移植医療の社会的基盤整備に関する研究

文献情報

文献番号
200706018A
報告書区分
総括
研究課題名
移植医療の社会的基盤整備に関する研究
課題番号
H17-再生-一般-020
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
島崎 修次(杏林大学 救急医学)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 芳裕(杏林大学 救急医学)
  • 田中 秀治(国士舘大学 体育学部 スポーツ医科学科 救急医学)
  • 横田 裕行(日本医科大学 救急医学)
  • 篠崎 尚史(東京歯科大学市川総合病院 角膜センター・アイバンク)
  • 大島 伸一(国立長寿医療センター)
  • 高橋 公太(新潟大学大学院 腎泌尿器病態学)
  • 鈴木 和雄(新都市クリニック 泌尿器科)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医療政策)
  • 藤田 民夫(名古屋記念病院 泌尿器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
35,904,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器移植においては国際的に確立された手法であるドナー・アクション・プログラム(DAP)によるデータ収集と医療機関ごとの臓器提供の意思が途絶する問題箇所の把握と修正、スペインでのTPMを参考に、日本の状況を考慮した教育プログラムの開発、効果検証を実施し、また、組織移植においては各組織を一元管理したネットワークシステムの確立を目的とする。
研究方法
改訂日本語版DAPの実施・その検証として救急現場での脳死判定、ドナーマネージメント研修を行った。脳死下での臓器提供を経験した医療機関での対応した医療従事者とそれ以外の者でのHASデータによる変化を比較し、臓器提供希望の有無が終末期医療において把握できていない、提供まで至っていない理由の解明をデータベースを元に実施した。医療機関情報、院内コーディネーター活動状況、ポテンシャル情報、提供・移植状況統計等を構築し、都道府県コーディネーターとのコメント欄を設けるなど更なる全国DAPデータベースの構築を図った。
結果と考察
臓器移植法制定以来の脳死下臓器提供者は、通算で60名を超えた程度である。この主たる原因は、世界と遜色のない国民の臓器提供の意思に反して、臓器移植待機患者数の過小認識や、臓器移植の成功率への理解不足、並びに、臓器提供に対するネガティブイメージが強く、脳死を人の死と理解していない割合も高く、解決に向けての直接的な医療現場での教育に加えて、医学教育、看護教育に死生教育や脳死判定、臓器移植や更には悲嘆ケアについての教育も必要であると考えられる。
結論
我が国に於ける臓器提供の基盤整備には、移植コーディネーターの基本的な教育システムを、脳死患者の発見、脳死判定、ドナーマネージメント、家族のグリーフケアと言った情報や手段を医療現場に密着して、提供する目的で実施する必要がある。また、これらの作業には、移植コーディネーターとして、医師・非医師が共同で行うことが、スペインの実績や、本研究で得られた福岡県、北海道等の事例からも有効であった。 最終年度には医師と看護師がペアで院内コーディネーターとして配備された都道府県を中心に、彼等の院内での活動が臓器提供システム構築に役立つよう、セミナーの実施や都道府県コーディネーターを管理・支援するツールとしてのデータベースを構築し実際の活動支援に利用するための問題点を検証した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200706018B
報告書区分
総合
研究課題名
移植医療の社会的基盤整備に関する研究
課題番号
H17-再生-一般-020
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
島崎 修次(杏林大学 救急医学)
研究分担者(所属機関)
  • 篠崎尚史(東京歯科大学市川総合病院 角膜センター・アイバンク)
  • 大島伸一(長寿医療センター)
  • 高橋公太(新潟大学大学院 腎泌尿器病態学)
  • 鈴木和雄(新都市クリニック 泌尿器科)
  • 長谷川友紀(東邦大学 医療政策)
  • 藤田民夫(名古屋記念病院 泌尿器科)
  • 北村惣一郎(国立循環器病センター)
  • 山口芳裕(杏林大学 救急医学)
  • 田中秀治(国士舘大学 体育学部 スポーツ医科学科 救急医学)
  • 横田裕行(日本医科大学 救急医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
移植医療の社会基盤整備を進めるために(1)臓器移植においては国際的に確立された手法であるドナ
ー・アクション・プログラム(DAP)をもとに、日本の状況を考慮した教育プログラムの開発、効果検証を実施し、また、(2)組織移植においては各組織を一元管理したネットワークシステムの確立を目的とした。
研究方法
改訂日本語版DAPの実施・その検証として救急現場での脳死判定、ドナーマネージメント研修を行った。脳死下での臓器提供を経験した医療機関での対応した医療従事者とそれ以外の者でのHASデータによる変化を比較し、臓器提供希望の有無が終末期医療において把握できていない、提供まで至っていない理由の解明をデータベースを元に実施した。都道府県コーディネーターとのコメント欄を設けるなど更なる全国DAPデータベースの構築を図った。組織移植においては、拠点となる2バンク間でのデータの共有を行い、バンクにおける一元管理システムの可能性について検討した。
結果と考察
臓器提供が少ないこの主たる原因は、世界と遜色のない国民の臓器提供の意思に反して、臓器移植待機患者数の過小認識や、臓器移植の成功率への理解不足、並びに、臓器提供に対するネガティブイメージが強く、脳死を人の死と理解していない割合も高く、解決に向けての直接的な医療現場での教育に加えて、医学教育、看護教育に死生教育や脳死判定、臓器移植や更には悲嘆ケアについての教育も必要であると考えられる。組織バンクで扱う情報は個人情報を多く含むものであり、より正確で、より安全性の高いデータ共有が必須条件のため、2拠点間でのデータ共有は情報の暗号化を行うことにより実現することができた。
結論
