組織幹細胞賦活化による心血管再生療法の開発

文献情報

文献番号
200706007A
報告書区分
総括
研究課題名
組織幹細胞賦活化による心血管再生療法の開発
課題番号
H17-再生-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐田 政隆(東京大学・医学部附属病院・先端臨床医学開発講座)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 恭信(東京大学・医学部附属病院・循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
材料工学的手法を駆使して徐放性合成化合物ON-1301を用いて生体の自然治癒力を増強する戦略の実用化を図る。今までの検討で、小動物、大動物を用いた実験において、有効性が確認できた。特殊医療機器を用いずに汎用性のある医療手段として確立するために、最高の安全性で、最大の効果を期待できる徐放薬の投与経路、徐放製剤性状を検討し、no option の下肢末梢血管疾患を対象にして臨床試験を開始させる。
研究方法
ON-1301 によって、増殖因子の発現が亢進し、血管新生が促進される分子機序を明らかにする。また、最大の血管新生促進効果が得られる徐放製剤の剤型、投与量、投与回数、投与経路を検討する。
結果と考察
プロスタサイクリン受容体活性化物質として開発された化学合成物ONO-1301が線維芽細胞からVEGFやHGFといった血管新生促進増殖因子の分泌を促した。この作用はcAMP の類似物質で模倣され、cAMP の阻害物質で打ち消された。ONO-1301 をポリグリコール酸で徐放化することに成功した。ラット下肢虚血モデルで、ONO-1301 徐放製剤の筋肉内投与により虚血下肢の血流は増加した。マウス心筋梗塞モデルにおいて、徐放化ONO-1301製剤は内因性VEGF、HGFの発現を亢進させ毛細血管密度も増加させた。徐放化ONO-1301製剤投与により心筋拡大が抑制され死亡率、心臓破裂が有意に減少した。ラット心筋梗塞モデルにおいて、高容量より低容量の方が効果的であった。ブタ慢性虚血モデルにおいて、徐放化ONO-1301のカテーテルを用いた経皮的心筋内投与により、側副血行路と心拍出量、駆出率が増加し、心拡大が抑制された。2週間徐放製剤と4週間徐放製剤を比較検討したが、どちらも同等に有効であった。4週間徐放製剤を用いて、外科的に投与する追試実験を行った。統計学的に有意な有効性を確認できた。副作用は認められなかった。
結論
徐放化したONO-1301の局所投与は有効かつ安全と思われる。臨床応用するために、プロトコール作りとGMPグレードの製剤作製を行っている。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200706007B
報告書区分
総合
研究課題名
組織幹細胞賦活化による心血管再生療法の開発
課題番号
H17-再生-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐田 政隆(東京大学・医学部附属病院・先端臨床医学開発講座)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 恭信(東京大学・医学部附属病院・循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
材料工学的手法を駆使して徐放性合成化合物ON-1301を用いて生体の自然治癒力を増強する戦略の実用化を図る。今までの検討で、小動物、大動物を用いた実験において、有効性が確認できた。特殊医療機器を用いずに汎用性のある医療手段として確立するために、最高の安全性で、最大の効果を期待できる徐放薬の投与経路、徐放製剤性状を検討し、no option の下肢末梢血管疾患を対象にして臨床試験を開始させる。
研究方法
ON-1301 によって、増殖因子の発現が亢進し、血管新生が促進される分子機序を明らかにする。また、最大の血管新生促進効果が得られる徐放製剤の剤型、投与量、投与回数、投与経路を検討する。
結果と考察
プロスタサイクリン受容体活性化物質として開発された低分子合成化学物ON-1301が、線維芽細胞から増殖因子の分泌を促した。また、内皮細胞によるin vitro での管腔形成を濃度依存性に促進させた。ON-1301 をポリ乳酸グリコール酸で徐放化してラット下肢虚血肢に筋肉注射したところ血管新生を促進させた。マウス心筋梗塞モデルにおいても、徐放化ON-1301製剤を筋肉内投与した。内因性VEGF、HGFの発現が亢進し毛細血管密度も増加した。心筋拡大が抑制され死亡率、心臓破裂が有意に減少した。家畜ブタの慢性虚血モデルにおいて、徐放化ON-1301製剤の開胸手術により、心外膜側からを外科的に投与した。ON-1301により心拍出量は有意に増加して、壁運動・電位ともに改善し左室拡大を抑制した。心外膜からの外科的投与によるON-1301の有効性が確認できたため、より汎用性が高い投与法として、ON-1301-MSを冠動脈内へ投与したところ、no flow 現象が認められ、投与後1時間以内に4頭のうち2頭が死亡した。生存した動物でもON1301-MSによって心機能の低下が認められた。臨床試験を始める前には、ON1301-MSの剤型溶媒などの詳細かつ慎重な検討が必要であることを痛感した。
結論
徐放化したONO-1301の局所投与は有効かつ安全と思われる。今後、有効性、安全性の最適な治療手段を確立したのち、下肢虚血疾患患者を対象に臨床試験を開始する予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
材料工学的手法を駆使して徐放性合成化合物ON-1301を用いて生体の自然治癒力を増強する戦略の実用化を図った。今までの検討で、小動物、大動物を用いた実験において、有効性が確認できた。また、その作用機序も明らかにすることができた。

臨床的観点からの成果
特殊医療機器を用いずに汎用性のある医療手段として確立するために、最高の安全性で、最大の効果を期待できる徐放薬の投与経路、徐放製剤性状を検討し、有効な結果を得た。
ガイドライン等の開発
ガイドラインの開発には直接関与していない。
その他行政的観点からの成果
今後no option 患者への有効な治療法となると思われる。
その他のインパクト
アメリカ心臓病学会などで高く評価された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
32件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
43件
学会発表(国際学会等)
28件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakamura, K., Sata, M., Iwata, H. et al.
A synthetic small molecule, ONO-1301, enhances endogenous growth factor expression and augments angiogenesis in ischemic heart
Clin Sci (Lond). , 112 (1) , 607-616  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-