北海道洞爺湖サミットに向けての、救急・災害医療体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
200705012A
報告書区分
総括
研究課題名
北海道洞爺湖サミットに向けての、救急・災害医療体制の構築に関する研究
課題番号
H19-特別-指定-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
浅井 康文(札幌医科大学医学部 救急集中治療医学講座、高度救命救急センター)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 保博(日本医科大学 医学部)
  • 山口 芳裕(杏林大学 医学部)
  • 嶋津 岳士(近畿大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サミットは日本では4回、2000年の沖縄サミット以外は東京での開催となっている。デモで死者が出た2001年のジェノバ・サミット以降、都市部を離れた会場で開く「リトリート(隠れ家)方式」のサミットが主流となり、北海道洞爺湖サミットもこれにあたる。
今回は、北海道を含め、全国8都市にまたがって関連会合が開催されることから、各地における体制に加え、全国的な体制の確保を同時期に図る必要がある。北海道洞爺湖サミットにおいても、現地入りする各国首脳・閣僚及び随行者等に対する万全の救護が求められていることから、救護に必要な救急・災害医療体制の確立を目的とした。
研究方法
沖縄サミット後、救命救急センターの整備が進むとともに、ドクターヘリや災害派遣医療チーム(DMAT)が配備される等、地域において救急・災害医療体制が確保されている。また2001年9月11日には米国で同時多発テロが起こり、フロリダの炭疽菌の手紙で、NBCテロの危険が危惧されている。
そのため北海道洞爺湖サミットにおいて、救急患者発生時の医療体制はもとより、周辺の噴火災害やテロに備えて、多数の熱傷患者や重症患者が発生した場合の、ドクターヘリや固定翼(千歳空港より自衛隊機)による、札幌市や北海道外への航空搬送を強化するための、救急医療・災害医療の体制構築を検討した。
結果と考察
北海道洞爺湖サミットでは、救急医療の第一線の医師や看護師らの医療チームを組織し、札幌や洞爺湖周辺に派遣する。急性心筋梗塞に対するPCI(経皮的冠動脈インターベンション)や脳梗塞に対する発症3時間以内のt-PA静注や発症6時間以内の中大脳動脈塞栓性閉塞に対する経動脈的な選択的局所血栓溶解療法などを行う。テロ対策は、防毒マスクや解毒剤、さらに診療設備を備えた大型バス(mobile ICU)を2配備する。災害時には北海道や全国のDMATとの連携も必要であり、北海道内の9ヶ所の救命救急センターとの航空機搬送体制の構築をする。札幌を中心とする基幹病院や、室蘭・洞爺・倶知安などの救急医療機関と、ドクターヘリなどが連携する。各国首脳は、千歳空空港へ航空機で乗り入れるため、空港へも医療団の派遣も行う。
結論
北海道洞爺湖サミットでは、ドクターヘリの運航や災害派遣医療チームの派遣等を行うことによって、より確度の高い救急・災害医療体制の構築を図ることが期待できる。北海道の救急医療チーム、全国から組織される医療チーム、北海道庁、消防機関、警察機関、北海道医師会、さらには自衛隊との連携で、北海道洞爺湖サミットにおいて万全の救護体制が確保されねばならない。

公開日・更新日

公開日
2008-06-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
200705012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
2000年沖縄サミットの時の医療体制を参考に、2008年北海道洞爺湖サミットの医療体制を構築した。沖縄サミットでは首脳の宿舎などが分散していたが、北海道洞爺湖サミットでは隠れ家方式でウインザイーホテル洞爺にて首脳会議が開催される。また2000年時と較べ、2001年の米国同時多発テロ事件などNBCテロに対する脅威がましている。一方、国内の救急医療体制は、ドクターヘリの導入、DMAT,メディカルコントロール、災害拠点病院などの進歩が見られる。これらを踏まえて救急医療体制を構築した。

臨床的観点からの成果
ウインザーホテル洞爺での救急事例では、患者は複数の救急救命センターがある札幌へドクターヘリで搬送する。しかしこの時期は霧などで天候が悪いことも予想され、山越えまで救急車で患者を運び、そこでドクターヘリとランデブーする方式も取り入れる。DMATの配置、基幹医療センターへの専門家チーム派遣、中毒情報センターを含むNBCテロ対策を行った。また救急疾患、特に急性脳梗塞へのt-PA投与、急性冠症候群の治療には、道外の第1線の医師団を、各拠点病院に派遣する。

ガイドライン等の開発
今後とも地域の実情と医療体制を考慮した、救急災害のガイドラインを考えていきたい。
その他行政的観点からの成果
今後この北海道洞爺湖サミットの救急/災害医療体制を通して、ドクターヘリ、DMAT、災害拠点病院、救命救急センターなどの救急/災害医療体制がさらに充実すると期待される。
その他のインパクト
北海道新聞、産経新聞、朝日新聞に、北海道洞爺湖サミットの救急医療体制での取材、掲載があった。また6月2-4日、札幌医科大学にてNBCテロ/災害対策研修が行われ、マスコミに取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
30件
その他論文(英文等)
10件
学会発表(国内学会)
100件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
浅井康文
2000年有珠山噴火における重症患者多数発生時の救急医療の確保について
日本集団災害医学会雑誌 , 5 , 17-21  (2000)
原著論文2
丹野克俊、伊藤 靖、浅井康文
有珠山噴火における大災害発生を想定した救急医療体制の確保について
救急医療ジャーナル , 48 (9) , 24-26  (2001)
原著論文3
伊藤 靖、丹野克俊、浅井康文
特集 有珠山噴火をめぐる災害救助活動/1年後の検証-今後の問題点-
救急医療ジャーナル , 48 (9) , 20-23  (2001)
原著論文4
伊藤 靖、浅井康文
2002年FIFAワールドカップの救急・災害医療体制を振り返って
救急医療ジャーナル , 58 , 13-18  (2002)
原著論文5
Asai Y, Arnold JL
Terrorism in Japan
Prehospital and Disaster Medicine , 18 , 106-114  (2003)

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
-