臍帯血を用いる造血幹細胞移植技術の高度化と安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
200706012A
報告書区分
総括
研究課題名
臍帯血を用いる造血幹細胞移植技術の高度化と安全性確保に関する研究
課題番号
H17-再生-一般-014
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 俊一(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 潔(東海大学 医学部)
  • 高橋 恒夫(東京大学 医科学研究所)
  • 東 英一(三重大学 医学部)
  • 高梨 美乃子(東京都赤十字血液センター)
  • 磯山 恵一(昭和大学藤ヶ丘病院)
  • 甲斐 俊朗(兵庫医科大学)
  • 加藤 剛二(名古屋第一赤十字病院)
  • 坂巻 壽(東京都立駒込病院)
  • 高橋 聡(東京大学医科学研究所)
  • 谷口 修一(虎の門病院)
  • 中林 正雄(愛育病院)
  • 熱田 由子(名古屋大学 医学部)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
41,055,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臍帯血移植は骨髄移植、末梢血幹細胞移植に次ぐ第3の造血幹細胞移植として近年急速に実施数が増加している。本研究班では臍帯血採取から分離、保存、移植の実施、移植後の報告にいたるまでの全過程を系統的に検証し、移植療法としての高度化に取り組むと同時に、安全性確保のための方策を策定することを目的とした。
研究方法
1.臍帯血採取法の改良としてカンガルーケア法の普及のための活動を行った。
2.臍帯血幹細胞の品質評価のためにバンク間での検査法のバリデーションが行われた。
3.移植患者におけるHLA抗体の有無と特異性を検査した。
4.移植ペアにおけるHLAアリルの4桁検査を促進した。
5.開発研究として麻疹DCワクチン、臍帯血骨髄内移植、臍帯血・胎盤の再生医療への応用について検討した。
6.臨床研究として、複数臍帯血移植、成人臍帯血移植、小児臍帯血移植の多施設共同研究を推進した。
7.わが国における非血縁者間臍帯血移植の成績について解析が進められた。
8.臍帯血の医薬品化についてアドバイサリー委員会を形成して検討した。
結果と考察
1.全国11の臍帯血バンクにおいて講習会などを通じて、普及啓発が図られた。
2.臍帯血幹細胞の品質評価法の標準化が図られた。
3.移植患者において移植される臍帯血と交差反応するHLA抗体が存在すると、生着不全の率が高くなる可能性が示唆された。
4.患者と臍帯血間でのHLA適合度が生着、GVHD、白血病の再発、生存などに与える影響が明らかにされた。
5.麻疹DCワクチンの第一相試験が施設内倫理委員会の承認を受けて開始されることになった。
6.複数臍帯血移植の臨床研究が順調に進捗し、70例の目標に対して46例が登録されている。
7.わが国における非血縁者間臍帯血移植の成績が解析され、臍帯血移植の特徴が明らかにされた。
8.臍帯血の医薬品化についてのアドバイサリー委員会による中間まとめを厚生科学審議会において報告した。
結論
本研究班の共同あるいは分担研究により、臍帯血移植は骨髄移植と並んで非血縁者間造血幹細胞移植の両輪として重要な役割を演じていることが明らかにされた。また、その安全性の確保と成績向上のために採取量の増加、品質評価法の標準化、移植方法の改良などについてそれぞれの分担研究が着実に成果をあげることができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200706012B
報告書区分
総合
研究課題名
臍帯血を用いる造血幹細胞移植技術の高度化と安全性確保に関する研究
課題番号
H17-再生-一般-014
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 俊一(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 東 英一(三重大学 医学部)
  • 熱田 由子(名古屋大学 医学部)
  • 安藤 潔(東海大学 医学部)
  • 磯山 恵一(昭和大学藤ヶ丘病院)
  • 甲斐 俊朗(兵庫医科大学)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学 医学部)
  • 坂巻 壽(東京都立駒込病院)
  • 高梨 美乃子(東京都赤十字血液センター)
  • 高橋 聡(東京大学医科学研究所)
  • 高橋 恒夫(東京大学医科学研究所)
  • 谷口 修一(虎の門病院)
  • 中林 正雄(愛育病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臍帯血移植は骨髄移植、末梢血幹細胞移植に次ぐ第3の造血幹細胞移植として近年急速に実施数が増加している。本研究班では臍帯血採取から分離、保存、移植の実施、移植後の報告にいたるまでの全過程を系統的に検証し、移植療法としての高度化に取り組むと同時に、安全性確保のための方策を策定することを目的とした。
研究方法
