文献情報
文献番号
199700296A
報告書区分
総括
研究課題名
医療施設の療養環境向上と職員配置に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
河口 豊(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 健康政策調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
良質な医療を提供するために、病院における患者の施設環境と職員の配置の見直しが大きな課題となっている。そこで欧米諸国の現状を捉え、また病室・病棟内の動きなどから病室の広さや病室・病棟の仕様を検討し、今後の我が国における療養環境の向上と職員配置の指針を得ることを目的とする。
研究方法
(1)海外施設環境・職員配置調査のため、次の研究協力者で研究組織を構成し、米国・英国・独国・仏国を主対象として、(A)病床の定義、(B)病室の面積、(C)看護職員等の配置について、各国の法規・ガイドライン等の基準を文献・既存資料及び担当者等に対する調査を行った。五代正哉(清水建設)、小室克夫(聖路加国際病院)、寺崎 仁(日本大学)、松田晋也(産業医科大学)、村松尚子(イリノイ大学)。(2)国立医療・病院管理研究所等で行った全国的既存調査から我が国の実態把握、及びOECD資料、各国統計資料から諸外国の現状を把握した。(3)病室面積の評価については、処置・看護等の日常業務を試作の病室でシミュレーションし、広さを検討した。(4)施設環境評価は医療・福祉に関する建築を調査・研究している次の研究協力者が、それまでの調査結果をもとに討議を重ね策定した。井上由起子(横浜国立大学)、今井正次(三重大学)、筧 淳夫(国立医療・病院管理研)、古賀紀江(前橋工科大学)、竹宮健司(東京都立大学)、辻 吉隆(国立医療・病院管理研)、外山 義(東北大学)、中山茂樹(千葉大学)。
結果と考察
(1)海外に関する調査によって以下の点が明らかになった。(A)病床の種類と定義について、米国は連邦による定義はない。州でも病床の定義をしているのは調査した代表的な4州の内、カリフォルニア州のみであり、一般急性期病床、中間ケア病床、専門的ケア病床、急性期精神治療病床が定義されている。ミシガン州、ニュージャージー州、テキサス州では病床としての定義はなく、一般病院、専門病院、精神病院などが定義されているのみである。しかし、AHA(米国病院協会)の統計でも一般病床は急性期(平均在院日数30日以下)と定義づけられており、米国では一般病床はすなわち急性期病床である。英国は、一般病床、高齢者病床、産科病床、新生児病床、末期病床、精神病床に分かれている。独国は、病床の定義はない。病院については10床以上の病床をもち、短期ケアのみ受け持つと定義される。リハビリテーション、長期ケアは別の施設である。仏国は、急性期病床、中期病床、長期病床、精神病床、リハビリテーション病床がある。4カ国では急性期病床は独立して定められており、OECD諸国でも当初から分離されていたわけではないが、近年になり別れた国も少なくない。統計でも急性期病床として計上されていないのは、日本以外には少ない。その平均在院日数は5日から13日位である。日本でも急性期病床を独立させれば10日前後が考えられる。(B)病室面積については、米国は、連邦による基準はない。しかし、AIA(米国建築家アカデミイー協会) による「Guidelines for Design and Construction of Hospital and Health care Facilities」 が基本となり、各州はこれを参考に基準を定めている。英国は、法的基準はない。しかし、NHS(保健省)の助言書である「Health Building Note 04」に成人一般病床面積が示されている。独国は、法的基準はない。ガイドラインとしての施設基準があり、病院建設資金の補助の許可基準となっている。仏国は、法的基準はない。公的地域中央病院に示された基準があり、また民間病院に対する医療保険上のクラス分け基準がある。4カ国では、個室で9~24平米、多床室(英国を除き4床まで、米国の新築は2床まで)で7.4~11平米/床と国による差はかなりあるが、日本のように個室で6.3平米、一般多床
