CYP2S1 gene in Japanese individuals
Drug Metab Pharmacokinet , 22 , 136-140  (2007)
原著論文19
Kudo M, Sasaki T, Mizugaki M, et al.
Functional characterizationof human xanthine oxidase allelic variants
Pharmacogenet Genom , 18 , 243-251  (2008)
原著論文20
Hanzawa Y, Sasaki T, Mizugaki M, et al.
Genetic polymorphisms and haplotype structures of the human CYP2W1 genein a Japanese population
Drug Metab Dispos , 36 , 349-352  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
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