「骨髄、末梢血等を利用した効率的な造血細胞移植の運用・登録と臨床試験体制の確立並びにドナー及びレシピエントの安全確保とQOL向上に関する研究」

文献情報

文献番号
200706013A
報告書区分
総括
研究課題名
「骨髄、末梢血等を利用した効率的な造血細胞移植の運用・登録と臨床試験体制の確立並びにドナー及びレシピエントの安全確保とQOL向上に関する研究」
課題番号
H17-再生-一般-015
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小寺 良尚(名古屋第一赤十字病院輸血部、造血細胞移植センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 律朗(名古屋大学 医学部)
  • 岡本 真一郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 原田 実根(九州大学大学院医学研究院 )
  • 一戸 辰夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学)
  • 赤塚 美樹(愛知県がんセンター 研究所)
  • 小川 誠司(東京大学医学部附属病院 )
  • 池原 進(関西医科大学 医学部)
  • 森島 泰雄(愛知県がんセンター 中央病院 )
  • 笹月 健彦(国立国際医療センター 研究所)
  • 猪子 英俊(東海大学 医学部)
  • 屋部 登志雄(東京都赤十字血液センター)
  • 村田 誠(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 加藤 俊一(東海大学 医学部)
  • 秋山 秀樹(東京都立駒込病院)
  • 土田 昌宏(茨城県立こども病院)
  • 鎌田 薫(早稲田大学大学院 法務研究科 )
  • 谷本 光音(岡山大学 医学部)
  • 中尾 康夫(札幌北楡病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
44,879,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各種造血細胞移植を患者・ドナーの安全・QOLを担保しつつ発展させ、わが国発の新知見を形成してゆくことを目的とした。
研究方法
20にわたる分担研究課題を設定し、日本造血細胞移植学会、骨髄移植推進財団と共同で研究を進めた。
結果と考察
1)アジア10カ国がアジア造血細胞移植登録機構(ABMTR)を発足させ、7カ国から初期登録データを得、全ての国で造血細胞移植医療がなお増加の一途を辿っていることを明らかにした。北米造血細胞移植登録機構(CIBMTR)、欧州造血細胞移植登録機構(EBMTR)、ABMTR共通の登録様式を定める作業を継続し、世界登録機構(WBMT)を発足させた。当研究班・日本造血細胞移植学会共同作業の結果から、造血幹細胞ドナーの安全性を高次元で担保する必要性が国際的にも認識され、World Marrow Donor Associationの正規業務となった。これらはこの分野のGlobalizationに貢献するものである。2)わが国の造血細胞移植症例登録一元化プログラムに基づく登録がなされ、登録参加施設数が増加した。これにより各種造血幹細胞移植の正確な相互比較が可能になろう。3)中国骨髄バンクとの正式提携が調印された。4)血縁末梢血幹細胞ドナーの5年間に渡る急性期、7年間にわたる中長期有害事象の結果をまとめ、骨髄ドナーと比較することにより、末梢血幹細胞採取がドナー適格基準を守る限りにおいて安全であること、非血縁ドナーへも適用可能であることを示した。5)免疫寛容の関係にある血縁者間のHLA2座以上不適合移植の結果は受容しうるものであることを示した。6)幹細胞ドナー由来活性化CD4細胞による移植後ウイルス感染症の治療が有用であることを示した。7)抗原特異的T細胞による移植後再発白血病治療を可能にするマイナー抗原を更に同定した。8)骨髄内骨髄移植法を国内でヒトにおいて実施し(自家移植、臍帯血移植)、生着が得られることを確認した。9)骨髄バンクドナー・レシピエントの保存ペアリンパ球を解析し、非血縁ドナー選択アルゴリズムを更に進化させた。10)血縁ドナー全件事前登録制度を、日本造血細胞移植学会を母体として継続した。11)小児血縁ドナー向け説明書を策定した。
結論
造血幹細胞移植療法は、これらの研究の結果確実に普及、成績向上を見ているが、尚わが国の潜在需要の50%を満たすに過ぎず、更なる研究継続が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200706013B