我が国に於ける臓器提供の基盤整備には、移植コーディネーターの基本的な教育システムを、脳死患者の発見、脳死判定、ドナーマネージメント、家族のグリーフケアと言った情報や手段を医療現場に密着して、提供する目的で実施する必要がある。また、これらの作業には、移植コーディネーターとして、医師・非医師が共同で行うことが、本研究の事例からも有効であった。 最終年度には臓器提供システム構築に役立つよう、セミナーの実施や都道府県コーディネーターを管理・支援するツールとしてのデータベースを構築し実際の活動支援に利用するための問題点を検証した。また組織バンクシステムを導入することにより、今後益々全国的な情報共有が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2008-06-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療機関におけるポテンシャルドナーの情報管理は、特に救急での患者搬入後から脳死の疑い、臨床的脳死判定、家族の承諾、法的脳死判定と進むが多くの医療機関ではプロトコルが準備されてなく臓器提供の意思が確認されていない。DAPの手法を用いることでどの段階で意思が活かされなくなるかが判明しさらにスペインのTPM教育を受けたコーディネーターが介在することで確実に臓器提供が増加することが確認された。
臨床的観点からの成果
慢性腎不全患者数も27万人を越え(‘08)、その医療費も膨大な額になり医療費の増加の一因となっている。特に腎移植では術後2年以降の医療費は削減され腎不全後早期に移植を受ける機会があれば生存率も向上し、渡航移植を受けるリスクも回避できると期待される。WHO、国際移植学会も渡航移植と臓器売買を非難する声明を出し世界的に自給自足を行うべきと明言している。移植医療の専門家として、移植コーディネーターの育成や医療機関に具体的な手法を導入するプロフェッショナルの存在が必要である。
ガイドライン等の開発
日本組織移植学会倫理指針、ヒト組織取り扱い指針、: WHO移植課チューリッヒ会議にて参考資料として使用(平成18年7月17日)
その他行政的観点からの成果
日本の臓器提供の低迷は、厳しい法律による部分とそれ以外の要素によるシステムエラーに大別できる。効果的な臓器提供の推進は、提供の意思を持つ国民の権利行使のために必要であり移植医療受ける患者の命、QOLに与える影響は大きい。普及啓発は必須であり、医療従事者の啓発も必要である。更に医療現場での確実なポテンシャルドナー情報の把握、環境整備の後、医療側の負担の少ない意思確認システムの構築が必要であり、スペインモデル(TPM)はWHOも推奨する効果的手法として、更に取り組むべきである。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
15件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
田中秀治、青木大、島崎修次
アログラフトとスキンバンク
日本外科学会雑誌 , 106 (12) , 755-759  (2005)
原著論文2
長谷川友紀,篠崎尚史,大島伸一
ドナーアクションプログラム
日本臨 , 63 (11) , 1873-1877  (2005)
原著論文3
篠崎尚史
欧州における臓器提供の現況と推進への取組みー日本の臓器提供数増加に向けてー.
移植 , 39 (2) , 145-162  (2004)
原著論文4
篠崎尚史
WHO国際会議報告-Ethics, access and safety in tissue and organ transplantation: Issues of global concern
移植 , 40 (4) , 225-233  (2005)
原著論文5
篠崎尚史
WHO 国際会議報告ⅡEthics, access and safety in tissue and organ transplantaion: Issues of global concern
移植 , 41 (2) , 107-123  (2006)
原著論文6
浅水健志.篠崎尚史
公的な臓器斡旋システム-欧米と日本の比較
綜合臨床 , 55 (8) , 2086-2091  (2006)
原著論文7
田中秀治、篠崎尚史、浅水健志、青木大、中谷武嗣
組織移植の現状と今後の展望
移植 , 42 (3) , 242-251  (2007)
原著論文8
高橋公太
腎移植の現況と将来の展望(総説)
新潟県医師会報 , 672 , 14-  (2006)
原著論文9
高橋公太
臓器移植の現状と展望
外科治療.腎移植 , 94 , 13-19  (2006)
原著論文10
小野 元、橋本卓雄、秋山政人、高橋公太
聖マリアンナ医科大学におけるドナーアクションの試み
今日の移植 , 20 (3) , 205-210  (2007)
原著論文11
吉開俊一,山本小奈美,飼野千恵美,土方保和
救急医療における心停止下腎臓提供症例の開発
今日の移植 , 20 (4) , 349-354  (2007)
原著論文12
吉開俊一,山本小奈美,岩田誠司,飼野千恵美,土方保和
死戦期の不良条件にもかかわらず移植腎機能良好であった心停止下腎提供2症例の解析
移植 , 42 (4) , 359-362  (2007)
原著論文13
吉開俊一,増田勉
心停止後腎臓移植ドナー10例の解析と献腎の実際
脳神経外科ジャーナル , 16 (9) , 706-710  (2007)
原著論文14
吉野茂,小野元,亀井克之
臓器移植から見る病院のリスクマネジメント
日本リスクマネジメント学会学会誌  (2008)
原著論文15
吉野茂,小野元,秋山政人,高橋公太
臓器提供体制の構築に関わる病院内リスクマネジメント
移植  (2008)
原著論文16
大島伸一
移植医の立場から.臓器移植の増加へのプロセス-臓器提供を増やすには-
高橋公太編集、腎移植連絡協議会からの提言 , 23-29  (2006)
原著論文17
篠崎尚史
アイバンク関係の立場から.臓器移植の増加へのプロセス-臓器提供を増やすには-
高橋公太編集、腎移植連絡協議会からの提言 , 55-63  (2006)
原著論文18
長谷川友紀
総合討論.臓器移植の増加へのプロセス-臓器提供を増やすには-
高橋公太編集 腎移植連絡協議会からの提言 , 65-70  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-