文献情報
文献番号
200705021A
報告書区分
総括
研究課題名
胚性幹(ES)細胞臨床指針作成に向けた課題検討のための予備研究
課題番号
H19-特別-指定-021
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中内 啓光(東京大学医科学研究所 ヒト疾患モデル研究センター 高次機能研究分野)
研究分担者(所属機関)
- 梅澤 明弘(国立成育医療センター研究所 生殖医療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1998年のヒト胚性幹(ES)細胞樹立の報告以来、臨床応用に向けた研究が大きく進展し、米国では脊髄損傷を対象としたヒトES細胞臨床研究の実施が近いとされている。加えて、2007年にはヒト多能性幹(iPS)細胞の樹立が日米の研究グループから報告された。iPS細胞は患者から樹立することが可能な上、ヒトES細胞が本質的に内包している生命倫理の問題がないことから、今後急速に研究が進展し、数年以内に臨床応用を開始すべき段階に達することが予想される。そこで本研究班ではES細胞、iPS細胞などのヒト多能性幹細胞を利用した臨床指針作成に向けた課題について予備的研究を行った。
研究方法
ヒトES細胞やiPS細胞の研究および幹細胞を用いた臨床研究に携わっている第一線の研究者を班員に迎え、それぞれの立場から現状分析ならびに将来的な課題について検討していただいた。また米国、欧州におけるES細胞を用いた臨床研究についても渡航調査を行った。
結果と考察
ES細胞、iPS細胞、それぞれが有利に利用できる対象疾患があり、当面は使い分けが必要である。種々の対象疾患のなかでも、加齢黄班変性、網膜色素変性症、パーキンソン病、脊髄損傷、拡張型心筋症、心筋梗塞などが比較的臨床応用に近い対象疾患と考えられる。一方で、ヒト多能性幹細胞から産生された赤血球、血小板なども安全性確保が容易であるという点で臨床応用に近いかもしれない。
ヒト多能性幹細胞は基本的に体性幹細胞と違いは無いが、樹立および長期にわたる培養と分化誘導が特徴的でありマスターセル、マスターバンクの用意など、特別な品質管理が要求される。このような特殊性からインフォームドコンセントの作成・取得にあたっても工夫が必要である。
海外ではES細胞やiPS細胞を切り出して考えておらず、遺伝子治療とも切り分けずに、遺伝子・細胞治療の一つとして対応している。一方で、指針の策定に当たっては科学面での判断と倫理面での判断を切り分けている。また、細胞治療の経年における影響を観察する必要からTraceabilityの確保を考える必要がある。
ヒト多能性幹細胞は基本的に体性幹細胞と違いは無いが、樹立および長期にわたる培養と分化誘導が特徴的でありマスターセル、マスターバンクの用意など、特別な品質管理が要求される。このような特殊性からインフォームドコンセントの作成・取得にあたっても工夫が必要である。
海外ではES細胞やiPS細胞を切り出して考えておらず、遺伝子治療とも切り分けずに、遺伝子・細胞治療の一つとして対応している。一方で、指針の策定に当たっては科学面での判断と倫理面での判断を切り分けている。また、細胞治療の経年における影響を観察する必要からTraceabilityの確保を考える必要がある。
結論
ヒト多能性幹細胞の臨床研究にあたっては、その時点での学問の進歩を反映した合理的根拠に基づき、ケースバイケースの原則で早期からアカデミアと行政当局とが連携・対話することが望まれる。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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