報告書区分
総合
研究課題名
「骨髄、末梢血等を利用した効率的な造血細胞移植の運用・登録と臨床試験体制の確立並びにドナー及びレシピエントの安全確保とQOL向上に関する研究」
課題番号
H17-再生-一般-015
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小寺 良尚(名古屋第一赤十字病院輸血部、造血細胞移植センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 律朗(名古屋大学医学部造血細胞移植情報管理学)
  • 岡本 真一郎(慶應義塾大学医学部血液内科)
  • 原田 実根(九州大学大学院医学研究院血液内科)
  • 一戸 辰夫(京都大学大学院医学研究科血液・腫瘍内科学)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学発達病態小児科学細胞治療センター)
  • 赤塚 美樹(愛知県がんセンター研究所腫瘍免疫部)
  • 小川 誠司(東京大学医学部附属病院血液内科学)
  • 池原 進(関西医科大学病理学第一講座 )
  • 森島 泰雄(愛知県がんセンター中央病院血液・細胞療法部)
  • 笹月 健彦(国立国際医療センター研究所)
  • 猪子 英俊(東海大学医学部分子遺伝学)
  • 屋部 登志雄(東京都赤十字血液センター製剤部製剤二課)
  • 村田 誠(名古屋大学医学部附属病院血液内科学)
  • 加藤 俊一(東海大学医学部基盤診療学系)
  • 秋山 秀樹(東京都立駒込病院血液内科)
  • 土田 昌宏(茨城県立こども病院小児科学)
  • 鎌田 薫(早稲田大学大学院法務研究科民法学 )
  • 谷本 光音(岡山大学医学部血液・腫瘍呼吸器内科)
  • 中尾 康夫(札幌北楡病院麻酔科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各種造血細胞移植を患者・ドナーの安全・QOLを担保しつつ発展させ、わが国発の新知見を形成してゆくことを目的とした。
研究方法
20にわたる分担研究課題を設定し、日本造血細胞移植学会、骨髄移植推進財団と共同で研究を進めた。
結果と考察
1.日本造血細胞移植学会と共同で実施した、血縁造血幹細胞ドナー事前登録制、同種末梢血幹細胞ドナーの安全性に関わる8年間の情報蓄積が国際的にも評価されるようになり、アジア規模、世界規模で造血細胞移植患者・ドナーの登録機構が構築されようとしている。2.造血細胞移植患者の登録システムの一元化とその運用方法に関する研究では、各種造血幹細胞移植患者データ登録が従前以上に高まった。3.HLA不適合造血幹細胞移植の臨床試験体制の確立と適正運用に関する研究では、母児間免疫寛容状態にある血縁間の移植がサルベージ療法になりうることを示した。4.活性化CD-4によるDLIのための臨床試験体制の確立と実施に関する研究では、同法がヒトにおいて安全に行いうること、移植後難治ウイルス感染に効果があることを示した。5.マイナー抗原特異的T細胞によるDLIのための臨床試験体制の確立と実施に関する研究では、臨床上有用となりうる白血病細胞上のマイナー抗原を複数同定し特許を取得した。6.造血幹細胞移植における組織適合性抗原の関与に関する研究、7.HLA-DNAタイピングの意義に関する研究、8.ゲノムワイドな組織適合遺伝子の検索に関する研究、9.造血幹細胞移植におけるNK細胞受容体およびサイトカイン遺伝子多型の影響に関する研究、10.SNP解析を用いた移植後合併症関連遺伝子の同定とその臨床応用に関する研究、においては、骨髄バンクに蓄積された患者・ドナー検体を系統的に解析し、HLA情報をC座抗原を中心として更に深化させ、非血縁骨髄移植におけるドナー選択とGVHD予防法選択の指針を策定した。11.造血幹細胞骨髄内直接移植法の臨床試験体制の確立と実施に関する研究では、霊長類における実験を経てヒトにおける臨床試験を開始した。12.患者とドナーにおける移植・採取後のQOLに関する一連の研究では、今までともすれば忘れられがちであった血縁ドナーの権利擁護に関しても、他の臓器移植分野に先駆けて擁護システムを構築しつつある。
結論
