心筋組織再生のための集約的研究

文献情報

文献番号
200706006A
報告書区分
総括
研究課題名
心筋組織再生のための集約的研究
課題番号
H17-再生-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小室 一成(千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学)
研究分担者(所属機関)
  • 永井敏雄(千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学)
  • 南野徹(千葉大学医学部附属病院循環器内科)
  • 梅澤明弘(国立成育医療センター生殖医療研究部生殖病理学)
  • 望月直樹(国立循環器病センター研究所循環器形態部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
11,833,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心不全・心筋梗塞の新しい治療法として再生治療が注目されている。現在、骨格筋芽細胞、骨髄細胞、内皮前駆細胞による細胞移植が臨床試験中であるが、臨床的に十分な数の心筋細胞と血管の両者を再生する方法は確立されていない。本研究では骨髄間葉系細胞、心筋幹細胞を心筋細胞に分化誘導する因子と、血管新生を促進する因子を単離精製し、非侵襲的な心血管分化誘導療法の確立を目的とする。
研究方法
マイクロアレイ法とNIA array解析により、易心筋分化誘導間葉系幹細胞群特異的な遺伝子を選出した。OP9培養上清中の心筋細胞分化誘導因子(X因子)に関しては、ES細胞のX因子をノックダウンし,その役割を検討した。また,候補遺伝子アプローチによりX因子の受容体候補分子を選定、ヨードラベルしたX因子との結合を検討した。アダプター分子Gab1、2心臓特異的欠損マウスを作成し、解析した。心臓SP細胞よりRNAを抽出後、定量的PCR法により遺伝子発現解析を行なった
結果と考察
易心筋分化誘導間葉系幹細胞からの心筋分化誘導因子の一つはGrem1であった。Grem1は、BMP2/4/7のアンタゴニストであり、DEMSOによるP19CL6細胞の分化誘導開始1日目から3日目に添加することで心筋分化誘導率を上昇させた。ES細胞においてX因子をノックダウンしたところ,心筋細胞への分化が著明に抑制された。また、X因子の受容体を同定した。心筋保護に必須なアダプター分子、Gab1、2を心臓特異的に欠損させたマウスでは、neuregulin刺激で心臓のERK, AKTの活性化が抑制され、生後から心拡大と心臓内膜の線維化、最小血管数の減少を認めた。心筋梗塞3日後の心臓SP細胞は、shamに比較してβ-カテニンの核内移行が認められ、定量的PCR法による遺伝子発現解析の結果、梗塞3日目の心臓SP細胞ではCyclinD1、Axin2、c-Mycの遺伝子発現が認められた。
結論
Grem1は誘導開始直後のBMPsを阻害することで心筋分化を促進した。X因子がES細胞においても心筋分化に必須であることを明らかにし、X因子の受容体を同定した。心筋細胞と毛細血管の内皮細胞間の相互調節が心臓の機能調節に重要であった。また、内在性の心臓SP細胞は、心筋梗塞時にcanonical Wnt signalを介して細胞周期に入り増殖することを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200706006B
報告書区分
総合
研究課題名
心筋組織再生のための集約的研究
課題番号
H17-再生-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小室 一成(千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学)
研究分担者(所属機関)
  • 永井敏雄(千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学)
  • 南野徹(千葉大学医学部附属病院循環器内科)
  • 梅澤明弘(国立成育医療センター生殖医療研究部生殖病理学)
  • 望月直樹(国立循環器病センター研究所循環器形態部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心臓再生治療法として細胞移植が臨床試験中であるが、臨床的に十分な数の心筋細胞と血管の両者を再生する方法は確立されていない。本研究では骨髄間葉系細胞、心筋幹細胞を心筋細胞に分化誘導する因子と、血管新生を促進する因子を単離精製し、非侵襲的な心血管分化誘導療法の確立を目的とする。
研究方法
骨髄間葉系細胞を効率よく心筋細胞に分化させる因子を同定するために、マイクロアレイ法とNIA array解析を用いた。OP9培養上清中の心筋細胞分化誘導因子(X因子)に関しては、ES細胞、P19CL6細胞により効果を確認し、X因子をノックダウンしてその役割を検討した。また,候補遺伝子アプローチによりX因子の受容体を同定した。VE-cadherin/EGFPマウス、Gab1、2心臓特異的欠損マウスを作成して解析した。心臓SP細胞のin vitro、in vivoの遊走、分化、増殖能を解析した。
