遺伝子多型検索による高血圧個別化診療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200707013A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子多型検索による高血圧個別化診療の確立に関する研究
課題番号
H17-ファーマコ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
河野 雄平(国立循環器病センター 内科高血圧腎臓部門)
研究分担者(所属機関)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター 病院長)
  • 神出 計(国立循環器病センター 内科高血圧腎臓部門)
  • 佐瀬 一洋(順天堂大学 臨床薬理)
  • 宮田 敏行(国立循環器病センター 研究所 病因部)
  • 花田 裕典(国立循環器病センター 研究所 循環分子生理部)
  • 嘉田 晃子(国立循環器病センター 研究所 病因部)
  • 勝谷 友宏(大阪大学大学院 老年・腎臓内科)
  • 相馬 正義(日本大学 医学部 総合内科)
  • 笹栗 俊之(九州大学大学院 臨床薬理学)
  • 土橋 卓也(国立病院機構九州医療センター 内科高血圧)
  • 森本 茂人(金沢医科大学 高齢医学)
  • 檜垣 實男(愛媛大学 医学部 第二内科)
  • 三木 哲郎(愛媛大学 医学部 加齢制御内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
43,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
降圧薬の効果ならびに副作用に関与する遺伝子の多型を同定し、これを迅速に調べるシステムを臨床の現場に導入することにより、遺伝子情報に基づく高血圧個別化診療を実現することが本研究の最終目標である。
研究方法
国立循環器病センターならびに共同研究施設に受診中の本態性高血圧患者のうち血圧が軽症から中等症までの症例を対象とする。インフォームド・コンセント取得後1-2カ月は観察期とし、この間に血圧測定、遺伝子ならびに副作用評価のための血清カリウムや代謝項目を含む採血を施行する。その後、無作為交叉法により、サイアザイド系利尿薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、カルシウム拮抗薬を用いての単剤治療を各3カ月行う。各薬剤は、はじめの1カ月間は少量を、次の2カ月間は通常用量を内服する。各治療期の終了時に生化学検査採血を施行し、血圧測定は外来と家庭の両方を用い、増量後の2カ月の平均値で評価する。観察期を含め計10-11カ月で試験を終了する。遺伝子解析はDNAマイクロアレイ法による全染色体領域にわたる50万SNPならびに3種降圧薬の薬理作用に関わりの深いと考えられる120の候補遺伝子多型である。候補遺伝子の多型の決定はTaqMan PCR法を用いる。解析は匿名化された遺伝情報ならびに臨床情報を合わせて、国立循環器病センターならびに各共同研究施設、さらにゲノム統計の専門にしている統計数理研究所で分担して行う予定である。症例登録は平成18年度末(平成20年3月31日)までで目標症例数は150例であった。
結果と考察
研究参加施設は全部で24施設。平成19年3月31日までに目標症例数を超える154名の症例がエントリーされた。146例のDNA提供があり、遺伝子解析はDNAマイクロアレイ法を用いた50万SNPのゲノム網羅的解析を中心に行い、97%以上のコールレートを維持できるプロトコールを確立し、全症例でタイピングを終了した。TaqMan法で行った120の候補遺伝子多型による解析も全例で終了した。平成20年3月に最終登録患者の観察が終了し、臨床データベースも完成し、現在は遺伝子情報データベースと臨床情報データベースを連結し、ゲノム情報解析の統計家も交え得最終の解析を施行している。
結論
降圧薬感受性遺伝子同定のための前向き多施設臨床試験(GEANE研究)を施行した。本研究の成果が遺伝子情報を基にした高血圧の個別化治療の確立に寄与することが期待される

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200707013B
報告書区分
総合
研究課題名
遺伝子多型検索による高血圧個別化診療の確立に関する研究
課題番号
H17-ファーマコ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
河野 雄平(国立循環器病センター 内科高血圧腎臓部門)
研究分担者(所属機関)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター 病院)
  • 神出 計(国立循環器病センター 内科高血圧腎臓部門)
  • 佐瀬 一洋(順天堂大学 臨床薬理)
  • 宮田 敏行(国立循環器病センター研究所 病因部)
  • 花田 裕典(国立循環器病センター研究所 循環分子生理部)
  • 嘉田 晃子(国立循環器病センター研究所 病因部)
  • 勝谷 友宏(大阪大学大学院 老年・腎臓内科)
  • 相馬 正義(日本大学 医学部 総合内科)
  • 笹栗 俊之(九州大学大学院 臨床薬理学)
  • 土橋 卓也(国立病院機構九州医療センター 内科高血圧)
  • 森本 茂人(金沢医科大学 高齢医学)
  • 檜垣 實男(愛媛大学 医学部 第二内科)