造血幹細胞移植療法は、これらの研究の結果確実に普及、成績向上を見ているが、尚わが国の潜在需要の50%を満たすに過ぎず、更なる研究継続が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HLA不適合造血幹細胞移植の臨床試験体制の確立と適正運用に関する研究では、母児間免疫寛容状態にある血縁間の移植がサルベージ療法になりうることを示した。活性化CD-4によるDLIのための臨床試験体制の確立と実施に関する研究では、同法がヒトにおいて安全に行いうること、移植後難治ウイルス感染に効果があることを示した。造血幹細胞骨髄内直接移植法の臨床試験体制の確立と実施に関する研究では、霊長類における実験を経てヒトにおける臨床試験を開始した。
臨床的観点からの成果
骨髄バンクに蓄積された患者・ドナー検体を系統的に解析し、HLA情報を、C座抗原を中心として更に深化させ、非血縁骨髄移植におけるドナー選択とGVHD予防法選択の指針を策定した。血縁者間同種末梢血幹細胞移植の成績が骨髄移植のそれと等しいことを示した。
ガイドライン等の開発
日本造血細胞移植学会と共同で実施し、ドナーの安全性に関わる8年間の情報蓄積が国際的にも評価され、世界規模で造血細胞移植患者・ドナーの登録機構が構築されようとしている。国内造血細胞移植患者一元登録システムの構築:これも日本造血細胞移植学会と共同で実施し、各種造血幹細胞移植患者データ登録が従前以上に高まった。小児ドナーのための説明書の策定:今までともすれば忘れられがちであった血縁ドナー特に小児の権利擁護に関する説明書を作成した。
その他行政的観点からの成果
血縁者間同種末梢血幹細胞採取法の安全性を確認し、非血縁者間同種末梢血幹細胞採取・移植実施に向けて厚生科学審議会へ答申を行った。
その他のインパクト
平成17,18,19年度ともに、本研究班と関連4班との合同公開シンポジウムを首都圏において開催した。同種末梢血幹細胞採取・移植に関し、厚生労働科学審議会(平成20年3月)への答申結果はマスメディア(朝日新聞)紙上に掲載された。アジア各国の移植症例登録システムを確立し、それを背景に移植症例国際登録システムの創設に参加している。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
140件
骨髄バンクドナー・レシピエントのペア保存リンパ球検体を用いC座抗原適合が移植成績を向上させることと、そのメカニズムを明らかにした、国際的評価の高い成果である。
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
10件
HLA不適合移植、骨髄内造血幹細胞移植の領域で成果が見られる。
学会発表(国内学会)
95件
学会発表(国際学会等)
64件
ドナー安全に関する国際的にも先駆的システムが評価を受けた。患者、ドナーの国際登録機構に関する進展が見られる。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計10件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
5件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
T Kawase,Y Morishima,Y Kodera,T, et al
High–risk HLA allele mismatch combinations responsible for severe acute graft-versus –host disease
Blood  , 110 (7) , 2235-2241  (2007)
原著論文2
Toshio Yabe, Keitaro Matsuo,Yoshihisa Kodera,and, et al
 Donor killer Immunoglobulin-Like Receptor(KIR)Genotype-Patient Cognate KIR Ligand Combination
 Blood and Marrow Transplantation , 14 , 75-87  (2007)
原著論文3
Hiroto Narimatsu, Makoto Murata, Seitaro Terakura, et al
Potential Role of a Mismatched HLA-Specific CTL Clone Developed Pre-Transplant in Graft Rejection
Blood and Marrow Transplantation , 1-6  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-