結果と考察
同定した骨髄間葉系細胞の心筋分化誘導因子の一つはGrem1であった。Grem1はBMP2/4/7のアンタゴニストであり、P19CL6細胞の心筋分化誘導率を向上させた。X因子はES細胞、P19CL6細胞の心筋分化誘導率を向上させ、X因子のノックダウンにより、心筋細胞への分化が抑制された。また、X因子の受容体を同定した。VE-cadherin/EGFPマウスでは虚血により、骨髄・末梢血液にGFP陽性細胞が増加した。Gab1、2心臓特異的欠損マウスでは、neuregulin刺激で心臓のERK, AKTの活性化が抑制され、心拡大と心臓内膜の線維化、最小血管数の減少を認めた。心臓SP細胞は心臓へ遊走・ホーミングして心筋構成細胞に分化した。心筋梗塞3日後の心臓SP細胞は、β-カテニンの核内移行CyclinD1、Axin2、c-Mycの遺伝子発現の亢進が認められた。
結論
Grem1はBMPsを阻害することで心筋分化を促進した。X因子がP19CL6細胞、ES細胞において心筋分化に必須であることを明らかにし、X因子の受容体を同定した。虚血により成人ヘマンジオブラスト様細胞が増加し、心筋細胞と内皮細胞間の相互調節が心臓の機能調節に重要であった。また、内在性の心臓SP細胞は心臓へ遊走・ホーミングして心筋構成細胞に分化し、心筋梗塞時にcanonical Wnt signalを介して細胞周期に入ることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究において骨髄間葉系細胞、P19CL6細胞およびES細胞を効率よく心筋細胞に分化させる誘導因子を明らかし、成体心筋幹前駆細胞の動態を明らかにしたことは、これまで不明であった心筋細胞の分化機序のメカニズムの解明の一助となった。また、neuregulinとangiopoietinによる心筋細胞と内皮細胞間の相互調節機構の解明は、心筋血管新生と心筋保護の連関という新たな機序解明の一助となった。
臨床的観点からの成果
心不全・心筋梗塞の新しい治療法として再生治療が注目されているが、臨床的に十分な数の心筋細胞と血管の両者を再生する方法は確立されていない。本研究において心筋細胞に分化誘導因子を明らかし、成体心筋幹前駆細胞の動態を明らかにしたことは、ヒト心臓の細胞移植に十分な心筋細胞数の確保と内因性の心筋前駆/幹細胞の分化療法の確立の一助となった。また、心筋組織再生には血管新生が必要であるが、心筋細胞と毛細血管の内皮細胞間の相互調節機構の解明は、傷害心筋の心血管新生の促進療法の確立の一助となった。
ガイドライン等の開発
特に無し
その他行政的観点からの成果
特に無し
その他のインパクト
本研究成果は、班会議を千葉大学医学研究院内で開催して討議を行なった。(年1回開催)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
55件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Naito AT, Shiojima I, Akazawa H, et al.
Developmental stage-specific biphasic roles of Wnt/beta-catenin signaling in cardiomyogenesis and hematopoiesis
Proc Natl Acad Sci USA , 103 , 19812-19817  (2006)
原著論文2
Oyama T, Nagai T, Wada H, et al.
Cardiac side population cells have a potential to migrate and differentiate into cardiomyocytes in vitro and in vivo
J Cell Biol , 176 , 329-341  (2007)
原著論文3
Sano M, Minamino T, Toko H, et al.
p53-induced inhibition of Hif-1 causes cardiac dysfunction during pressure overload
Nature , 446 , 444-448  (2007)
原著論文4
Seguchi O, Takashima S, Yamazaki S, et al.
A Cardiac myosin light chain kinase regulates sarcomere assembly in the vertebrate heart
J Clin Invest , 117 , 2812-2824  (2007)
原著論文5
Sugiki T, Uyama T, Toyoda M, et al.
Hyaline Cartilage Formation and Enchondral Ossification Modeled With KUM5 and OP9 Chondroblasts
J Cell Biochem , 100 , 1240-1254  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-