文献情報
文献番号
199700292A
報告書区分
総括
研究課題名
適正な医療の給付に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
野崎 貞彦(日本大学医学部)
研究分担者(所属機関)
- 小島卓也(日本大学医学部)
- 黒木宣夫(東邦大学佐倉病院)
- 松永宏子(精神保健研究所)
- 竹島正(精神保健研究所)
- 浅井邦彦(浅井病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 精神保健医療研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
精神障害の早期発見や治療、リハビリテーション、再発予防等について、適正な精神科医療を提供するする方策を多面的に検討を試みるために、以下に示す5研究を行なった。
小島卓也班:長期慢性精神障害者に関する研究-精神分裂病が長期入院するに至った要因について検討した。
黒木宣夫班:就業者における精神障害の早期発見・早期治療及び再発予防の方策に関する研究-職域における精神保健福祉活動での、精神障害者の早期発見・治療、精神障害を有する就労者の受療行動を促進するシステム、同障害者に対する適切な対応、援助システムを明確化する。
松永宏子:精神科診療所におけるデイケアに関する研究-精神科診療所デイケアを地域生活支援活動の要となるように、その機能をより充実させるための要件について検討する。
竹島 正班:精神保健医療対策に関する基礎資料と評価に関する研究-平成9年6月30日調査をもとに、精神医療、社会復帰等の状況を、地区別あるいは施設の機能で解析する。さらにワンデイ・サーベイの今後の活用と調査項目についても検討する。
浅井邦彦班:精神科リハビリテーション病棟に関する研究-試行的に進めた精神科リハビリテーション病棟でのマネジメントの有効性を検証し、あわせてマネジメントを行なう際に必要とするマンパワーの費用を算出する。
小島卓也班:長期慢性精神障害者に関する研究-精神分裂病が長期入院するに至った要因について検討した。
黒木宣夫班:就業者における精神障害の早期発見・早期治療及び再発予防の方策に関する研究-職域における精神保健福祉活動での、精神障害者の早期発見・治療、精神障害を有する就労者の受療行動を促進するシステム、同障害者に対する適切な対応、援助システムを明確化する。
松永宏子:精神科診療所におけるデイケアに関する研究-精神科診療所デイケアを地域生活支援活動の要となるように、その機能をより充実させるための要件について検討する。
竹島 正班:精神保健医療対策に関する基礎資料と評価に関する研究-平成9年6月30日調査をもとに、精神医療、社会復帰等の状況を、地区別あるいは施設の機能で解析する。さらにワンデイ・サーベイの今後の活用と調査項目についても検討する。
浅井邦彦班:精神科リハビリテーション病棟に関する研究-試行的に進めた精神科リハビリテーション病棟でのマネジメントの有効性を検証し、あわせてマネジメントを行なう際に必要とするマンパワーの費用を算出する。
研究方法
精神障害に対する精神科医療の実態を多角的に把握し適正な医療の供給を推進するために、次のように広範囲な調査を進めた。
小島班:一年間にわたり入院していた精神分裂病の症例とそれ以外の症例を比較して、長期入院の背景因子を抽出した。さらに、その症例の5年後の状態を調査した。
黒木班:企業内医療施設精神科における患者の調査を行なった。対象患者と主治医記入用の調査用紙を作成し、患者と医師に記入してもらい、回収の上、検討を加えた。同時に精神保健福祉センターでの、産業精神保健相談事例の調査も行ない、比較検討した。
松永班:精神科診療所デイケア57か所での、医療スタッフと利用者からアンケート調査を得た。それをもとに現状把握や利用者側からのニーズ、他の社会復帰施設との連携状況、治療上の有効性及び社会復帰率と継続率に及ぼす因子、新しいモデルとしてのミニデイケアの実行性等について解析した。