1.臍帯血採取量を増加させるための方法を検討した。
2.臍帯血幹細胞の品質評価のためにバンク間での検査法のバリデーションを行った。
3.移植患者におけるHLA抗体の有無と特異性を検査した。
4.移植ペアにおけるHLAアリルの4桁での同定を推進した。
5.開発研究として麻疹DCワクチン、臍帯血骨髄内移植、臍帯血・胎盤の再生医療への応用について検討した。
6.臨床研究として、複数臍帯血移植、成人臍帯血移植、小児臍帯血移植の多施設共同研究を推進した。
7.わが国における非血縁者間臍帯血移植の成績について解析が進められた。
8.臍帯血の医薬品化についてアドバイサリー委員会を形成して検討した。
結果と考察
1.採取方法としてカンガルーケアが優れていることが判明し、普及啓発が行われた。
2.臍帯血幹細胞の品質評価法の標準化が推進された。
3.移植患者において移植される臍帯血と交差反応するHLA抗体が存在すると、生着不全の率が高くなることが判明した。
4.患者と臍帯血間でのHLA適合度が生着、GVHD、白血病の再発、生存などに与える影響が明らかにされた。
5.麻疹DCワクチンの第一相試験が施設内倫理委員会の承認を受けて開始されることになった。
6.複数臍帯血移植の臨床研究が順調に進捗し、70例の目標に対して46例が登録されている。
7.わが国における非血縁者間臍帯血移植の成績が解析され、臍帯血移植の特徴が明らかにされた。
8.臍帯血の医薬品化についてのアドバイサリー委員会による中間まとめを厚生科学審議会造血幹細胞移植委員会において報告した。
結論
3年間にわたる本研究班の共同あるいは分担研究により、臍帯血移植は骨髄移植と並んで非血縁者間造血幹細胞移植の両輪として重要な役割を演じていることが明らかにされた。また、その安全性の確保と成績向上のために採取量の増加、品質評価法の標準化、移植方法の改良などについてそれぞれの分担研究が着実に成果をあげることができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.骨髄内移植法を利用してマウス内でヒト造血微少環境を再構築し、ヒト造血幹細胞のクローンレベルでの動態を解析するアッセイを開発した。
2.麻疹ワクチンを用いた麻疹ウイルスに対する臨床応用可能な樹状細胞(DC)ワクチンを作成してその効果をin vitroで確認した。
3.胎盤の胎児側、母体側それぞれから絨毛組織を切り出し、Explant法で間葉系幹細胞を分離•培養する方法を確立した。胎盤絨毛から得られた間葉系細胞は骨髄や脂肪組織から得られる間葉系細胞と同じ表面マーカーを示した。
臨床的観点からの成果
1.わが国において実施された非血縁者間臍帯血移植の成績を解析した。
2.非腫瘍性疾患においてはHLAの一致度と移植細胞数が移植成績と相関していた。
3.腫瘍性疾患においては、疾患の種類、患者の年齢などによりHLAの一致度や細胞数の影響は異なっていた。
4.移植時にHLA抗体が存在し、移植される臍帯血と反応する場合には、生着と生存に対して悪影響することが示唆された。
5.急性、慢性GVHDはHLAの不適合抗原数と相関して重症化する傾向が示された。
ガイドライン等の開発
現行の薬事法下において臍帯血の医薬品化が可能かどうかを検討し、平成20年3月7日の厚生科学審議会に報告した。
1.「医薬品」であると否とに関わらず、臍帯血の品質向上と安全性の確保は必要である。
2.品質向上のためには製法・規格試験の統一、検査機関の集中・共用などを行う必要がある。
3.安全性確保のためには、検査精度の向上、記録保存と追跡調査などの管理体制強化が必要である。
4.現在の臍帯血バンクをGTPレベルで運用する「移行期」を経過して、将来的にはGMPレベルを目指すことが望ましい。
その他行政的観点からの成果
日本さい帯血バンクネットワークの事業に関連した研究を行った。
1.臍帯血の採取方法としてカンガルーケア法が優れていることを明らかにし、臍帯血採取病院における医師や助産師を対象とした研修会を開催して、普及啓発を行った。
2.臍帯血の品質評価法としてのCD34陽性細胞数やコロニー形成試験法などを、国内のバンク間で比較検討した。
3.移植ペアにおいて4桁アリルレベルでのHLAタイピングを推進した。
その他のインパクト
国が指導する事業である臍帯血バンク事業は骨髄バンク事業とともに社会の関心が高く、数多くマスコミに取り上げられた。また、関連する研究班と合同で毎年1回公開シンポジウムを開催し、研究の成果を迅速に社会に還元することに努めた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
18件
主任研究者と分担研究者による原著論文で本研究費による論文の合計
その他論文(和文)
6件
主任研究者のみの数
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
主任研究者のみの数
学会発表(国際学会等)
11件
主任研究者のみの数
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
臍帯血の医薬品化
その他成果(普及・啓発活動)
1件
臍帯血採取法の改良と普及

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ando K, Kato S, et al.
