脱細胞化スキャフォールドを用いる新規再生筋組織作製の基礎研究

文献情報

文献番号
200706025A
報告書区分
総括
研究課題名
脱細胞化スキャフォールドを用いる新規再生筋組織作製の基礎研究
課題番号
H18-再生-若手-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
江橋 具(国立循環器病センター研究所・再生医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤里 俊哉(大阪工業大学工学部生体医工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、動物の骨格筋や心筋を超高静水圧印加処理することにより、脱細胞化筋スキャフォールドを作製し、これに未分化・未熟な細胞を播種して三次元培養することで、大きく厚みのある再生型筋肉移植片を生体外にて構築させることを目的とする。
研究方法
1. 骨格筋を超高静水圧印加を用いて脱細胞化し、これをスキャフォールドとして筋芽細胞や間葉系幹細胞を培養した。これらの細胞をスキャフォールドに播種した後、3日間静置培養し、細胞が足場に十分に接着させてから、細胞への力学的刺激を開始した。力学的刺激は、周期的な伸縮刺激と一過性の伸長刺激の二通りを試み、培養細胞の形態や筋分化マーカーのmRNA発現量を測定し、力学的刺激が細胞の分化や成熟に与える影響を調べた。

2. 本研究で用いたスキャフォールドは、移植用組織のための材料である。厚みのある移植用組織を作製するにともない、組織内の血管新生は不可欠である。そこで、スキャフォールドに細胞を接着させずにラット心筋へ移植し、スキャフォールド単体が、移植後の血管新生と内部の細胞の生存に与える効果を調べた。
結果と考察
1. 脱細胞化スキャフォールドに筋芽細胞を播種して伸長培養を行った場合、刺激の有無にかかわらず細胞太くなり、生体内の筋線維と同様の形態を示して、細胞の成熟が認められた。
 また、間葉系幹細胞を培養した結果、伸長刺激を与えた場合には、刺激から3 日後に細胞がスキャフォールドの伸長方向に並行に並び、一部の細胞が細胞融合を起こして筋管細胞様の形態を示していた。一方、伸縮培養を行った場合には、細胞の形態は丸いままであったが、伸縮刺激開始から数時間の筋細胞分化マーカー発現量が著しく増加することがわかった。
2. 脱細胞化スキャフォールドをラット心臓に移植したところ、スキャフォールド内部に大量の毛細血管が新生したことが確認された。移植スキャフォールドには、移植後2 週間目以降、大量に細胞が浸潤しており、初期では炎症系細胞がほとんどであったが、術後 3ヶ月たつと、血球だけでなく、組織構成細胞と考えられる、線維芽細胞様の細胞も多くみられた。また、スキャフォールドと心筋との間の結合が強くなっており、心筋梗塞などの治療法として心臓壁を補強するにも適していると考えられた。
結論
 脱細胞化スキャフォールドを用いた培養あるいは移植実験から、スキャフォールドが筋芽細胞の成熟に影響を及ぼすこと、力学的刺激が、間葉系幹細胞の筋細胞への分化に効果があること、また、スキャフォールド内部への血管新生誘導能があることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200706025B
報告書区分
総合
研究課題名
脱細胞化スキャフォールドを用いる新規再生筋組織作製の基礎研究
課題番号
H18-再生-若手-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
江橋 具(国立循環器病センター研究所・再生医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤里 俊哉(大阪工業大学工学部生体医工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、動物の筋組織を超高静水圧印加処理することで脱細胞化筋スキャフォールドを作製し、これに未分化・未熟な細胞を播種して三次元培養することにより、大きく厚みのある再生型筋肉移植片を構築するための基礎的研究である。
研究方法
動物の骨格筋から脱細胞化スキャフォールドを作製し、筋芽細胞や間葉系幹細胞を培養した。まず、骨格が密な多孔質体であるスキャフォールドへの細胞播種法として、無針注射器による方法を検討した。次に、細胞を分化・成熟させることを目的として、スキャフォールドにて培養した細胞への力学的刺激を行った。力学的刺激は、周期的な伸縮あるいは、一過性の伸展刺激を行った。刺激を行った細胞は、細胞形態の観察と筋細胞分化マーカー発現量の測定を行い、刺激を行わなかった細胞と比較した。さらに、脱細胞化スキャフォールドが、ホスト体内におけるスキャフォールドの組織再生誘導能を調べるために、スキャフォールドを単体で心臓外壁に移植し、移植後のスキャフォールド内部の細胞構成を組織学的に調べた。
結果と考察
無針注射器によるスキャフォールドへの細胞播種や生体への細胞移植の条件を検討することにより、これらの新規技術を開発できた。一方、脱細胞化スキャフォールドを用いて筋芽細胞を培養すると、刺激の有無にかかわらず、スキャフォールドの内部で細胞が成熟し、スキャフォールドによる細胞分化効果が考えられた。一方、間葉系幹細胞を培養した場合では、伸縮刺激を与えた場合には、刺激開始から数時間以内の筋細胞分化マーカーの発現量がコントロール群よりも増加した。また、伸長培養では刺激から3 日目の細胞形態が変化し、筋管細胞様の多核の細胞になったことから、伸長刺激により間葉系幹細胞の筋細胞への分化が誘導されたことが考えられた。さらに、スキャフォールドを生体内に移植すると、スキャフォールド内部に毛細血管が侵入するとともに、細胞も浸潤し、移植後期間が長くなるにつれて、浸潤細胞の構成も、血球細胞から線維芽細胞のような組織構成細胞へと変化したことから、スキャフォールドに組織再生誘導能があると考えられた。
結論
脱細胞化スキャフォールドを用いて筋組織を生体外で再構築するための基礎的研究として、利用する細胞や培養条件を検討した結果、足場材料と力学的刺激により、未成熟細胞が筋細胞へと分化させることが可能となった。将来的に臨床応用することを考慮すると、試薬によらない刺激による細胞分化は有効性が高いと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
間葉系幹細胞の、細胞治療のためのソースとしての利用は近年盛んに検討されており、特に、骨や軟骨の治療への臨床応用も行なわれている。これらの組織への細胞の分化誘導法に関しては、さまざまな手法が検討されてきたが、筋細胞に関してはいまだ数少ない。特に、三次元培養系で細胞の伸縮や伸長などの力学刺激による細胞の分化誘導の効果に関する研究はほとんどなく、本研究の成果は学術的に新しい知見を得られたといえる。
臨床的観点からの成果
これまでに報告されてきた間葉系幹細胞の筋細胞への分化誘導法は、試薬を培地に加える方法で、のちに臨床応用する場合に、患者の生体に危険を及ぼす影響が危惧される。これに対し、本研究で力学的刺激が有効であったことは、このような問題がなく有用性が高い。また、スキャフォールドは、生体内で毛細血管を誘導して組織構成細胞を招く、組織再生能を有すると考えられたことから、生体内で大きな組織の再建も可能となろう。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
我々の研究室にて開発された脱細胞化方法により、皮膚を脱細胞化し、毛根を含む頭皮の再生に関する研究がマスコミに取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-