竹島班:厚生省は毎年6月30日付けで精神医療、デイケア施設、社会復帰施設等の調査を行なっている。このうち平成9年度の調査を分析し、意見を述べた。
浅井班:リハビリテーション病棟で、慢性分裂病患者へケースマネージメントとリハビリテーションを行なう。その効果を客観的な評価尺度で判定し、対象例との比較でリハビリテーションの有効性について検討した。
小島班:一年間にわたり入院していた精神分裂病の症例とそれ以外の症例を比較して、長期入院の背景因子を抽出した。さらに、その症例の5年後の状態を調査した。
黒木班:企業内医療施設精神科における患者の調査を行なった。対象患者と主治医記入用の調査用紙を作成し、患者と医師に記入してもらい、回収の上、検討を加えた。同時に精神保健福祉センターでの、産業精神保健相談事例の調査も行ない、比較検討した。
松永班:精神科診療所デイケア57か所での、医療スタッフと利用者からアンケート調査を得た。それをもとに現状把握や利用者側からのニーズ、他の社会復帰施設との連携状況、治療上の有効性及び社会復帰率と継続率に及ぼす因子、新しいモデルとしてのミニデイケアの実行性等について解析した。
竹島班:厚生省は毎年6月30日付けで精神医療、デイケア施設、社会復帰施設等の調査を行なっている。このうち平成9年度の調査を分析し、意見を述べた。
浅井班:リハビリテーション病棟で、慢性分裂病患者へケースマネージメントとリハビリテーションを行なう。その効果を客観的な評価尺度で判定し、対象例との比較でリハビリテーションの有効性について検討した。
結果と考察
各研究班の結果は、以下の通りである。
小島班:長期在院している精神分裂病3,090例の実態と経過について検討した。性別や初発年齢、出生地、遺伝負因、発病前の学業成績、病型などが経過に影響していた。一年間にわたり入院していた精神分裂病群は、それ以外の群と比較して、男性や高齢者、長い罹病期間、初発年齢が20歳以下、政令指定都市で生れ者が少ない、第一度親族に遺伝負因がある、学業成績が不良、非妄想型が多かった。5年後には、73.3%が入院を継続していた。
黒木班:企業に付設された医療施設5施設と病院8施設に通院加療中である就業者を対象として、再来患者調査を実施した。調査対象例は504名だった。企業内医療施設では「仕事を休まずに受診できる」「業務を配慮してもらえる」との利点があった。精神科医が関わっている職場の就業者は、症状発生から受診までの期間が短くてすんでいた。就業者の精神障害の早期発見や治療には企業内医療施設が役立っていた。一方、全国の精神保健福祉センターでの調査では、官庁や小規模の会社で働く人の相談窓口として活用が期待されていた。
松永班:精神科診療所でデイケアを実施している施設57か所に調査票を配布し、利用者がデイケアについて、どのような意見を持っているかを中心に検討した。診療所のデイケアは、病院のデイケアと異なり、少人数でアットホームな雰囲気を有していた。その治療的基盤に支えられて少人数ならではのきめ細かい対応が工夫されていた。
竹島班:厚生省精神保健課による平成9年6月30日調査をもとに、精神病院入院患者の概況、精神科デイケア施設等の状況、社会復帰施設等の利用状況についてまとめた。資料は精神保健福祉行政の推進に有用であり、かつ個々の自治体や病院が全国のどの位置にあるか理解ができる。また調査資料をもとに、6月30日調査の今後の活用と調査項目に関する意見を詳細に述べた。以上、厚生省のワンデイ・サーベイを分析し、わが国の精神保健福祉について意見を述べた。
浅井班:全国10精神病院での精神科リハビリテーション病棟で、リハビリテーションを試行した。それによって、どの程度の治療効果が見られるかを具体的に明らかにして、リハビリテーション病棟の有用性を見出すよう鋭意試みている。
