肺がん感受性を規定する遺伝子に関する研究

文献情報

文献番号
200707008A
報告書区分
総括
研究課題名
肺がん感受性を規定する遺伝子に関する研究
課題番号
H17-ゲノム-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
横田 淳(国立がんセンター研究所 生物学部)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 隆志(国立がんセンター研究所 生物学部)
  • 坂本 裕美(国立がんセンター研究所 腫瘍ゲノム解析・情報研究部)
  • 猪子 英俊(東海大学医学部基礎医学系 分子生命医学)
  • 國頭 英夫(国立がんセンター中央病院 総合病棟部)
  • 鈴木 健司(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
  • 山本 精一郎(国立がんセンターがん対策情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
39,047,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺がん感受性を規定する遺伝要因を解明し、肺がん予防実現に向けた分子情報を得ることを研究目的とする。
研究方法
詳細かつ正確な診療情報を持つ肺がん症例2,000例以上を用い、高い統計学的検出力のもとに種々の遺伝子多型に関する症例対照研究を行うことで、肺発がん感受性遺伝子群を同定する。
結果と考察
症例対照研究のための血液試料として肺がん症例2,500例、対照群は2,000例を収集した。肺がん症例の中には、最も高頻度でありながら喫煙との関連が弱く効果的な予防法のない腺がん1,300例、喫煙と関連し、最も悪性度が高い小細胞がん300例等、代表的な組織型のがんを含めた。全ゲノムに亘って約130-kb間隔で位置する23,000マイクロサテライト多型を用いた肺腺がんリスクに関するゲノム網羅的な相関解析を完遂させ、7箇所の新規感受性遺伝子座を同定した。当該多型座周辺には、これまでに肺がんリスクとの相関が報告された遺伝子は存在していない。よって、新規肺腺がん感受性遺伝子が存在すると考えられた。マウス肺腺腫感受性遺伝子に対応するヒト遺伝子群に存在する遺伝子多型の相関解析を行い、KRASがん遺伝子の多型が、腺がんの前がん病変と考えられている肺腺腫(異型腺腫様過形成:Atypical adenomatous hyperplasia)発生のリスクと相関することを見出した。 KRAS遺伝子と肺腺腫リスクとの相関に関しては、これまで、ヒト肺腺腫リスクと相関する多型を同定した報告はなく、世界に先駆けた結果であると考える。また、この結果は、ヒトとマウスで共通の遺伝子が肺腺腫リスクを規定することを示すものである。今後、KRASがん遺伝子の多型が同遺伝子の発現量の差異をもたらす分子機構について、明らかにする必要がある。
結論
症例対照研究のための血液試料の収集を行い、肺がん症例は約 2,500例に達した。これらの検体に対しては、均一、かつ詳細な診療情報が得られており、肺がん感受性遺伝子同定のための相関解析を適正に遂行することができた。また、手術症例に対しては肺腺がんの前がん病変と考えられる異型腺腫様過形成の情報を得ることができ、肺がんのみならず肺腺腫感受性遺伝子の探索を同時に行うことが可能であった。本研究の成果及び収集された試料は本研究のみならず、今後の肺がんの遺伝要因探求のための有用な基盤情報・研究資源となる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200707008B
報告書区分
総合
研究課題名
肺がん感受性を規定する遺伝子に関する研究
課題番号
H17-ゲノム-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
横田 淳(国立がんセンター研究所 生物学部)
研究分担者(所属機関)
  • 河野  隆志(国立がんセンター研究所 生物学部)
  • 坂本  裕美(国立がんセンター研究所 腫瘍ゲノム解析・情報研究部)
  • 猪子  英俊(東海大学医学部基礎医学系 分子生命科学)
  • 国頭  英夫(国立がんセンター中央病院 総合病棟部)
  • 鈴木  健司(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
  • 山本  精一郎(国立がんセンターがん対策情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺がん感受性を規定する遺伝要因を解明し、肺がん予防実現に向けた分子情報を得ることを研究目的とする。
研究方法
詳細かつ正確な診療情報を持つ肺がん症例2,000以上を用い、高い統計学的検出力のもとに種々の遺伝子多型に対する症例対照研究を行うことで、肺発がん感受性遺伝子群を同定する。病理組織型や喫煙歴等の診療情報の組み合わせによる相関の変動を明らかにすることで、同定された遺伝子群の肺発がん感受性における意義を明らかにして、肺がんの発生を効果的に予防する新たな手法の開発までの進展を目指す。
結果と考察
症例対照研究のための血液試料として肺がん症例2,500例、対照群2,000例を収集した。肺がん症例の中には、最も高頻度でありながら喫煙との関連が弱く効果的な予防法のない腺がん1,300例、喫煙との関連し、最も悪性度が高い小細胞がん300例等、代表的な組織型のがんを含めた。肺がんリスクとPOLI、OGG1、TP53、LIG4、REV1、MTH1遺伝子の多型が相関することを見出した。また、これらの多型の相関には組織型による特異性が存在し、また、喫煙によって相関が変動することを見出した。KRASがん遺伝子の多型が、腺がんの前がん病変と考えられている異型腺腫様過形成(Atypical adenomatous hyperplasia)発生のリスクと相関することを見出した。全ゲノムに亘って約130-kb間隔で位置する23,000マイクロサテライト多型を用いた肺腺がんリスクに関するゲノム網羅的な相関解析を行い、7箇所の新規感受性遺伝子座を同定した。
結論