Direct evidence for ex vivo expansion of human hemato- poietic stem cells.
Blood , 107 , 3371-3377  (2006)
原著論文2
Muguruma Y, Kato S, Ando K et al.
Reconstitution of the functional human hematopoietic microenviron- ment derived from human mesenchyma stem cells in the murine bone marrowcompartment.
Blood , 107 , 1878-1887  (2006)
原著論文3
Yahata T, Kato S, Ando K, et al.
Clonal analysis of thymus-repopula- ting cells presents direct evidence for self-renewal division of human hematopoietic stem cells.
Blood , 108 , 2446-2454  (2006)
原著論文4
Kametani Y, Kato S, Ando K, et al.
Development of human-human hybridoma from anti-Her-2 peptide producing B cells in the immunized NOG mouse.
Exp Hematol. , 34 , 1240-1248  (2006)
原著論文5
Masuda H, Kato S, et al.
Estrogen- mediated endothelial progenitor cell biology and kinetics for physio- logical postnatal vasculogenesis.
Circ Res. , 101 , 598-606  (2007)
原著論文6
Nakamura Y, Ando K, Kato S, et al.
Angiopoietin-1 supports induction of hematopoietic activity in human CD34- bone marrow cells.
Exp Hematol. , 35 , 1872-1883  (2007)
原著論文7
Hirayama M. Azuma E, et al.
Dis- crimination of acute graft-versus- host disease from infections by enumeration of peripheral blood IFN-g spot-forming cells.
Transplantation , 81 , 632-635  (2006)
原著論文8
Hirayama M, Azuma E, et al.
Evidence of graft-versus-tumor effect in refractory metastatic neuroblastoma.
Transplantation , 82 , 142-144  (2006)
原著論文9
Nashida Y,Kumamoto K, Azuma E, et al.
Development of a dendritic cell vaccine against measles for patients following hematopoietic cell transplantation.
Transplantation , 82 , 1104-1107  (2006)
原著論文10
Ishiguro H, Kato S, et al.
Gonadal shielding to irradiation is effective in protecting testicular growth and function in long-term survivors of bone marrow transplantation during childhood or adolescence.
Bone Marrow Transplant , 39 , 483-490  (2007)
原著論文11
Zhang X, Takahashi T, et al.
Successful immortalization of mesenchymal progenitor cells derived from human placenta and the differentiation abilities of immortalized cells.
Biochem Biophys Res Commun , 351 , 853-859  (2006)
原著論文12
Zhang X, Takahashi T, et al.
Mesencyhmal progenitor cells from chorionic villi of human placenta for cartilage tissue engineering.
Biochem Biophys Res Commun , 340 , 944-952  (2006)
原著論文13
Okada H, Takahashi T, et al.
Expansion of Vα24+Vβ11+ NKT cells expanded from Cord blood mononuclear cells under Interleukin-15, IL-7 and Flt3-L depend on monocytes.
Eur. J. Immunol. , 36 , 236-244  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-