  • 三木 哲郎(愛媛大学 医学部 加齢制御内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高血圧の原因や臓器障害の進行、その治療薬である降圧薬の効果ならびに副作用に関与する遺伝子の多型を同定し、これを迅速に調べるシステムを臨床の現場に導入することにより、遺伝子情報に基づく高血圧個別化診療を実現することが本研究の最終目標である。
研究方法
GEANE研究(降圧薬感受性遺伝子同定のための前向き多施設臨床試験):3種類の降圧薬(サイアザイド系利尿薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、カルシウム拮抗薬)を無作為交叉法により服用させて、各個人の薬に対する降圧効果、副作用を検討する。遺伝子解析はDNAマイクロアレイ法による全染色体領域にわたる50万SNPならびに3種降圧薬の薬理作用に関わりの深いと考えられる120の候補遺伝子多型である。解析は匿名化された遺伝情報ならびに臨床情報を合わせて、国立循環器病センターならびに各共同研究施設、さらにゲノム統計の専門にしている統計数理研究所で分担して行う。
高血圧関連遺伝子解析研究:国立循環器病センターならびに各分担研究施設で、主に断面研究のCASE-CONTROLの関連研究を行った。
結果と考察
GEANE研究は、降圧薬の効果ならびに副作用に関連する遺伝子多型を同定するための世界的にみても類をみないクロスオーバー法を用いた初めての前向き多施設共同研究である。本研究において用いられる降圧薬は、主要降圧薬であるが、それらの薬効や副作用にはかなりの個人差が認められている。しかも本研究ではゲノム網羅的に50万SNPsを調べる方法を施行しており、それぞれの降圧薬に特異的な感受性遺伝子や副作用関連遺伝子多型が同定されることが期待される。これら3種の主要降圧薬の患者個人での降圧効果ならびに薬剤投与後の副作用に関する臨床データベースとゲノム網羅的な遺伝子情報データベースが完成したことは今後の降圧薬のPharmacogenomicsの発展に大いに寄与する可能性がある。また、GEANE研究によって関連性を有した多型を簡便にかつ迅速にタイピングできる遺伝子多型診断キットを独自に開発し、さらにこの検査システムを用いて降圧薬の選択を行い、従来からのガイドラインに従って降圧薬を選択した場合と比較する前向き臨床試験(GEANE2研究)を施行することを計画している。
結論
降圧薬感受性遺伝子同定のための前向き多施設臨床試験(GEANE研究)を施行した。本研究の成果が遺伝子情報を基にした高血圧の個別化治療の確立に寄与することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200707013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我が国で3300万人以上の患者数が存在する高血圧におけるテーラーメード医療の確立は切望されるところである。本研究プロジェクトでは特に臨床的に重要な3種の降圧薬、利尿薬・アンジオテンシン受容体拮抗薬・カルシウム拮抗薬の降圧効果と副作用関連遺伝子多型に関する検討を無作為交叉法による臨床試験とゲノム網羅的遺伝子解析を行った世界的にも類をみない研究であり、本研究によって得られた成果ならびにデータベースは今後のPharmacogenomics研究の進歩に貢献するものと考えられる。
臨床的観点からの成果
降圧薬の効果は個人差があることが知られている。これは体質に依存するところが大きく、降圧薬の効果に関連する遺伝子的素因の解明は高血圧テーラーメード診療確立の礎となる基礎情報である。本研究プロジェクトにより3種の降圧薬、利尿薬・アンジオテンシン受容体拮抗薬、カルシウム拮抗薬の関連遺伝子多型が明らかになることが期待される。これにより高血圧診療の飛躍的進歩に貢献する可能性がある。
ガイドライン等の開発
高血圧のガイドラインに対して具体的には本研究成果を取り入れは行われていないが、遺伝的背景を考慮して薬物選択を行うようになっている薬剤は数種存在するようになって来た。降圧薬の効果や副作用発現には個人差があり、遺伝情報に基づく薬物選択は今後ガイドラインに取り入れられる可能性があり、本研究の成果はその基礎情報として大いに貢献する可能性がある。
その他行政的観点からの成果
我が国で3300万人以上の患者数が存在する高血圧の診療とくに薬物治療をより効率的で有効なものにするためには個人の体質にあったより効果的で副作用の少ないテーラーメード医療の確立が急務である。本研究プロジェクトの成果から最も効果的な降圧薬を遺伝子情報から選択して処方するテーラーメード医療の確立が可能となる可能性があり、医療経済的にも大きく貢献することが期待される。
その他のインパクト
本研究プロジェクトが始まる直前、日本経済新聞(平成17年1月25日) 病を知る 遺伝子診断・治療④-降圧剤の感受性とSNP-として我々の降圧薬関連遺伝子同定のための取り組みが紹介された。このように降圧薬を遺伝素因から選択するテーラーメード医療は患者さんにも非常に強く求められているものと考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
79件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
63件
学会発表(国際学会等)
36件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kamide K, Kokubo Y, Fukuhara S, et al.
