角膜全層の再生医療技術の開発および臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200706027A
報告書区分
総括
研究課題名
角膜全層の再生医療技術の開発および臨床応用に関する研究
課題番号
H19-再生-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
西田 幸二(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 仲野 徹(大阪大学大学院生命機能研究科、大阪大学大学院医学系研究科)
  • 明石満(大阪大学大学院工学研究科)
  • 田畑泰彦(京都大学再生医科学研究所)
  • 竹花一成(酪農学園大学獣医学部)
  • 上 昌広(東京大学医科学研究所ヒューマンネットワーク部門)
  • 宮野 悟(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター)
  • 山口拓洋(東京大学医学部生物統計学教室)
  • 嶋澤るみ子(同志社女子大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重篤な角膜疾患に対して現在角膜移植が実施されているが、わが国では献眼数は絶対的に少なく、また他家組織による拒絶反応のため角膜移植が奏功しない。本研究では、自家細胞と人工材料を用いて全層性再生角膜を作製する技術を創出し、免疫抑制剤を必要としない安全性で有効な角膜再生治療法の開発を行い、臨床応用の実現化を目指している。3年計画の初年度に当たる本年は、角膜上皮、角膜実質、角膜内皮のパーツ毎に既往の技術の課題を克服するための技術を発案し、角膜全層の再生医療技術の基盤を創出することを目的とした。
研究方法
角膜上皮に関しては、我々が世界で初めて臨床応用に成功した培養口腔粘膜上皮細胞シート移植に使用されるマウス由来フィーダー細胞や薬品を自己細胞やGMP準拠成分に変更し、既往の手法とバリデーション法にて比較検討した。角膜実質に関しては、唯一動物実験の結果が報告されているコラーゲン架橋による人工角膜実質作製法を再現し、透明性や生体親和性等の有効性の検討を行った。角膜内皮に関しては、角膜内皮細胞に分化し得る他組織細胞の探索と細胞シートキャリアーの検討を行った。
結果と考察
角膜上皮に関しては、従来のマウス3T3フィーダー細胞を用いたものと、自己細胞フィーダー及びGMP準拠成分を用いて作製したヒト口腔粘膜上皮細胞シートは同等の品質であることを総細胞数、生細胞数、上皮細胞純度、HE染色、免疫組織化学染色で確認した(特許申請中)。また角膜実質に関しては、組織と同程度の濃度を有する架橋コラーゲンゲル作製法を再現に成功し、可視光透過率と生体親和性に優れていることを確認したが、力学強度に問題があることが明らかとなった。この課題を解決する新しいコラーゲンゲル作製法を考案し、現在特許申請中である。さらに角膜内皮については、角膜内皮細胞が神経堤由来細胞であることから、神経堤由来組織から未分化な細胞を単離することに成功した。眼科分野で既に使用されているヒアルロン酸を用いた移植用角膜内皮細胞シートキャリアの開発にも着手した。
結論
本研究は、角膜三層毎に研究フェーズが異なるが、それぞれのフェーズで他家細胞や異種成分を使用することのない角膜全層の再生医療技術の基盤となる要素技術が開発されつつある。今後はそれらの精度をパーツ毎に臨床レベルにまで高め、角膜全層の再生医療技術の開発を目指す。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
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