慢性腎臓病(CKD)の普及啓発に関する研究

文献情報

文献番号
200705023A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性腎臓病(CKD)の普及啓発に関する研究
課題番号
H19-特別-指定-027
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
菱田 明(浜松医科大学第一内科)
研究分担者(所属機関)
  • 松川 洋子(北海道上川町役場保健福祉課健康増進グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
透析患者数の増加を受け、慢性腎臓病(CKD)対策の充実が求められている。その中では、(1)かかりつけ医に対する普及啓発、(2)腎臓病専門医とそれ以外分野の学会専門医との連携、(3)保健師、栄養士等のコメディカルからCKD患者への普及啓発、などの必要性が指摘されている。
 本研究では、CKD対策に必要な教育資材の作成を行うことを目的とした。
研究方法
 CKDが今問題とされる背景についての考察を基に、CKD対策を進める上で、どのようなことが必要かを考察し、その上で、腎臓学会の作成したCKD診療ガイドをベースとして、かかりつけ医向けの簡単な冊子「CKD診療エッセンス」を作成した。また、「コメディカルにとって必要な資材は何か」についての、保健師・栄養士の議論を踏まえ、保健指導の現場で必要な資材の作成を行った。
結果と考察
末期腎不全患者数は増え続け、国民500人に一人が透析療法を受けている。尿蛋白陽性や腎機能低下で診断されるCKDは、末期腎不全の強い危険因子である。また、CKDは日本人の死因の大きな原因である心血管系疾患の危険因子でもあり、心血管系疾患対策を進める上ではCKD対策が重要である。「肥満、喫煙、塩分摂取、飲酒などの生活習慣がCKDの発症・進行に大きく影響する」との報告が多く出されていることを文献的に考察し、CKDの早期発見・早期治療が重要であることを確認した。適切な対策が進むためには、健診の場での生活指導が重要であること、かかりつけ医のレベルでのCKDに対する適切な対応が必要であること、などが明らかとなった。一方、健康診断・健康指導の現場や診療の現場で十分な対応が取られているとは言いがたい状況も明らかとなり、CKD診療の現場には、エビデンス・プラクティスギャップが存在する。こうした現状認識から、現場で役に立つ「CKDの分かりやすい教育資材」の作成が重要であるとの判断のもと、かかりつけ医向けとコメディカル向けの資材を作成した。この資材が利用され、CKDの予防・早期発見・適切な治療が進むことが期待される。
結論
 CKD対策に存在するエビデンス・ギャップを埋める教育資材の開発普及が重要であり、今回作成した資材がその一役を担いうる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
200705023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
慢性腎臓病(CKD)と生活習慣の関係を中心として、慢性腎臓病対策が必要な理由などを明らかにすることが出来た。
臨床的観点からの成果
腎臓専門医以外の診療現場で慢性腎臓病を診療する上での簡単な冊子が作成され、かかりつけ医や糖尿病・循環器専門医などでの慢性腎臓病診療レベルの向上に有益である。また、保健指導、生活指導に当たるコメディカルにとっての慢性腎臓病を理解し、患者指導に役立てうる上で、有益である。慢性腎臓病は早期発見・早期治療されればその発症・進展に対策のある疾患である。今回作成された冊子がエビデンス・プラクティスギャップを埋めることに役立つことが期待される。
ガイドライン等の開発
今回の冊子はガイドラインの開発に役立つというよりは、腎臓学会の作成した「CKD診療ガイド」の普及に役立つと思われるが、こうした冊子の普及を通じて、かかりつけ医やコメディカルから、診療上、生活指導上の疑問点が提出される事になれば、新たな診療ガイド作成に有用な情報を提供することになると考えられる。
その他行政的観点からの成果
慢性腎臓病対策を進めることは、透析医療費の削減など医療政策の中でも重要課題であり、本研究代表者菱田は、厚生労働省が平成19年度に行った腎疾患対策検討会において座長を務め、本研究の内容を含めた報告書の取りまとめに尽力した。報告書に「CKD診療ガイドの内容をより分かりやすくした小冊子の作成・普及が求められている」と記載されたが、本研究がその小冊子の骨子となりうる。
その他のインパクト
この研究そのものはマスコミ等に取り上げられてはいないが、本研究代表者の菱田は本研究を通じて得た内容を反映させた講演会(啓発からCKD対策の実践に向けて(菱田が理事長を務める慢性腎臓病対策協議会主催)を平成20年3月9日東京で開催した。また、世界腎臓デーに関係して毎日新聞に(平成20年3月13日)「CKDはメタボリックシンドローム並ぶ危険性」として菱田の発言が取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
市民公開講座「健康で長生きするために」、かかりつけ医向け講演会「全身疾患としての慢性腎臓病」、予防医学技術研究会「CKD対策の現状と展望」などの講師を務めた

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-