Protein tyrosine kinase 2 β as a candidate gene for hypertension.
Pharmacogenetics and Genomics , 17 (11) , 931-939  (2007)
原著論文2
Kamide K, Kokubo Y, Yang J, et al.
Association of genetic polymorphisms of ACADSB and COMT with human hypertension.
J Hypertens , 25 (1) , 103-110  (2007)
原著論文3
Yasuda H, Kamide K, Takiuchi S, et al.
Association of single nucleotide polymorphisms in endothelin family genes with the progression of atherosclerosis in patients with essential hypertension.
J Hum Hypertens , 21 (11) , 883-892  (2007)
原著論文4
Banno M, Hanada H, Kamide K, et al.
Association of genetic polymorphisms of endothelin converting enzyme-1 gene with hypertension in a Japanese population and rare missense mutation in preproendothelin-1 in Japanese hypertensives.
Hypertens Res , 30 (6) , 513-520  (2007)
原著論文5
神出 計, 又吉哲太郎, 河野雄平
サイアザイド系利尿薬の降圧効果に関与する遺伝子多型
腎と透析 , 61 , 791-794  (2006)
原著論文6
Kokubo Y, Tomoike H, Tanaka C, et al.
Association of sixty-one non-synonymous polymorphisms in forty-one hypertension candidate genes with blood pressure variation and hypertension.
Hypertens Res , 29 (8) , 611-619  (2006)
原著論文7
Kamide K, Kokubo Y, Hanada H, et al.
Genetic variations of HSD11B2 in hypertensive patients and in the general population, six rare missense/frameshift mutations.
Hypertens Res , 29 (4) , 243-252  (2006)
原著論文8
Okuro M, Morimoto S, Takahashi T, et al.
Angiotensin I-converting enzyme inhibitor improves reactive hyperemia in elderly hypertensives with arterioslerosis obliterans.
Hypertens Res , 29 (9) , 655-663  (2006)
原著論文9
Morimoto S, Takahashi T, Okaishi K, et al.
Tilting-induced decrease in systolic blood pressure in bedridden hypertensive elderly inpatients -Effects of azelnidipine.
Hypertens Res , 29 (12) , 943-949  (2006)
原著論文10
Yang J, Kamide K, Kokubo Y, et al
Genetic variations of regulator of G-protein signaling 2 in hypertensive patients and in the general population.
J Hypertens , 23 (8) , 1497-1505  (2005)
原著論文11
Tanaka C, Mannami T, Kamide K, et al.
Single nucleotide polymorphisms in the interleukin-6 gene associated with blood pressure and atherosclerosis in Japanese general population.
Hypertens Res , 28 (1) , 35-41  (2005)
原著論文12
Kamide K, Yang J, Kokubo Y, et al.
A novel missense mutation, F826Y, in the mineralocorticoid receptor gene in Japanese hypertensives: Implication of clinical phenotypes.
Hypertens Res , 28 (9) , 703-709  (2005)
原著論文13
Kamide K, Kokubo Y, Yang J, et al.
Hypertension susceptibility genes on chromosome 2p24-p25 in a general Japanese population.
J Hypertens , 23 (5) , 955-960  (2005)
原著論文14
神出 計, 河野雄平
高血圧の薬理遺伝学 -ミレニアム・ゲノム・プロジェクト-
血圧 , 12 , 855-860  (2005)
原著論文15
神出 計, 宮田敏行
本態性高血圧と遺伝子多型
Molecular Medicine , 42 , 895-902  (2005)
原著論文16
神出 計, 宮田敏行, 河野雄平
高血圧個別化診療に向けた臨床介入試験とゲノム解析の現況と展望
血管 , 28 , 79-85  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-