感受性遺伝子同定のための症例対照研究に十分な数の試料が収集され、また、各代表的な組織型の肺がんへの感受性を規定する遺伝子群が同定された。また、一部の遺伝子では、喫煙による相関の変動が見出された。よって、本研究で肺がんの遺伝要因に関する基盤的な分子情報及び、肺がん予防実現へ向けた更なる研究のための研究資源が得られたため、計画通り、研究が進行した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200707008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で肺がんリスクとの相関が明らかにされた遺伝子群には、これまで、がん感受性遺伝子として同定されていない新規遺伝子群が多く含まれている。よって、同研究分野の知見を大きく拡大させるものである。また、ゲノム網羅的な相関解析で見出された新規肺がん感受性遺伝子座、遺伝要因が未知であった肺腺腫・小細胞がんへの感受性を規定する遺伝子を同定できたことは、世界に先駆けた成果であり、その国際的な評価も高い。
臨床的観点からの成果
肺がんは死亡率の最も高い難治がんであり、効果的な予防法の開発が強く望まれている。本研究で得られた情報、研究資源を基盤とし、研究をさらに進めることで、個人の肺がんリスクprofilingやそれに基づいた個別化予防が実現できると考える。
ガイドライン等の開発
なし。
その他行政的観点からの成果
なし。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kohno T, Kunitoh H, Suzuki K et al.
Association of KRAS polymorphisms with risk for lung adenocarcinoma accompanied by atypical adenomatous hyperplasias.
Carcinogenesis  (2008)
原著論文2
Maekawa T, Kohno T, Yokota J et al.
Reduced levels of ATF-2 predispose mice to mammary tumors.
Mol Cell Biol , 27 , 1730-1744  (2007)
原著論文3
Katsura Y, Yokota J, Kohno T et al.
Involvement of Ku80 in microhomology-mediated end joining for DNA double-strand breaks in vivo.
DNA Repair , 6 , 639-648  (2007)
原著論文4
Kohno T, Sakiyama T, Kunitoh H et al.
Association of Polymorphisms in the MTH1 gene with small cell lung carcinoma risk.
Carcinogenesis , 27 , 2448-2454  (2006)
原著論文5
Kohno T, Kunitoh H, Toyama K et al.
Association of the OGG1-Ser326Cys polymorphism with lung adenocarcinoma risk.
Cancer Science , 97 , 724-728  (2006)
原著論文6
Raimondi S, Paracchini V, Kohno T et al.
Meta- and Pooled Analysis of GSTT1 and Lung Cancer: A HuGE-GSEC Review. 
Am J Epidemiol. , 164 , 1027-1042  (2006)
原著論文7
Sasaki S, Yokota J, Kohno T et al.
Rapid assessment of two major repair activities against DNA double-strand breaks in vertebrate cells.
Biochem Biophys Res Commun , 339 , 583-590  (2006)
原著論文8
Kohno T, Yokota J.
Molecular processes of chromosome 9p21 deletions causing inactivation of the p16 tumor suppressor gene in human cancer: Deduction from structural analysis of breakpoints for deletions.
DNA Repair , 5 , 1273-1281  (2006)
原著論文9
Sakiyama T, Kohno T, Mimaki S et al.
Association of amino acid substitution polymorphisms in DNA repair genes, TP53, POLI, REV1 and LIG4, with lung cancer risk.
Int J Cancer , 114 , 730-737  (2005)
原著論文10
Sato M, Yokota J, Kohno T et al.
Probing the chromosome 9p21 region susceptible to DNA double-strand breaks in human cells in vivo by restriction enzyme transfer.
Oncogene , 24 , 6108-6118  (2005)
原著論文11
Aoki M,Yokota J, Kohno T et al.
A full genome scan for gastric cancer.
J Med Genet , 42 , 83-87  (2005)
原著論文12
Sato Y, Suganami H, Sakamoto H et al.
The confidence interval of allelic odds ratios under the Hardy-Weinberg disequilibrium.
J Hum Genet , 51 , 772-780  (2006)
原著論文13
Liu Y, Kohno T, Sakamoto H et al.
Association of habitual smoking and drinking with single nucleotide polymorphism (SNP) in 40 candidate genes: data from random population-based Japanese samples.
J Hum Genet , 50 , 62-68  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-