生活習慣病の鍵分子、アディポネクチン受容体の病態生理的意義と情報伝達経路の解明

文献情報

文献番号
200707006A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病の鍵分子、アディポネクチン受容体の病態生理的意義と情報伝達経路の解明
課題番号
H17-ゲノム-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山内 敏正(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科統合的分子代謝疾患科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 窪田 直人(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝)
  • 植木 浩二郎(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝)
  • 門脇 孝(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
41,243,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、(1)遺伝子改変マウスの解析によるアディポネクチン受容体AdipoR1とR2の生理的・病態生理的意義の解明、(2) AdipoR1とR2結合蛋白の同定とそれに基づいた細胞内情報伝達機構の解明を行い、新規の革新的な抗メタボリックシンドローム・抗動脈硬化薬の開発に繋げることを目的とした。
研究方法
AdipoR1とAdipoR2のアデノウイルスによる発現系を構築し、293細胞を用いて増やした後にアデノウイルスの精製を行った。メタボリックシンドロームのモデルマウスであるdb/dbマウスにこのアデノウイルスを感染させ、肝臓特異的に過剰発現させて、その表現型を解析した。また、AdipoR1とAdipoR2及びAdipoR1・R2ダブル欠損マウスを作製し、解析を行った。gC1qRのRNAiによる遺伝子ノックダウンを行い、アディポネクチンによるAMPKのリン酸化を検討した。また、in vitroにおけるAdipoR1・R2とGST- gC1Qr融合タンパクとの結合性を検討した。
結果と考察
(1) 過剰発現と遺伝子欠損による機能解析により、AdipoR1・R2が個体レベルでアディポネクチンの結合と作用に必須の主要な受容体である事、R1・R2が糖・脂質代謝、炎症、酸化ストレス制御に個体レベルで重要な役割を果たす事、R1はアディポネクチンによるAMPK活性化、 R2 は PPARα活性化の経路と、それぞれより強くリンクしている事を証明した(Nat Med 13: 332 - 339, 2007)。ミトコンドリア機能や動脈硬化における意義を解明しつつある。 (2) AdipoR1・R2それぞれの特異的結合タンパクによる機能の役割分担の分子機構をin vivoで証明しつつある。
結論
(1) AdipoR1およびAdipoR2が個体レベルにおいても、アディポネクチンの結合と作用に必須の主要な受容体である。
(2) AdipoR1およびR2は個体レベルにおいて血糖制御や脂質代謝、炎症や酸化ストレスの制御に重要な役割を果たす。
(3) AdipoR1とR2にそれぞれ特異的に結合する細胞内シグナル分子の違いでR1とR2の役割分担を説明出来る可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200707006B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣病の鍵分子、アディポネクチン受容体の病態生理的意義と情報伝達経路の解明
課題番号
H17-ゲノム-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山内 敏正(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科統合的分子代謝疾患科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 窪田 直人(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科)
  • 植木 浩二郎(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科)
  • 門脇 孝(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、(1)遺伝子改変マウスの解析によるアディポネクチン受容体AdipoR1とR2の生理的・病態生理的意義の解明、(2) AdipoR1とR2結合蛋白の同定とそれに基づいた細胞内情報伝達機構の解明を行い、新規の革新的な抗メタボリックシンドローム・抗動脈硬化薬の開発を目指すことを目的とした。
研究方法
メタボリックシンドロームのモデルマウスであるdb/dbマウスにAdipoR1とAdipoR2のアデノウイルスを感染させ、肝臓特異的に過剰発現させて、その表現型を解析した。また、AdipoR1とR2の遺伝子欠損マウス及びAdipoR1・R2ダブル欠損マウスを作製し、解析した。また、AdipoR1・R2結合タンパク質の作用・機能について検討した。
結果と考察
(1)in vivo においてAdipoR1およびR2がアディポネクチンの結合と作用に必須の主要な受容体であることが証明された。
(2) AdipoR1およびR2はin vivo において血糖制御や脂質代謝、炎症や酸化ストレスの制御に重要な役割を果たすことが示唆された。
(3)アデノウイルスを用いて肝臓特異的にAdipoR1 又はR2を過剰発現させることが実際に治療法になることが明らかとなった。
(4) AdipoRの増加による抗糖尿病作用は、アディポネクチンによる活性化が必要であることが明らかとなった。AdipoRの特異的結合タンパクを用いた細胞内情報伝達経路解析により、AdipoR1とR2にそれぞれ特異的に結合する細胞内シグナル分子の違いでR1とR2の役割分担を説明出来る可能性が示唆された。
結論
1) AdipoR1およびR2が個体レベルにおいても、アディポネクチンの結合と作用に必須の主要な受容体である。
(2) AdipoR1およびR2は個体レベルにおいて血糖制御や脂質代謝、炎症や酸化ストレスの制御に重要な役割を果たす。
(3) AdipoR1とR2にそれぞれ特異的に結合する細胞内シグナル分子の違いでR1とR2の役割分担を説明出来る可能性が示唆された。
 AdipoR1とR2の全身欠損マウスを解析終了し、公刊した(Nat Med 13: 332 - 339, 2007)。組織特異的欠損マウス解析により、ミトコンドリア機能や動脈硬化における意義を見出し、公刊に向けて準備中であり、ほぼ達成されたと言える。

公開日・更新日

公開日
2008-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200707006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
肥満で低下するアディポネクチン(Ad)受容体(AdipoR)(Nature 423:762,2003)の内,R1増加でAMPKが活性化,R2増加でPPARαが活性化しインスリン抵抗性 糖尿病が改善.AdipoR1 R2はAd結合 作用に必須受容体でインスリン感受性,糖 脂質 エネルギー代謝,炎症や酸化ストレス等制御に生理的重要役割を果たす(Nat Med13:332-339,2007).成果は受容体候補分子に関し欧米研究者との論争が終止.我々が同定したAdipoRがAdの主な受容体を証明
臨床的観点からの成果
アディポネクチンのみならず同じく肥満で低下しているAdipoRを増加させることも個体レベルで糖代謝改善効果を有することが証明。これまでに個体レベルでAdipoRを増加させることを示してきたPPARα活性化剤の有用性がより明らかになると共にAdipoRを増加させる他の化合物の探索・開発も重要であることが示された。またインスリン抵抗性やメタボリックシンドローム、糖尿病、NASH等ヒトの病態においてAdipoRの低下が認められていないか検討し低下していれば増加させることが治療法になり得る可能性が示唆。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
「血糖値:善玉ホルモンで↓メタボリック治療薬に応用も-東大グループ発表」毎日新聞2007年2月11日 「メタボ予防に2たんぱく質「治療法・新薬に期待」東大チーム、マウスで確認」朝日新聞2007年2月9日 「東大、アディポネクチン受容体がメタボリック治療に有望」化学工業日報 2007年2月9日 「“脂肪燃焼ホルモン”を活性化 糖尿病治療の動物実験に成功 東大」NHKニュース 2007年2月8日 「メタボ・糖尿治療に光『受容体』増で血糖値下がる 東大チーム」東京新聞夕刊2007年2月8日

発表件数

原著論文(和文)
46件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
28件
学会発表(国内学会)
37件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamauchi T et al.
Targeted disruption of AdipoR1 and AdipoR2 causes abrogation of adiponectin binding and metabolic actions.
Nature Medicine  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-