角膜上皮細胞の生体外での未分化能維持の研究

文献情報

文献番号
200706023A
報告書区分
総括
研究課題名
角膜上皮細胞の生体外での未分化能維持の研究
課題番号
H18-再生-若手-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
川北 哲也(慶應義塾大学医学部眼科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 榛村 重人(慶應義塾大学医学部眼科学教室 )
  • 比嘉 一成(東京歯科大学眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
   角膜上皮細胞は、観察しやすいという利点もあり、幹細胞及びその微小環境(ニッチ)の研究において優れたモデルといえる。角膜上皮幹細胞の培養研究は、まだまだ不明な点が多く、今回申請する研究はマウス角膜上皮細胞を用いた研究である。この研究では、少数のマウス角膜上皮幹細胞から成体マウスの角膜を覆うだけの細胞数に、未分化性を保持したまま増殖させ、角膜の表現型に分化させる因子を解明すること、異常分化を認めればその機転を解明することを目的とする。
研究方法
   従来の輪部機能不全ウサギモデルでは、そのまま移植をするには、炎症が強くヒトでの遷延性角膜上皮欠損のモデルを反映しているとは考えがたい点、またウサギで角結膜を化学処理、上皮剥離しても、角膜上結膜進入の程度には個体差が大きかったことから、遷延性角膜上皮欠損のモデルとして、ステンレス製リングをウサギ角膜に移植し、中央部の上皮欠損が1カ月以上安定しているモデルを作成する
   またマウス角膜上皮細胞はRT-PCRで未分化マーカーの発現の確認、またこの上皮細胞は炎症性サイトカインの刺激(TGF-betaなど)よる異常分化の誘導、上皮間葉系移行との関係を調べる。また この細胞がどういうメカニズムで、K12, Pax6の発現を失ってしまったのかを調べるために、Pax6のベクターを、アデノウイルスを用いて導入し、K12の発現を確認する。
結果と考察
   遷延性角膜上皮欠損のモデルとして、ステンレス製リングをウサギ角膜に移植し、中央部の上皮欠損がすくなくとも1カ月は安定しているモデルを作成した。 
   マウス角膜上皮細胞はRT-PCRで未分化マーカーであるKlf-4, Oct3/4、ABCG2 の発現を認めたが、Nanogの発現は認めなかった。 またこの上皮細胞はTGF-betaなどにより一部alpha-SMA陽性の細胞に分化することがわかり、角膜上皮未分化細胞が炎症性サイトカインなどの刺激により上皮間葉系移行を起こした可能性が示唆された。 Pax6のベクターを、アデノウイルスを用いて導入したが、K12の発現はみられなかった。その後K12を発現するようになるかどうかをP80の細胞で検討したが、培養液にCa2+, FBSを添加にてK12の発現が1%未満に認められた。
結論
   角膜上皮未分化細胞が生体外で、炎症性サイトカインなどの刺激(TGF-betaなど)により上皮間葉系移行を起こすことが明らかになった。ステンレスリングの移植による遷延性角膜上皮欠損の動物モデルを作成した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-