室で4.3平米/床以上のように、4カ国の2分の1以下と極端に狭い国はない。現在診療報酬上の療養環境加算病室の8平米/床以上が必要なことは面積評価シミュレーションでも明らかであり、また4カ国の水準に並ぶ。ただし、日本では付属便所の面積も算入するが、便所を除いて8平米/床確保することが望ましい。(C)看護職員の配置について、米国は連邦による規定はない。州においても数を示すことはなく、配置計画を作成する、患者の重症度に基づいて決定するなどで、婦長は看護教育者と看護管理者の資格を求めている州もある。第三者評価を受けるのが前提となっている。英国は、法及びガイドラインを含めてない。しかし、質の保証については院内評価委員会による評価とその報告及び公開をもって担保としている。独国は、96年末の時点で看護要員令の廃止に向けた法案が提出されていた。仏国は、法的基準はなく、民間病院に対する医療保険上のクラス分けの基準がある。4カ国では急性期病床については看護職員の数的配置基準はみられない。むしろ患者の状態に合わせて病院の看護管理、経営的工夫で柔軟に対応できるような法やガイドラインの構造である。ただし、米国における第三者評価の義務づけ、英国における自己評価の報告義務と公開などのチェックがある。もともと公的及び宗教団体等の病院が多い欧州では外からのチェックという発想がなかったが、情報公開、民営化、国民医療費負担の増大などから病院の公開性が進められている。(2)我が国と欧米諸国の傾向についての考察を行った結果、(A)共通点として、急性期病床数の減少、平均在院日数の減少、病床当たりの職員数の増加がみられた。(B)米国一般病院において長期療養ケア病床の増加がみられた。多くは、急性期病棟の転換思われるが、専門看護ケア病棟をつくり専門的継続看護を行っている。1983年からの10年間で約2倍になった。(C)英国における長期入院施設の解体がみられた。大規模精神病院は患者の早期退院、地域ケアの促進が進められ、空床を高齢入院患者に利用していた。しかし、トラスト制度により小規模急性期精神入院施設とナーシングホーム等にし、地域に分散させた。(D)仏国では、高齢者の増加とともに、施設を急性期病床重点から高齢者施設へと比重を移し施設転換を進める計画がある。(E)日本では、早期退院に向けての動きがみられる。退院調整専門看護婦などを導入して、早期退院を目指す動きが活発である。クリティカルパスの導入も盛んになりつつある。(3)病室面積の評価を試作病室における処置・看護等作業行動からシミュレーション行った結果、8.0 平米/床では救急蘇生やストレッチャー移動にともなう隣接病床や対向病床の領域へ若干侵食することを除けば、他は自己の領域と公的空間で行為を行うことができることが明らかになった。(4)病室及び病棟内、さらに病院内における入院患者の生活行動から見た施設環境評価を行いその指針を策定した。入院患者の生活を医療を受けるときも含めて、既存の調査資料を駆使してトレースし、病床上、病室内、生活諸室である食堂・談話室、便所など病棟全体、さらに診療部門での検査等の受診の場も含めて作成した。評価軸は次の11である。0.基本事項1.医療行為の保証2.基本的生活行為の保証3.安全性の確保4.プライバシーへの配慮5.交流への配慮6.環境工学的性能7.情報への配慮8.心の安らぎへの配慮9.身体機能低下への配慮10.各種設備・備品の性能、これら評価軸に従い評価項目を定めかつその場を示し、評価項目を満たすための建築・設備対応方策の具体例を挙げて、参考できるようにした。日本の病院開設者は施設的整備を行うに当たり、今後の病院として有用であるための整備項目とその程度を求めており、質の水準について指針を示す必要があると考える。