以上の結果から、次のような意見がまとめられた。就業者が精神障害に陥った場合、産業医や保健婦、精神科医、職場の上司との連携が早期受診に結びついていた。精神障害者ことに精神分裂病の長期入院者の特徴は、男性で初発年齢が20歳未満、第一度親族内に精神障害者の負因を持ち、小学校時代の学業成績が不良で、非妄想型に多かった。そこで入院患者の早期退院や再発防止には入院中にリハビリテーション病棟での社会復帰活動が有効と考えられ、試行を開始した。退院後における精神障害者の地域生活支援では、診療所デイケアが有効であり、再発防止にも役立っていた。こうした実態を全国的規模で検討し、適正な医療の供給を進める資料には、厚生省精神保健福祉課による6月30日調査の活用が有用であった。
小島班:長期在院している精神分裂病3,090例の実態と経過について検討した。性別や初発年齢、出生地、遺伝負因、発病前の学業成績、病型などが経過に影響していた。一年間にわたり入院していた精神分裂病群は、それ以外の群と比較して、男性や高齢者、長い罹病期間、初発年齢が20歳以下、政令指定都市で生れ者が少ない、第一度親族に遺伝負因がある、学業成績が不良、非妄想型が多かった。5年後には、73.3%が入院を継続していた。
黒木班:企業に付設された医療施設5施設と病院8施設に通院加療中である就業者を対象として、再来患者調査を実施した。調査対象例は504名だった。企業内医療施設では「仕事を休まずに受診できる」「業務を配慮してもらえる」との利点があった。精神科医が関わっている職場の就業者は、症状発生から受診までの期間が短くてすんでいた。就業者の精神障害の早期発見や治療には企業内医療施設が役立っていた。一方、全国の精神保健福祉センターでの調査では、官庁や小規模の会社で働く人の相談窓口として活用が期待されていた。
松永班:精神科診療所でデイケアを実施している施設57か所に調査票を配布し、利用者がデイケアについて、どのような意見を持っているかを中心に検討した。診療所のデイケアは、病院のデイケアと異なり、少人数でアットホームな雰囲気を有していた。その治療的基盤に支えられて少人数ならではのきめ細かい対応が工夫されていた。
竹島班:厚生省精神保健課による平成9年6月30日調査をもとに、精神病院入院患者の概況、精神科デイケア施設等の状況、社会復帰施設等の利用状況についてまとめた。資料は精神保健福祉行政の推進に有用であり、かつ個々の自治体や病院が全国のどの位置にあるか理解ができる。また調査資料をもとに、6月30日調査の今後の活用と調査項目に関する意見を詳細に述べた。以上、厚生省のワンデイ・サーベイを分析し、わが国の精神保健福祉について意見を述べた。
浅井班:全国10精神病院での精神科リハビリテーション病棟で、リハビリテーションを試行した。それによって、どの程度の治療効果が見られるかを具体的に明らかにして、リハビリテーション病棟の有用性を見出すよう鋭意試みている。
以上の結果から、次のような意見がまとめられた。就業者が精神障害に陥った場合、産業医や保健婦、精神科医、職場の上司との連携が早期受診に結びついていた。精神障害者ことに精神分裂病の長期入院者の特徴は、男性で初発年齢が20歳未満、第一度親族内に精神障害者の負因を持ち、小学校時代の学業成績が不良で、非妄想型に多かった。そこで入院患者の早期退院や再発防止には入院中にリハビリテーション病棟での社会復帰活動が有効と考えられ、試行を開始した。退院後における精神障害者の地域生活支援では、診療所デイケアが有効であり、再発防止にも役立っていた。こうした実態を全国的規模で検討し、適正な医療の供給を進める資料には、厚生省精神保健福祉課による6月30日調査の活用が有用であった。
結論
就業者における精神障害の早期発見や早期治療には、職場の上司や産業医、保健婦、精神科医が緊密な連携をとることが有効であった。精神分裂病者が長期入院するのは、性別や発症年齢、遺伝負因、学業成績が関わっていた。そこで入院している精神障害者が早期退院し社会復帰するためには、リハビリテーション病棟での社会復帰活動が役立つと考えられ、試行を開始した。精神障害者の地域生活を支援し再発防止するには、精神科診療所のデイケアは有用であった。
公開日・更新日
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