文献情報
文献番号
200706004A
報告書区分
総括
研究課題名
シアロムチンPCLP1による脈管内皮幹細胞の分離とその培養系を用いた血管/リンパ管の再生医療の基盤技術の確立
課題番号
H17-再生-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
宮島 篤(東京大学分子細胞生物学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
生体内に存在する脈管内皮前駆細胞は、各種血管およびリンパ管内皮細胞への分化能を有している。本研究では、①脈管内皮前駆細胞の性状を明らかにするとともに、その培養技術を確立し、各種血管およびリンパ管の細胞移植療法における移植細胞源としての可能性を検討した。また、②生体内で多種多様な脈管内皮細胞が形成される分子基盤を明らかにすることで、幹細胞から目的とする組織特異的内皮細胞を選択的に分化誘導するシステムを開発し、脈管内皮前駆細胞の効果的な利用法の確立を目指した。
研究方法
マウス胎児肝臓に存在する Podocalyxin-like protein1 (PCLP1)強陽性細胞を分離して、それを増幅する培養系の確立と、増幅した細胞の性状を遺伝子発現および移植により解析した。肝臓の脈管系をモデルにして組織特異的な内皮細胞の発生分化過程を解析するために、まず肝臓特異的内皮細胞を同定・分離するためのマーカー分子の同定とモノクローナル抗体の作製を行った。これら分子の発現を指標に肝臓に特有の類洞内皮細胞の発生過程を明らかにするとともに、ES細胞から肝類洞内皮細胞への分化誘導系の構築を行った。
結果と考察
PCLP1強陽性細胞はマウス胎児肝臓中皮に存在していたが、分離したPCLP1強陽性細胞はマウス新生児肝臓に移植すると、肝臓などの脈管系に生着した。さらにPCLP1強陽性細胞をストローマ細胞非存在下で増幅するシステムを開発した。培養により増幅した細胞集団は、Flk1陽性で中皮、間葉系マーカーを発現しており、移植すると肝臓の脈管系に生着し、血管内皮、リンパ管内皮、あるいは間葉系マーカーを発現していたことから、PCLP1強陽性細胞は脈管に分化可能な細胞であると考えられる。肝臓に特有の類洞内皮細胞のマーカーとしてStab2, Lyve1を同定し、それらの抗体を利用した細胞の同定・分離法を確立した。これにより類洞内皮細胞の発生過程を明らかにするとともに、ES細胞からのStab2やLyve1などを発現する胎児型の類洞内皮細胞を分化誘導することに成功した。
結論
マウス胎児肝臓に存在するPCLP1強陽性は移植により脈管系に生着する。この細胞を増幅するシステムが開発された。肝臓に特有の類洞内皮細胞の分離・同定法を開発し、組織特異的な内皮の発生過程を明らかにするとともに、ES細胞からの分化誘導に成功した。
公開日・更新日
公開日
2008-04-11
更新日
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