室で4.3平米/床以上のように、4カ国の2分の1以下と極端に狭い国はない。現在診療報酬上の療養環境加算病室の8平米/床以上が必要なことは面積評価シミュレーションでも明らかであり、また4カ国の水準に並ぶ。ただし、日本では付属便所の面積も算入するが、便所を除いて8平米/床確保することが望ましい。(C)看護職員の配置について、米国は連邦による規定はない。州においても数を示すことはなく、配置計画を作成する、患者の重症度に基づいて決定するなどで、婦長は看護教育者と看護管理者の資格を求めている州もある。第三者評価を受けるのが前提となっている。英国は、法及びガイドラインを含めてない。しかし、質の保証については院内評価委員会による評価とその報告及び公開をもって担保としている。独国は、96年末の時点で看護要員令の廃止に向けた法案が提出されていた。仏国は、法的基準はなく、民間病院に対する医療保険上のクラス分けの基準がある。4カ国では急性期病床については看護職員の数的配置基準はみられない。むしろ患者の状態に合わせて病院の看護管理、経営的工夫で柔軟に対応できるような法やガイドラインの構造である。ただし、米国における第三者評価の義務づけ、英国における自己評価の報告義務と公開などのチェックがある。もともと公的及び宗教団体等の病院が多い欧州では外からのチェックという発想がなかったが、情報公開、民営化、国民医療費負担の増大などから病院の公開性が進められている。(2)我が国と欧米諸国の傾向についての考察を行った結果、(A)共通点として、急性期病床数の減少、平均在院日数の減少、病床当たりの職員数の増加がみられた。(B)米国一般病院において長期療養ケア病床の増加がみられた。多くは、急性期病棟の転換思われるが、専門看護ケア病棟をつくり専門的継続看護を行っている。1983年からの10年間で約2倍になった。(C)英国における長期入院施設の解体がみられた。大規模精神病院は患者の早期退院、地域ケアの促進が進められ、空床を高齢入院患者に利用していた。しかし、トラスト制度により小規模急性期精神入院施設とナーシングホーム等にし、地域に分散させた。(D)仏国では、高齢者の増加とともに、施設を急性期病床重点から高齢者施設へと比重を移し施設転換を進める計画がある。(E)日本では、早期退院に向けての動きがみられる。退院調整専門看護婦などを導入して、早期退院を目指す動きが活発である。クリティカルパスの導入も盛んになりつつある。(3)病室面積の評価を試作病室における処置・看護等作業行動からシミュレーション行った結果、8.0 平米/床では救急蘇生やストレッチャー移動にともなう隣接病床や対向病床の領域へ若干侵食することを除けば、他は自己の領域と公的空間で行為を行うことができることが明らかになった。(4)病室及び病棟内、さらに病院内における入院患者の生活行動から見た施設環境評価を行いその指針を策定した。入院患者の生活を医療を受けるときも含めて、既存の調査資料を駆使してトレースし、病床上、病室内、生活諸室である食堂・談話室、便所など病棟全体、さらに診療部門での検査等の受診の場も含めて作成した。評価軸は次の11である。0.基本事項1.医療行為の保証2.基本的生活行為の保証3.安全性の確保4.プライバシーへの配慮5.交流への配慮6.環境工学的性能7.情報への配慮8.心の安らぎへの配慮9.身体機能低下への配慮10.各種設備・備品の性能、これら評価軸に従い評価項目を定めかつその場を示し、評価項目を満たすための建築・設備対応方策の具体例を挙げて、参考できるようにした。日本の病院開設者は施設的整備を行うに当たり、今後の病院として有用であるための整備項目とその程度を求めており、質の水準について指針を示す必要があると考える。
結論
日本の病院について、欧米諸国と比較しながら病床の定義、病室面積、看護職員配置を検討した。その結果、日本でも急性期病床を独立させることが有用であると考えられた。そのためには急性・慢性等それぞれにあった施設環境と職員配置の考え方を示すことが重要であり、今後の課題として特に第3者
あるいは自己評価の公開などの手法開発が必要であることが分かった。
あるいは自己評価の公開などの手法開発が必要であることが分かった。
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